発売日 2001年8月31日
メーカー elf 
あしたの雪之丞
クールと根暗の違いはルックスの差
「elfの学園もの」。このワードを耳にすれば、例えどんなにキナ臭い匂いを嗅ぎわけていたとしても突貫しなくてはならないのが信者の運命(さだめ)でして…。同級生、同級生2、下級生といったそうそうたる怪作の正統進化となり得るのか? 答えはプレイ前にわかっているはずなのですが運命には抗えません。蛭田氏不在という致死的な状況を踏まえた上でも、新生elfの行く末を見届ける為にこのエロゲはやり遂げねばならないのです。理屈ではないのです。

で、発売日に買いました。その感想は…。凡庸の一言で。

どこにでもありそうな普通のテキストAVGなんですが、どこにでもありそうな普通のテキストAVGがelfさんからリリースされたということ自体、軽い失望感ですよ。elfさんは、いつもゲーム性の高さにも心を砕いてくれていたはず。ゲーム本来の魅力である達成感を得られて、且つ、プレイを重ねると必ず道が開けてくる絶妙のバランス。同級生、下級生、遺作…とどれもクリックと選択肢だけのエロゲには止まっておりません。

ところが、その長く続く良き伝統もここで潰えてしまいました。この雪之丞はただのAVGです。凡庸極まりないただのAVGです。エンディングの数は無意味に多いんですけどね。

捻りのないテキストAVGでもシナリオレベルが高ければ文句はないものの、とてもそうは言えないレベル。というか、今回の戦犯はストーリーであることに言い逃れできませんよ。どれも稚拙で驚きのないストーリーばかりなんで。

ただ、主人公がモデル並にハンサムで黙っていてもモテてるという設定は割と斬新。エロゲの主人公はほとんどの場合が、「ルックス普通・中肉中背・頭は悪く・一人暮らし」といった、当たりも障りもしない青年が相場ですので、この雪之丞の主人公はやや異彩を放っています。

この設定に多少違和感を覚える方もいらっしゃるかとは思われますが、エロゲの主人公はだいたいなーんにもしなくてもモテモテなのですから、顔がカッコイイからモテるというのは充分明朗で納得できる設定であると、私は思います。まぁ、全部が全部、こんな設定の主人公でしたら嫌気は差しますが、たまにはこんなヤツも。

第一、確実にヤバいのは主人公よりも攻略すべき女達の方ですから。一人一人を言及していくと疲れちゃうから説明は省きますが、とにかくツマンナイ奴等であることはここに明言しておきましょう。

しかし、そんな泥土の中にも、一際まばゆい光を放ち続ける救世主の存在が。その名は「春日せりな」さん。押しも押されもせぬスーパーヒロインです。

もう彼女の存在は、オリックス時代のイチローその人。粗製濫造の脇役どもとは一線も二線も画した5億円プレイヤー。根暗(クール)野郎の主人公がどんなに彼女を拒絶しても、めげずに親身となって話し掛けようとする健気な姿はラブリー過ぎます。性格は江戸っ子気質で情に厚い感じなのですが、男臭いという訳ではなくちゃんと女の娘していますので、私の好みにキッチリ嵌っちゃいました。

更に忘れてならないのは、春日せりな役の声優さんの熱演。メチャクチャ上手い。まさに水魚の交わりです(少し意味違う)。これほど抑揚激しい性格の春日せりなを見事に演じきるのは、並みの技量ではムリでしょう。声優さんの名前は知りませんが、ファンになっちゃいましたよ。

他の奴等がそこら辺に落ちていそうな従来量産型でありながら、彼女だけは何故か別格。恐らく彼女のプロットだけが先に出て、あとは数合わせで付け足していったのだろうなという勝手な邪推も頭をよぎってしまうぐらいでして…。


まぁ、そんな感じで私は春日せりなだけが超お気に入りであったのですが、それゆえに起きた問題点もありました。それは彼女は物語冒頭から主人公に惚れてくるので、他のキャラをクリアするときはどうしても彼女をフッて切り捨てなければならないのです。…うわ、なんとも心苦しいッ!

そこで、今からプレイしようと目論んでいる後輩たちに、僭越ながら私から助言を一つ贈りたいと存じます。

他のキャラクターは先に述べたとおり廃物に過ぎないのでわざわざクリアをする必要ない。つまり、このエロゲを購入した人間は、春日せりなだけをクリアしておけば大丈夫!

これで万事は解決です。

原画家、ながせまゆ。なにやらこの人七瀬葵さんだそうで。有名な人ですね。しかし、名前は知ってるけど代表作は知らない程度の認識の私としては、それほどありがたい人選でもありませんでした。というか、七瀬葵と知った時点で「あーエロが薄いんだろうな~」というネガティヴな方向に顔を背けてしまったぐらいですから(事実エロは薄い)。

そんな余計な予備知識は置いといて、純粋に絵だけを見てみれば、まぁそれなりに。他でちらほら見かける彼女の絵はとてもお上手なのですが、この雪之丞に限ってはそれほど瞠目すべきものではないと思われます。とはいえ、CGは精魂込めたelf塗りで仕上がっているのですから、やっぱりとてもキレイ。合格点のボーダーは大幅に上回っております

春日せりな。このエロゲの登場人物は彼女一人だけですので、あしからず。ちなみにこのエロゲのタイトル、あしたのジョーとかけているというのはクリア後に気付きました。
2002年2月23日