発売日 2002年9月27日
メーカー elf 
宮田雪之丞と幕ノ内勝
……なにこれ? す、すごく面白くなっているじゃないですか! あの「あしたの雪之丞」がチョット目を離した隙に、何故このような進化を遂げているの!?

elf衰退を予感させた恥ずかしい噴飯モノ青春ドラマの続編が、よもやこれほどの高いクォリティの作品へと突如変貌することになろうとは。この俄かに信じ難い急激な変わり様には、「シナリオライターさんが変わっちゃったのか?」との疑念も抱かされましたが、クレジットで確認してみたところ、ちゃんと前作と変わらずに井上啓二さん。私が前作のレビューで戦犯扱いしてしまった井上啓二さんでした。

うーん、この1年で何があったというのでしょうか。まさかこんなに印象が変わってしまうなんて…。これは額を地面に擦りつけて非礼を詫びなくてはなりませんな。今回は戦犯どころか逆に、戦功第一であるといっても過言ではない活躍でしたからね。熱血ボクシング活劇という、エロゲで扱うには不向きと言える題材でありながらも、シナリオの妙でしっかりその魅力に引き込んでくれています。2の主人公勝と、1の主人公雪之丞が雌雄を決する展開には、グッと胸に去来するものが。前作と雲泥の差とも言えるシナリオこそが、今回の評価における最も大きな比重なのです。

そして、1と2の世界観が密接にリンクしていたことが、今作品における何より大きな利点。1でのヒロイン春日せりなをはじめ、旧作のキャラクターが余さず再出演し、ほとんどのキャラがストーリーにバッチリ絡んできています。もはや、新旧キャラの競演であると説明した方が良さそう。

雪之丞1では敵役のポジションで、少し嫌味さも感じられた久保晶子ちゃんが、2では理想の妹キャラにクラスチェンジされているなど、1を知っている者は余計楽しめる要素も盛りだくさんでした。前作の雪之丞1は、決して出来の良い作品ではなかったものの、雪之丞2を120%楽しむために、是非とも先にプレイしておくことをオススメしたいですよ。

更には、シナリオが前後半分割制になっていたことも秀逸。前半部分で意中の女の娘と仲良くなり、一つのイベントを越えると、5ヵ月後の本格的な物語へ続く。つまり、前半で射止めた女の娘とは、恋人関係(もしくはそれに近い関係)が結ばれてから5ヵ月後というラブラブ状態で開始されるんですよ。これはもう、私にとっては堪らない垂涎の展開。恋人関係=ゴールで締め括ったりせず、むしろそこからの展開を本題にしてくれていたのは嬉しい!


後半のシナリオからは、女の娘の品定めを行う為のマップ移動がなくなり、選択肢による純粋AVGに変化。途中、設けられた分岐こそ少ないものの、総数26を数えるエンディング、一人のキャラクターに割り当てられた多くの結末で、後半部分だけでも充分楽しみ尽くすことができます。

エンディングの数自体は、前作も35個と異常なほど用意されていましたが、以前のそれらはどれもが素っ気ないバッドエンドに過ぎませんでしたからね。雪之丞2では数合わせのエンディングは淘汰。迎えたエンディングがバッドエンドであったとしても、それは単なる「失敗」という終わり方ではなく、「もう一つの結末」という意味合いが強いものですので、自然と総てのエンディングを確認したくなりますよ。


あした雪之丞2、まさに新生elfの幕が開いてから初めて諸手を挙げられる作品でした。私はelf作品に対してファナティックな部分を持ち合わせているので、偏頗(へんぱ)なき冷静な分析は出来ていないのかもしれませんが、これだけの作品であれば、傑作であると断じても問題はないと思われます。

これでまたelf離れを迎える日が遠のいてしまったな。

見た目、それほど難解さは感じさせないくせに、案外厳しい難易度。話的には全然問題なく推移していっても、急転直下バッドエンドはざらですからね。他のゲームと比べても選択肢の数がそれほど多くないのに、ここまで難しさを感じさせられるのは、選択のミスをただの一度も許してくれないシビアな作りであるからなんです。

例えば、Aさんという女の娘を攻略目標に定めたとします。この場合、一般のエロゲであれば、当然、他の余計な女の娘達には脇目も振らず、彼女だけを一心に追い回して好感度を上げていきますよね? 雪之丞2では移動マップ画面で、目当ての女の娘が今現在何処の場所にいるのかアイコンで表示されておりますので、ここでもしAさんのアイコンが「部室」にあったのなら、誰だってAさんに会いに部室に行くはず

でも、これがトラップ。敢えてAさんの居場所へは向かわず、まったく関係ない禿げた爺なんぞに会いに行かないと、Aさんのストーリーは頓挫してしまうのです。関連のない爺に「ボクシングのチケットを貰う」という非常に判り辛いイベントを起こさなくては、以後話が繋がらない。

これってホント意地悪ですよ。Aさんと恋人になりたいのに、誰が好き好んで禿げた爺のアイコンをクリックしますか? Aさんにひたすらアタックし続けたとしても結局それは徒労。押してだめなら引いてみなのフレキシブルな精神でなくては、何度繰り返してもAさんは攻略できないのです。

あ~、水島あきらがお気に入りでした。黒髪ポニーテールのヒロインなんて最高ですな。彼女はなんというか、総ての要素が等しく最高水準に達していましたので、逆に私の口数も減ってしまいます。あのダレた口調からは、ここ暫く抜け出せそうにありません。

シナリオにおいても、彼女が一番素晴らしいので、今からプレイをしようと考えている方には、是非とも彼女のストーリーを最後にとっておいてもらいたい。

三枝マキ→藍川ちはる→桜瀬由美子→久保晶子→水島あきら

この順番でクリアしていくのが最も楽しめるものと思います。
2002年10月1日