発売日 2010年3月26日
メーカー Leaf 
WHITE ALBUM 2
けんのん!
巷で大流行中の軽音楽を題材に取り入れつつ、丸戸史明さんの手によって新たに紡ぎ出された不朽の名作WHITE ALBUMの続編。学園生活最後の想い出となる1ヶ月後の学園祭ステージを成功させるべく、主人公の北原春希と悪友の飯塚武也は、学園のアイドル小木曾雪菜と、天才的なピアノの才能を持つ冬馬かずさをメンバーに加え入れ、バンドを結成する。

共通の目標に向かい、仲間と一緒に部活に打ち込む姿は、それだけで掛け替えのない感動がありますね。学園祭のステージの幕が開く瞬間、私にもじーんと感極まるものが。本番を目指し弛まなく続けられた練習の中で、深まった仲間との絆。芽生える恋心。要点を抜き出せば、呆れるほど正攻法な青春ラブストーリーなんですが、こんなにも心を温かくさせてくれる

主人公の春希君は、良い意味でエロゲっぽくなくて好き。真面目で面倒見が良く、メンバー集めにも自ら奔走して説得を行うなど、とても積極的で行動的。けんもほろろに拒絶されながら、めげることなく三顧の礼でかずさをメンバーに引き入れるなど、気骨があるところも個人的に惹かれますね。それも単なる御機嫌伺いではなく、しっかり思ったことは意見して、真摯に向き合うことができる。音楽では、実力不足である自分を謙虚に受け止め、寝る間を惜しんで猛特訓に励む努力家。ああ、めっちゃ理想の主人公像じゃないですか。いつも主人公にぎゃーぎゃー煩い私ですが、求めていたのはこういう人材なのですよ~。ちゃんとボイスも付いていましたしね。

ただ、敢えて1つだけ口を挟むとするなら……彼はクズだということでしょうか(笑) 雪菜と交際していながら、親友のかずさに想いを寄せている極悪なクズです(笑)

まったく、天下の学園アイドルと付き合っていながら、まだ満たされないお前は何様なんだとっ!! こんなカワイイ彼女いないですよ! 最初は、控えめで引っ込み思案な少女だと思いきや、それは周囲のイメージに応えるための意地で、実は明るくフランクな性格。バンドのボーカルに関しても、頼まれたから渋々歌うのではなく、しっかり自らの意志でもって引き受け、歌だけは譲れない、空気を読みたくないと自己主張できる芯の強さを持っている。その上で、ミス峰城大付属に2年連続で選ばれている飛び抜けたルックスの持ち主なのですから、もう完全無欠の最高の彼女じゃないですか! 一体何が不満なわけ!?

クリスマスイブには、自分に惚れている雪菜とかずさの2人を引き連れて温泉旅行したり、春希君はちょぉぉぉっっとばかり贅沢が過ぎるんじゃないかなぁ…? 気をつけないと、いつか背後から鋭利な凶器で一突きにされますよ? 私もプレイしていて、何度殺意めいた感情が胸に去来したことか。嫉妬の炎で焼き殺したい男3ヶ月連続1位の称号は伊達じゃない。

しかし、WHITE ALBUM2の主題はまさにここ。学園祭を経て、絆を深めた3人の親友同士による三角関係。それは1人の男性を巡る恋の鞘当てといった単純なものではなく、互いが互いを想い合う友情に彩られた三角関係だから重い。いつまでも3人一緒にいたいと声高に叫びながら、恋愛感情が混ざり合っているひどく歪な関係は、僅かな亀裂であっという間に崩壊してしまいかねない危うさと脆さ。和気藹々とした楽しいひとときの中にも、常に破滅の匂いが漂う剣呑とした空気が晴れないので、見ているこっちは息が詰まりそうなハラハラ感があるんですよね…。

そして、この上ない切なさ。誰も悪い人はいないはずなのに、すれ違う気持ちが、みんなを傷付けている。この行き場のない切なさが胸をぎゅうぎゅう締め付けてきます


もはや何度目のセリフになるか忘れましたが、改めて、丸戸さんの偉大さを思い知りました。この人は一体どれだけ引き出しがあるんだか…。コメディもやれるかと思えば、こんなリアリティを加味したドラマ仕立ての切ないラブロマンスもやってのける。まだ物語が途中なので評価は慎重にならざるを得ないですが、自分の中での最高の丸戸作品になりそうですよ。WHITE ALBUM2には、全身丸ごと鷲掴みにされました。

closing chapterでは、ここからどういった決着が付けられるんでしょうかねー。雪菜もかずさも絶妙なバランスで均衡しているので、どっちを選ぶとかそういう次元で物事を考えたくない。この揺れる気持ちは、まさしく君望の水月&遙以来。というかこれ、WHITE ALBUMの続編というより、君が望む永遠の続編と呼んだ方がしっくりくるような? 1章が終わって次回は3年後ってところも一緒。丸戸さんは、ageと間違えてLeafに企画を持ち込んじゃったのね。ドジッ子だなぁ。

散々クズクズ罵っておいてなんですが、別に私は春希君に失望した訳じゃありません。というか、エロゲの主人公は適度にクズじゃなきゃ面白くないですよ。聖人君子なんか最初からお呼びじゃない。ノーミスでベストな選択ばかりを選ぶ恋愛なんてあり得ないですし、たくさん愚かな失敗を重ねて成長していくもの。俯瞰して物を見ている第三者が、軽々しく春希君の行動を非難できるものじゃございません。

第一、かずさに気があっても、あそこで雪菜の告白を理性的に突っぱねられる人なんていないよ! 雪菜本人も、断れないことを見越して迫っている。三者の複雑な思惑の末に構築された三角関係だからこそ、重たいんですよねー。

レビューの記述が、若干雪菜贔屓な感じになっていますが、それは物語がかずさ贔屓だったため。雪菜の方が報われない感じだったので、どうしても私は雪菜に肩入れしてしまうところがありますね…。実際には、雪菜もかずさも同じぐらい好きです。私には2人を選べませんよ、クズなんで。

お気に入りといえば、軽音同好会メンバーの武也も私は好きだったんですけどねぇ。途中から、何故か除け者にされていたのが悲しい。メンバーの合宿ですら、お前は家で打ち込みやっとけと、早々に追い出され、本番当日は舞台にも上がらせてもらえない。いくらなんでも可哀想すぎませんか? 同窓会も3人だけで、完全に武也はいなかった扱いにされているし…。イジメですよ、これは。

※ネタバレを含んでいます。ご注意ください。
小説と2週目の追加シナリオで、かずさの春希に対する想いの深さを知ってしまうと、どれだけ彼女が愛おしくなることか。口付けを交わしたあとに、「なんでそんなに慣れてんだよっ!」と怒りを買うシーンは、自分の中でとても衝撃的でした。初めて露わにした雪菜への嫉妬。この時点で、気持ちはかずさにごっそり持って行かれた感じです。

かと思えば、かずさを抱いたことを責めようとしない雪菜にも気持ちが揺らぐ。眼前でかずさを抱擁しキスをするのを見せつけられた彼女の心情を慮ると、苦しくて苦しくて…。あそこで雪菜がキレて、頬でも叩いて、弁護士通して慰謝料でも請求すれば話は丸く収まったのに。案外、それがこの物語を解決する一番のベストエンディングかもしれません。
2010年4月20日