コラム「サーバント×サービスに見る完璧男子乙女化傾向」

■ サーバント×サービスがすごく面白い

サーバント×サービスは、WORKING!!の作者として有名な高津カリノさん原作のアニメ。近年風当たりの強い公務員を題材に取り上げた異色作で、お役所仕事に従事する職員たちの日常のやりとりが実に面白い、今とてもお気に入りのアニメの1つです。

でも、残念ながらあまり話題にはなっていないというか、1話・2話で見るのをやめてしまった人が周りに結構多いんですよねー。確かに序盤はキャラも話の方向性も定まっておらず、私自身どこに面白味を見出せばいいのかよくわかっていませんでした。しかし、徐々に各キャラクターに個性が付き始め、更に恋愛ドラマへの傾斜が強まると一気に面白くなりまして! 今はFF14ぐらい別作品に生まれ変わっているんですよ!

特筆すべきなのが、長谷部とルーシー、一宮と千早、三好と田中の三者三様の恋愛模様が楽しめるところ。今回は詳細を割愛しますが、本当に3組とも微笑ましくて最高なんです。思えばアニメやゲームの恋愛って、いつも主人公が複数の異性に心揺れるような三角関係の話ばかりでした。このように最初からきっちりお相手が決まっていて、それぞれのカップルの恋愛(今のところ交際しているのは一宮×千早だけ)をじっくりニヤニヤ眺められるものは稀少なんですよね~。

■ 長谷部に対する好感度変遷

メインは、主人公ルーシーと長谷部の恋愛。山神ルーシー(以下略)は、恋愛スキル皆無であるがゆえにセクハラにも無頓着なアホの子(そして巨乳)でして、視聴者ウケも非常に良いキャラクターなのですが、一方の長谷部豊がなかなかの曲者。

仕事は不真面目、先輩にタメ口、チャラくて女にだらしないというダメ人間風でありながら、実はメチャクチャ有能で、テキトーに生きていながら、余裕綽々で何でもそつなくこなしてしまうという完璧キャラ。公務員という立場も相俟って非常に視聴者から反感を買いやすく、事実サーバント×サービスを見るのをやめてしまった人の意見で最も多いのが、「長谷部が嫌い」なんですよねぇ。

私も嫌いではないにせよ、特に好感の持てるキャラではなかったですが、実はインドア系でゲーム(エロゲ)やフィギュアを集めているオタク気質な一面があるなど、話が進むにつれいろいろ意外な一面が見えてきて、少しずつ好意を持てるようになってきました。

極めつけは、ルーシーに心惹かれていく過程。最初はノリで軽~く告白しただけだったのに、次第に本気さが増してきて、今やルーシーにマジ惚れ。恋煩いすることでそれまでの飄々とした性格にも段々無理が出てくるようになり、良い意味でヘタレ化していくんですよ! こうなってきてからが萌える!!

■ ヒロイン化する男子

前置きが長くなりましたが本題。「ちはやふる」、「となりの怪物くん」、「ラストゲーム」などなど、昨今の人気少女漫画に共通する1つの傾向として、“何でもこなしてしまうスペック高めの男子が、恋愛に無頓着で超然としている女子(主人公)にベタ惚れして乙女化してしまう”という風潮があります。サーバント×サービスもまさにその事例に当てはまります。

少女漫画関係なく、今は強い女性に男性が守られる作品が増えてきていますので、従来のヒロインポジションに男子が据えられることは珍しくないですよね。女性上位の時代背景を写す男女逆転現象の1つだと見てもいいでしょうか。

個人的には、この「完璧男子乙女化傾向」のトレンドは大いに歓迎したいところ。ぶっちゃけ、これを取り入れている作品は今のところ全部ハズレがないんで、鉄板と言えるネタなんですよ~。今にして思えば、大好きな「桜蘭高校ホスト部」の須王環もそうだったなぁ。

ここで重要なのは、イケメンに惚れられる側の女子、つまり主人公にもちゃんとそれ相応の魅力が備わっているということ。上記で挙げた作品はいずれもこの条件を満たしていまして、千早も雫も美琴もハルヒも、みんなスペック高めのイケメン男子を虜にしてしまえるほどの魅力を充分持っている。なので、“冴えない野郎が何故か超カワイイ女の娘に突然求愛される”といったようなご都合主義作品とはまったく次元が違うことを強調しておきます。

■ 片の想いは七難隠す

「完璧男子乙女化傾向」の強みは、従来男ウケが悪かった完璧超人系王子様キャラを愛すべきキャラに転換できてしまえる点。「S・A」の滝島彗とか「会長はメイド様!」の碓氷拓海とか、私は昔からこれらの手合いが蕁麻疹できるほど嫌いでしたが、こういう輩でさえも恋する乙女化させてしまえば、一発逆転で愛らしいキャラになれる可能性があるんですよ!

となりの怪物くんのヤマケンだって、普通に考えると単にムカつく嫌な奴なんですよね。恵まれすぎているスペックに、その横柄で独り善がりで俺様な性格。おおよそ好感が持たれるキャラではない(特に男からは)はずなのに、“雫にベタ惚れしている”という一事だけでもう可愛くって可愛くってしょーがない

嫉妬の対象となり得る完璧すぎるスペックも、「恋が報われない」という一事だけで我々庶民から共感を憶える存在になりますし、その健気で一途な想いに思わず応援したくなってしまう。そう、片想いをする人間に貴賤はないのです。

サーバント×サービスは、初見で長谷部を「こいつ嫌い」と思った人ほどハマる要素はあるということですよ。「くっそ! ムカつく奴だと思ってたけど、カワイイとこあるじゃねーか!」という風に、コロッと印象がひっくり返ってしまうこと請け合い。失礼で生意気で乱暴な奴でも、それをツンデレと呼べば萌え属性になってしまうように、どんな人間でも最後にデレさせてしまえば、なんだかんだで全部許せてしまえるものかもしれませんね(笑)

2013年8月23日

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  1. 「冴えない野郎が何故か超カワイイ女の娘に突然求愛される”といったようなご都合主義作品とはまったく次元が違う」とのことですが、「私は性的なことには全然興味が無いんですけど、それでも完璧男子が私に夢中になっちゃうんです。彼は私のことを考えるだけで胸が苦しくなっちゃうみたいなんです。私ってそれくらい魅力的なんです」ってのは、女の願望だだもれっていう意味では、男向けエロゲーと全然差がないじゃないですかw

  2.  ゲストさん
    受け手の願望を満たしてくれることとご都合主義はイコールではないですよ。異性からモテたい願望はあって当然ですが、ご都合主義という不正な手段を使って叶えたいかは別の話。「これはカワイイ女の娘に言い寄られるのも納得だ!」と言えるほど、格好良くて魅力ある主人公のエロゲなら私はいつだって大歓迎です~。

  3. なるほど、そういう意味でしたか。納得です。
    男の願望と女の願望は違った形で現れることも多いし、同じことが描かれていても男と女で意味が違って受け取れることも多いので、異性の作家の作ったものを見るときは気を付けないとなぁ、と私自身が思っていましたので。そこからくる早とちりだったかもしれません。

  4.  ゲストさん
    男の願望と女の願望は単純に男女の裏返しではないですし、その辺の違いを楽しめるようになると、両方の良さがわかってくるものですね。ただ、「恋人同士のフリをしていたら、本当の恋人になった」という展開は、どちらの作品でもよく見かけるパターンなので、男女共通する願望なのかも…(私は嫌いですが!)

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なでしこやまとでは、総ての作品が浅生大和の主観に基づいてレビューされています。私個人の主義主張&趣味嗜好が評価に大きく関与し、客観性を無視した極めて独善的なレビューとなっております。そのことを充分踏まえた上でご覧いただけるよう、よろしくお願い致します。