発売日 2002年4月26日
メーカー Leaf 
エロゲの明るい未来(あした)のために酷評
っていうか~、さすがにコンシューマーのゲームでしょう。これは。

エロゲ特有の安っぽさ、如何わしさ、アンダーグラウンドっぽさは微塵も感じられず、良い意味でも悪い意味でもエロゲであることを感じさせてくれない。パッケージ、取説、設定画集のいずれにも「エロ」がまったく記載されていなかったぐらいですしね。コンシューマー移植は前提……というか、元々コンシューマーのゲームに、ムリヤリエロを付け加えたって感じですよ。

と、難癖の1つ2つでもつけたくなってくるような健全さなのですが、そのクォリティたるや無視できるレベルではないのもまた事実。背景の美しさ、3頭身チップキャラの豊富なアニメーションパターン、優れたゲームデザイン等「見た目のクォリティ」は元より、一見しては見逃してしまうような細かな点、その隅々までも行き届いているのは本当に素晴らしい。例えば、私が驚かされたのは効果音の演出。蟲の鳴き声、合戦の怒号、どんな些細なものにもちゃんと効果音が用意されている。こういうものを欠かさないだけでも印象は大きく違ってきますね。

逆に、ここまで本気になられると、「ちょっと大人気ないんじゃないの?」と思えてきたり。昼休憩に皆で、ゴムボールとプラスチックバットを使って野球して遊んでいる所に、ヘルメットかぶって金属バットを持ち込んでくるような。それほど一人気合入りすぎな感もあるのです。


ゲームは、アドベンチャーゲーム要素とシミュレーションRPG要素を程よく融合させたもので、双方ともに出来は良いです。シミュレーションパートは、ファイアーエムブレムのような体裁。私はやったことありませんけどサクラ大戦が一番雰囲気としては近いのかも。

ただ、作りとしては至って単純であって、戦略をほとんど必要としません。属性の相性や、ボタン目押しによる連続攻撃で戦いに幅を持たせていますが、基本は近づいて敵を叩いていくだけ。敵CPUのアルゴリズムも、かのファイアーエムブレムみたく、弱ってる味方を寄ってたかってタコ殴りしてリセットボタンへと追い込ませるような意地悪さはなく、近くにいる奴を考えもなしに攻撃してくるだけですから、こちらとしては組し易い。翻せばそれだけ戦略的な妙味が薄く、苦戦することがないので張りがない。後半の冗長な戦いになってくると、さすがに飽き飽きしてしまいます。しかも、途中で中断(記録)できませんからね。結構キツイですよ。


ストーリーは、序盤はそこそこ良かったです。記憶を失い迷い込んだ主人公ハクオロが、村(集落)の何気ない日常に身を置く話ですけど、そこに住む人々とのやりとりが楽しい。和気藹々とした村人たちとの会話を交え、作物の育たない畑、森に棲む「主」、病に伏せる少女、といったささやかながらも身の丈にあったイベントが揃っていました。

雲行きが怪しくなってくるのは、ハクオロと仲間達が叛軍となり、「國」を相手に合戦を仕掛ける辺りから。村人のオッサンや女子供を率いた手勢で、戦争をおっぱじめること自体無茶なのに、そんな烏合の衆にも満たないような戦力で、国家の精鋭部隊と互角以上の戦いを繰り広げてしまうのには閉口…。「僕と友達VS国」で完膚なき勝利を収めるのは納得できません。

どうやらこの反乱を終えるまでが一区切り、いわゆる「序盤」になるようで、君主(皇)となったハクオロが戦乱の世を駆け抜けていくストーリーが、いよいよ「うたわれるもの」の本番です。これはこれで面白いんですけど、話が広がりすぎたせいでエルルゥ&アルルゥ(ヒロイン姉妹)の影が薄くなっていくのが残念。彼女らは兵隊じゃないただの村娘に過ぎませんので、政(まつりごと)の話になるとどうしても目立たなっちゃう。戦争に明け暮れるばかりじゃなく、もう少し恋愛的要素を深く取り入れて欲しかったな~。

そして、「中盤」を越えれば、大崩壊の「終盤」に。…この辺りはプレイするのが辛かったですね。「序盤」のほのぼのとした話が急に戦国草子に変容してしまったことにも戸惑いましたが、「終盤」はいつの間にやら、ワケワカンナイやつらの独壇場となった意味不明な世界になってしまいましたから。ロボット(っぽい兵器)や、天使(っぽい種族)や、人造人間(っぽいキャラ)や、スライム(っぽい生物)が際限なく入り乱れてきて、とうとう人間様の手の及ぶ戦いじゃなくなってしまいます

積み上げてきたバランスは、もうガタガタのバラバラでしっちゃかめっちゃか。歴史モノの面影は跡形を残さず消え失せました。クライマックスとして盛り上げようとの思惑でしょうけれども、ここまで話が大きく方向転換して別物になってくると、「もう好きにして」って感じになってしまう。水戸黄門の最終回でモンスターとバトルを見せられても嬉しくないでしょ?

結果として、一番初めの頃の慎ましやかな村の生活が一番楽しかった。あの頃はエルルゥもアルルゥも活き活きしていましたし、義賊オボロとのやり取りも楽しかった。加えてヌワンギもイイヤツ(面白い)でした。あの頃に戻りたい。

ゲームをはじめて数時間経っても、一向に話が艶っぽくならない。「初乳首」が出てきたのは、プレイを始めてからおよそ10時間後ぐらい。それまでは一切、お色気CGはおろか下ネタすら出てきませんでした。それでいて、焦らしに焦らしたエロも「18禁のシールを貼りたいが為に無理やり導入した」ような、安易でソフトなものばかりでしたからね。

しかも、悪司やランスと違って、どちらかと言えば真面目な性格の主人公が、常に自分を想ってくれているエルルゥを裏切るカタチで、自軍の女性キャラ全員に手を出しまくるのは疑問を感じずにいられません。

男女問わずに魅力的。それぞれの個性は際立って、バックボーンもしっかり設定されています。なかんずくヒロイン格の姉妹、エルルゥ、アルルゥは別格。文句なくカワイイ。

一方、男性陣でお気に入り“だった”のはヌワンギ。ヒドイ奴ですが、わかりやすい性格でどこか憎めない、お笑い担当のナイスなキャラクター“でした”。

過去形を強調しているのは、途中から彼は激しく間違った方向へ暴走する(させられる)からです。素で嫌なキャラになっていきますし、まったくもってシャレにならないことをしでかしてくれる。場を散々冷やしてくれた後は、あっけない最期で早々とゲームから退場

九品仏大志に続く、名物男性キャラになるかと思っていたのですが…。こんな味のあるキャラをもったいない使い方しますよ。ホントに。

この「うたわれるもの」、すごいゲームであったことに異論はありません。グラフィック、サウンド、演出、エロゲとしてあらゆる面で驚愕の完成度でした。現存のエロゲでは間違いなく頂点に位置する作品でしょう。

というわけで、こんな大作を作ることのできるLeafさんの偉大さはもう充分に思い知りましたから、次からは普通の作品に戻しませんか? 昔のLeafさんの作品みたいに、質素でもエロゲとしての本分を見失っていない作品の方がずっと心に残ると思うんですけどね。そういった意味では、オーソリティーとなったことで初心を失ってしまったLeafさんがヌワンギと重なります。エルルゥはそんなの好きじゃないよ
2002年5月2日