律子の溜息・由紀の香り
メーカー〔elf〕 発売日2008年6月27日
参列者はいなくとも
分割商法って嫌いです。未完成品を出しておきながら、補完作品を別売りで買わせて、ユーザーから二重に搾取しようとするなんて悪徳過ぎるでしょ。最近のファンディスクなんて、ほとんどこのパターンですよね。そのために、わざと特定のヒロインが攻略できなかったり、エンディングが用意されていなかったりするんだからタチが悪い。「○○が攻略できるファンディスク出してくれ~」と懇願すると、まんまとメーカーの思惑に乗せられている気がするので、最近は絶対口にしないよう心掛けています。分割商法は断固反対!

そんな私の確固たるポリシーを飴細工のように曲げてくださったのが、今回の「由紀の香り・他」でございます。まぁ、いくら強がっても、本当に欲しいものは無視できないってことですね…。媚肉の香りという作品自体、大変素晴らしいものでしたし、その中で死ぬほど好きだった由紀のハッピーエンドが見られるとなると、これはもう買わずにはいられませんでした。意志薄弱で申し訳ない…。


追加されたシナリオは、私にとって最も心安まる結末であった「家庭教師をクビになり、2人でささやかな国内旅行をするバッドエンド」の続きとして描かれています。家庭教師を馘首(かくしゅ)され、海外旅行が夢と消えた主人公の拓也君は落ち込んでテンション低めですが、一方の由紀は、三澤家との縁が切れた解放感と、ささやかでも拓也と2人きりの旅行を満喫できるという幸せでテンション超高め。子供のようにはしゃぎっ放しで、旅館に着くや否や、満面の笑顔でエッチを求めてくるなど、必要以上に愛情をぶつけてきます。どちらが先に気持ちよくさせるかを競い合い、順番決めのために線香花火で勝負するなど、バカらしくも愛らしい2人のラブラブイチャイチャっぷりが堪りません~!

しかし、おバカで脳天気な振る舞いを見せている由紀でも、心の中では拓也を騙し続けてきたことに対する負い目を抱えている。彼女は過去に対する自責の念が強く、自分が拓也に愛されるに足る女なのかと、ずっと苦悩しているんですね。セックスの折にはその弱い心根の部分が露呈してしまい、処女をあげられなかったことを悔い始めたり、打って変わってネガティブな一面を見せるのです。

自虐的になる彼女をどう慰めるのか、まさに男としての器が問われる重要な場面でしたが、拓也君は実に泰然としていました。由紀がMであることを考慮して、敢えて責め立てるような口調で詰りながらも、しっかりと愛情を裏付けて慰めているのが憎い。付き合い始め、もしくは初エッチで軽々しく言葉責めをする主人公は嫌いですけど、この2人の関係のように、お互い理解を深めた仲で行うものであれば、ものすごく効果的なんですよねぇ。2人の結び付きの強さがあって、初めて言葉責めにも愛情がこもるというか。

「みんな恋愛を重ねて、イッパイ傷ついて…。そうしてやっと自分にピッタリな人を見つける」

これも拓也君のセリフですが、なんて心に染み入るセリフでしょう。エロゲでは1人の恋人と生涯添い遂げることが絶対視されていて、処女を捧げる相手は結婚相手と言わんばかりの前時代的な価値観に支配されていますが、私としてはこういった恋愛観の方がずっと共感できます。過去に何があろうとも、今の気持ちさえ真剣であれば立派な純愛ですよ!

最後には、由紀が守っていた大切なアレを頂くこととなり、本編での不平不満は総て解消されることに。くだらない連中の手が届かず、二人だけの幸せを見つけられる場所は、私が求めていた最高の場所でした。ポリシーを曲げてでも購入した甲斐があったってもんです。これは本当にやっておいて良かったと心から思う


と、レビューを締める前に、もう片方の「律子の溜息」も忘れずに紹介しておきたい。「その他」扱いしていた私が言うのもなんですが、こちらも軽視することの出来ない素晴らしい内容だったんで~。

意地の悪い癇癪持ちのオバサンという、第1印象こそ最悪な律子ですが、その実態は真逆とも言える心優しさを持っています。冷たい表情と冷たい口調でちっとも暖かみを感じさせないのに、彼女の行動は溢れんばかりの慈愛に満ちていて、総てを失い絶望の淵に佇む主人公を、叱るように励まし、突き放すように包み込む母性は、思わず目頭が熱くなってしまうほどですよ。赤の他人に対して、これだけ親身に接してくれる人はそうそういません。彼女には2種類のエンディングが用意されてあったのですが、個人的には彼女と結ばれないパターンの方が良かったですね。拓也君が自然と律子ママと口にした瞬間、耐えきれず、うるっと来てしまいましたから…。

由紀の香り・律子の溜息、結果としてどちらも素晴らしい出来でした。媚肉の香りをプレイされている方なら、由紀と律子に特別な思い入れがなくても、是非ともやっておくべき。もしこの2つのルートが本編に収録されていたら、間違いなく10点は加点していたんだけどな。

媚肉の香りはどのエッチシーンも内容が深いんで、思わずテキストに魅入ってしまいます。でも、普通にエロさとしても高スペック。無修正の淫語と、アフターエフェクツのフルアニメーションの威力は相変わらず素晴らしいですよ。手コキのシーンでは、手首の返しがやけに生々しくてエロかった。スナップを利かせています。

私は進藤由紀が好きすぎる…。今後、由紀絡みの追加シナリオが出るたびに、片っ端からまとめて購入してしまいそうな勢い。子供のような笑顔と膨れっ面に心が奪われます。
2008年7月11日