ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」雑感

星野源演じる非イケメン童貞キャラがこれほど世間に持て囃されようとは、時代の変遷を感じずにいられませんね! もしかして今、時代のアイコンは童貞なのか!? ガッキーと結婚できるのは童貞! 童貞こそ勝ち組たる大童貞時代の幕開けですよ! 

滲み出る童貞特有の面倒臭さと青臭さに、思わず「何やってんだ!」「よくやった!」と画面越しに応援や助言を投げかけたくなる親近感。30半ばでプロの独身を貫く津崎平匡(つざきひらまさ)さんは、時にヒロインよりもヒロインらしい一面を見せる新時代の愛されラブコメ主人公であったと言えるでしょう。私は前々から、こういった童貞主人公が現代のラブコメに必要だと説いてきましたけどね!(正確には2010年頃から

傷付くのを恐れ女性を遠ざける平匡が、みくりとのスキンシップを機に少しずつ凝り固まったプライドを溶かしていく過程は、見ていて本当ニヤニヤさせられるものがありました。いい年したカップルなのに、ハグからキスへと段階を踏みつつ、ゆっくり距離を縮めていく中学生のような恋愛だったところが、視聴者をこんなにもほんわかした幸福感で包んでくれるんですよ。

勿論、ヒロイン役がガッキー(新垣結衣)であるという理由が途轍もなく大きいのも事実なんですが。改めて言うことでもありませんけど、ガッキーは地上に舞い降りた天使の如き可愛さですな~。もしこれがガッキーじゃなくベッキーだったら……今頃ドラマの評価はどうなっていたのやら(笑)

2人が初夜を迎えた第10話は伝説の回。ベッドインしながら直立不動で仰向けになるだけの平匡に対し、「いちゃいちゃしないの?」とみくりが誘いを掛けたシーンの衝撃は計り知れないものがありましたよ! 航空母艦が4隻ほど轟沈するレベルで! でもね、原作でのここのやりとりはもっともっと良かったんだよ~!

平匡「みくりさん、ほんとに僕のこと好きですか?」
みくり「好きですよ、たぶん」
平匡(たぶん!?)
みくり「……あなたが想像する以上に」

ここの言い回しとか最高だったのに!! 「たぶん」という曖昧な返事に一瞬不安を過ぎらせたあと、「あなたが想像する以上に」という望外の答えで一気に歓びの絶頂へと導く小悪魔的テクニック! 原作のみくりはアプローチに積極的で、キスにしても自分から“おかわり”を求めてくるなど、ドキドキさせてくれる描写が多かったんです。そういう部分をもっとドラマでも出して欲しかったというか、「男の人も乳首って感じるんですかね」 ←このセリフをちゃんとガッキーに言わせろと!(笑) ここカットしなかったら、視聴率あと5%は上乗せ行けましたよ、絶対!!

とまぁ、私が脚本に物言いをつけたいのはそこぐらいで、全体的には何ら不満を感じることなく、大変優秀な脚本だったと褒め称えるしかありません。原作の持ち味を損なうことなく、コメディ部分はより一層面白く。マムシドリンクの存在を必死に誤魔化す平匡には本気で大笑いしましたし、リストラされたばかりの平匡が、てっきり次の仕事探しをしているのかと思いきや、実はみくりとのデートの下調べをしていたという外し方も秀逸でした。「そんなことより仕事探せw」と視聴者にツッコミを誘導させるやり方が上手いなぁって。

コメディといえば、毎話のパロディも楽しみの1つ。情熱大陸やサザエさんなどのパロディネタは原作にもありましたが、ドラマはもっとバラエティ豊かに、放送局の枠組みを超えた様々なパロディネタをぶっ込んできたのが面白かったです。最終回には、真田丸というどでかいネタを持ってきたセンスに脱帽(笑) BGMも本家を流用し、シブサワコウ監修のKOEIマップまで再現とはお見それしました。

ラブ+コメディ部分は完璧で、高視聴率を叩き出したのも納得の出来。ただ、書評の方にも書きましたが、逃げ恥はただのラブコメではなく、契約結婚という特殊な共同生活から見えてくる婚姻生活の不条理さにメスを入れ、“愛”という綺麗事で我慢を強いる不当な搾取の実態を取り上げた社会派ドラマの側面もあるわけで。ドラマではその辺の“ややこしい部分”をちゃんと取り上げてくれるのか、最後まで不安があったんですよね。

結果からいえば、ドラマはちゃんと原作が掲げるテーマに真正面から向き合ってくれていました。プロポーズをした平匡が、直後に結婚後の将来設計をプレゼンし始めたところで、強い難色を示したみくり。このとき視聴者の反応は「女心をわかってない!」「ガッキー(みくり)が可哀想!」という同情意見がほとんどでしたが、わかっていないのは貴方たちで、みくりはロマンチックさなんかを求めていたのではなく、平匡が提示する将来設計が著しく合理性を欠いていると感じただけ。みくりは平匡なんかよりガチガチの合理主義者なのに、ラブコメだけを楽しんでいる層は、10話になってもそれすら理解できていないんだなと感じましたね。

みくりは人情や愛情で簡単には流されません。商店街の人たちが困っていても、助けてほしかったらコンサルタント料を払えと要求し、プロポーズを受けても、意識下でそろばん弾いて主婦業の対価を計算する女。実際は、他人の善意を前提に、無償で働かせて利益を享受する方がよっぽど悪質なのですが、日本ではサービスに見返りを求めた方が、冷血漢・守銭奴だと罵られてしまうブラックな実情があるので、どうしてもみくりの言動はイメージが悪くなっています。

それでも彼女は、無償の奉仕を求めるこの国の慣習に真っ向から反発する。「主婦業に完璧さを求めるなら、プロとして賃金を支払え」「共働きを求めるなら、家事分担は正確に」「家事全般を負担するならボランティア。やらなくても文句言うな」 こんな主張をすれば、まずウザイ女だと疎まれるだけなのですが、みくりはそういったレッテルも恐れずに、結婚前にちゃんと互いの価値観のすりあわせを行おうとしたところに素晴らしさを感じました

しかし、「好きの搾取」に敢然と異議を唱えるみくりでも、好きな人からのプロポーズに素直に喜び、甲斐甲斐しく旦那の世話をする“普通”の妻になれない自分に自己嫌悪する一面はありまして…。平匡はそんな彼女に、最初から“普通”なんて求めていないと鷹揚に受け止めると、「やってやれないことはない」「とっくに知っていた」「大したことじゃない」と、かつてみくりが自分に投げかけてくれた言葉を使い、最後に「小賢しい女だと思ったことはない」と、みくりがずっと縛られていた呪いを解いてあげた。これは感動を憶えずにいられませんね~。

2人のラブラブっぷりだけを堪能したかった視聴者は、「こんなギスギスした最終回は見とうなかった!」と憤慨されているかもしれませんが、私はどちらかの犠牲の上に成り立つ欺瞞的なハッピーエンドよりも、お互いが言うべきことを言いあって、夫婦としての絆を強めたエンディングの方を断然支持します。反感を買いかねないみくりの一面を立派に演じてくれたガッキーにも感謝。ご飯を炊いていなかったことにマジギレしていたガッキーのイライラ感は、リアリティありすぎて怖かったなぁ(笑)

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2 Responses so far.

  1. deathmetabo より:

    そうなんですよッ!
    「たぶん、~」の一連の流れが、ていうか、あの流れこそがあのシーンの一番おいしいトコロだったと私も思うんですよッ!強くッ!

    あと、メガネ取るところもですね。

    どうも、こんばんは。

    まぁ、私は話題になってきてから再放送とか見逃し配信とかで本編補完して、ついでに漫画も読み始めた後追いのにわかさんなんですけどね。

    個人的には「体が反応するのは平匡さんだけじゃないんですよ」を言って欲しかったです(笑)

    ドラマ版は毎週飽きさせずに追いかけてもらわなければいけないTVドラマとしては良い脚本なんでしょうけど、キャラの感情の動きが少々極端というか唐突な感じがしてしまって、原作漫画の方が登場人物の心の動きとか変化を丁寧に順を追ってる感じがして好みでしたね。
    手を繋ごうって言われて、自分に言い訳しながらも手を繋いでみて、そしたらだんだんドキドキしてきてなんだかそういう気になっちゃって、うっかりチューしちゃったッ、我に返る。みたいな。

    まあ、決められた尺の中で名場面・重要シーンを出来るだけ網羅して、週を跨ぐタイミングで次週の続きに興味を引かせるポイントを作って、原作よりも豪華なパロディをぶっ込んで、と大変高いハードルをクリアしているのは確かなので、これ以上は言いがかりかな?って気もしますけどネ。
    そもそも最後までバッチリ見て面白かったんだし(笑)

    ただ、星野源のそこはかとないチャラさが、笑顔のイヤらしさがちょっと気になりました...。
    真面目な顔してればイイ感じの童貞臭が出るんですけどね。

    ちなみに私は、ドラマではみくりよりも百合ちゃん推しです。

    • 原作の初エッチのシーンは最高だっただけに、完全再現しきれなかったのは唯一悔いが残るところ…! いちゃいちゃ感とあまあま感全開でキスしまくっているところや、平匡が内心でみくり(女性)の身体の感触にいちいち感動して叫んでいたところとか、すごくリアルで好きだったんですけどね! 実際にあそこまでやっちゃうと、ガッキーファンから星野源さんに殺害予告が届いてた可能性はありますが(笑)

      >個人的には「体が反応するのは平匡さんだけじゃないんですよ」を言って欲しかった
      太ももに屹立したあれが当たってのセリフですから、さすがに火曜22時代じゃ耐えられないセリフじゃないかと…(笑) それを言ったら、乳首云々も絶対無理ですね。

      ドラマはドラマで、初体験を済ませたあとの「おめでとうございます」ってセリフが好きでした。「(お誕生日)おめでとうございます」って意味でしたが、「(童貞卒業)おめでとうございます」というミスリードを完全に狙っていましたよね!

      >TVドラマとしては良い脚本なんでしょうけど、キャラの感情の動きが少々極端というか唐突な感じ
      平匡×みくりの方はそこまで感じなかったですが、ゆりちゃん×風見の方はやや描写が足りないように思えましたね。特にゆりちゃんの心情はとても複雑なので、丁寧に描かないと嫌味が出てしまうと思いますから。まぁでも、ドラマ派の人でも、ゆりちゃんに感情移入できている人は多かったみたいですが。

      >週を跨ぐタイミングで次週の続きに興味を引かせるポイント
      ドラマはこの辺上手でしたねー。各回のラストに盛り上がりを持ってきているから、ドラマ終わりに余熱を残したままSNSで話題が拡散される。次の回で新しい視聴者を呼び込む。視聴率が常に右肩上がりだったのも、ここが大きかったはず。

      今の時代の作品はSNSで口コミになることが成功の秘訣ですから、アニメも各回ラストの引きというものをもっと意識する必要がありますね。

      >星野源のそこはかとないチャラさが、笑顔のイヤらしさがちょっと気になりました
      え、そうでしたか?(笑) 童貞役の配役って難しくて、ガチの童貞じゃ困りますし、童貞らしさがなさ過ぎても感情移入しにくいですし、そういう意味では、星野源さんって嫌味のない丁度いいレベルだな~と思ってみていたのですが。まぁ、星野源さん自身は平匡とは全然違う性格みたいですから、ふとした拍子に素が見えてしまったのでしょうかね。