コラム「少女漫画とエロゲの融合」

青空エール 1 (マーガレットコミックス)

「なでしこやまと」というエロゲレビューサイトを場末で細々運営している浅生大和(あそうやまと)です。ゆーこーはんいでは、以前に「エロゲにおける男キャラ」について論じさせていただきました。この度、静流さんから「ギャルゲー(18禁ゲー)の、可能性-。」について論じて欲しいと再びコラムのお誘いを受けましたので、また拙いコラムを寄稿させてもらうことになりました。

とはいっても、何者でもない私が、ギャルゲー(18禁ゲー)の可能性という大それたお題について論じられるものでしょうか? 何も思いつくことがないまま虚しく時間を浪費し、ようやく方向性が見えてきたのは、新規ブランドI.D.さんのデビュー作「初恋予報。」の存在を知った頃。この作品、「男性向け “少女漫画”として、恋するせつなさやもどかしさといった少女漫画の王道を描く」というコンセプトなのですね。瞬間、「これだ!」と電流が走りました。

そう、「少女漫画とエロゲの融合」が今回のテーマ。男女の恋愛観の違いゆえに、恋愛ストーリーは男性向けと女性向けで大きく性質が異なりますが、敢えてその異文化を上手く融合することで、今までにない新鮮な面白さが見えてくるんじゃないかと。

そもそも少女漫画は男が読んでも充分楽しめるんですよ。少女漫画を敬遠する人は、イケメンに囲まれた逆ハーレム系漫画への嫌悪感を理由にする人が多いですが、全部が全部そんなものじゃありませんからね。自分も、冴えない男子が美少女に囲まれる作品が嫌いなように、設定が男女逆の逆ハーレム系少女漫画もまた好きではありません(桜蘭高校ホスト部は最高に面白いですがっ)。それよりも、1組のカップルが恋を育んでいく過程を描いた作品が好きですし、これなら男女の垣根なく共感できるものだと思っています。

最近だと「君に届け」と「青空エール」でしょうか。君に届けは超有名作なので説明を割愛しますが、青空エールは、甲子園を目指す高校球児と、その甲子園で演奏を夢見る吹奏楽部の少女の純愛を描いた漫画。目的は別々ながらも、互いを励まし合い、支え合い、想い合う2人が素敵すぎて!

両作品に共通するのは、主人公の女の娘がと~~ってもカワイイこと。君に届けの爽子ちゃんも青空エールのつばさちゃんも、今時珍しいほど超ピュアピュアな少女で、前向きで一生懸命な姿に激しく心を打たれるんです! それでいて特有の“あざとさ”がない! これが男性向けになると、どうしても男性読者を喜ばせるための作為的なセリフが増え、「媚び」が混ざってきてしまうものですが、少女漫画の主人公はそういった外連味のなさが1つの魅力なんですね~。

男女の恋愛ストーリーにおける最も顕著な違いって、まさにこの主人公の差じゃないかと思います。男性向けの場合ですと、ヒロインは過剰なまでに可愛らしく描かれていますが、主人公の男子は平凡で取り柄がなく、積極的に行動することもなければ、何かに打ち込むこともない、人間的魅力に乏しいキャラクターが多い(特にエロゲは)。そんな奴が美少女と付き合うだなんておこがましい話ですよ。

しかし、女性向けの場合、お相手の男子がカッコイイだけじゃなくて、主人公である女子もちゃんとカワイイんです。地味で目立たないとか、引っ込み思案だとか、何かしらのマイナス要素は持っていても、それを覆すだけの人間的魅力が必ずある。男女両方に好感が持てるからこそ、純粋に2人の恋仲を応援・祝福したくなりますし、カップリングへの不満というつまらない嫉妬もしなくて済むんですね。

もう1つ、私が少女漫画の主人公に好感が持てるのは、自分の恋愛感情を心情描写にて素直に表現するところ。「あの人が好きだ」とちゃんと自覚した上で、成就させるまでの“恋する期間”があるんですよ。対するエロゲでは、「自分から先に好きになるのは格好悪い」という変な男の見栄があり、鈍感・無関心を装って、相手から告白されるまで自分の本心を決して露わにしようとしない。ゆえに、好きな人に思い焦がれる“恋する期間”がほとんど皆無に近いので残念です。私はこういう部分こそ、少女漫画テイストを取り入れて欲しいと強く願うのですけれど。

今回は、少女漫画の良い部分ばかりを取り上げましたので過剰に持ち上げる結果となりましたが、女性向けが男性向けより優れているとか、そういうことを意見しているのではございません。男性向けが女性向けより優れている点だって多々あります。しかし、少女漫画の性質や長所を積極的に取り入れることで、エロゲにも新たな可能性が見えてくるんじゃないかと考える次第です。

業界にも女性ライターは既にいらっしゃいますが、やはり男性向けを強く意識された筆致ですので、せっかくの持ち味が出ていないんですよね。海外進出する日本人歌手がヘタクソな英語で歌を歌うより、敢えて日本語のまま歌った方が外国人には受けが良かったりするように、男女の恋愛観の違いを逆手にとることで功を奏することもあるはず。「初恋予報。」の男性向け少女漫画というコンセプトが、今後他のエロゲにも波及されて行けば幸いです。

それでは最後に、青空エールの小野つばさちゃんのセリフを抜粋いたしましょう。

「自分ではこわいからなにもしないで、むこうから言ってくれないかなあとか、そんなのありえないのに。私が自分でがんばらないと」

あああっっーー!! 可愛すぎるぅぅぅぅ!! まったく、こんな気弱で奥手な女の娘ですら、勇気を出して自分から告白しようと決心するんですよ? エロゲ主人公も見習ってくださいっっ!!

2011年1月7日

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