発売日 2010年8月14日
メーカー 07th Expansion 



7作目のアノマリー

シリーズの7って、なんとなく今までの伝統が否定される数字だと思うんですよ。作り手も受け手もドラスティックな変革を求め、フォーマットからの脱却を試みる時期、それが丁度シリーズの7作目に当たるんじゃないかと。24-TwentyFour-のSeason7でもお馴染みだったCTUが解体されちゃいましたし、7作目でガラリと雰囲気を変えてくる作品って他にも結構ありますよね。

それは、うみねこのEpisode7にも当てはまります。アンチミステリーVSアンチファンタジーの対決は既に終結し、物語は解答編に入っているため変化は当然であるとも言えますが、主役である戦人がほとんど出てこなかったのは衝撃。新キャラのウィルと理御が物語の中心となり、旧来メンバーはみんな脇役扱いでした。

「魔術師狩りのライト」ことウィルは非常に有能な男でして、幾つかの証言だけでたちまち舞台の全体像を把握し、ベアトリーチェの正体はおろか、碑文の謎まであっさり読み解いてしまう。戦人があれだけ苦しめられたEpisode1~4での魔女トリックも完全にお見通しで、軽々とミステリーで一刀両断。いやはや、うみねこの真相をこうも容易くズバズバ言い当ててしまうなんて恐るべき男ですよ。これなら戦人の出番がないのも納得。むしろ戦人の必要性はなくなったも同然ですね。戦人は無用。

……とは、ならないわけで。一連のウィルの活躍を見て、隔靴掻痒だったのは私だけではないはず。Episode7になってひょっこり現れた新キャラが、物知り顔でベラベラ真相を語り出すなんて、興を殺ぐこと甚だしいですよ! 私はずっと戦人と共にうみねこの謎に挑んできました。なのに、その戦人の与り知らぬところで、次々と謎が勝手に解明されていくのは屈辱でしかありません! 古戸ヱリカは自らを知的強姦者と称していましたが、ウィルはさながら知的寝取り男。探偵が得意げに真相を披露するというミステリー最大のハイライトを、戦人から奪わないでっ…!!

これまでずっと手放し状態で褒め称えてきた私ですが、うみねこに対する初めての明確な不満だと申していいでしょう。CTUどころか、ジャック・バウアーの出てこない24みたいなもんですから、もはやこれを「うみねこのなく頃に」と認識することすら難しい。私の大好きだったうみねこが様変わりしてしまい、失望感を隠せません…。とはいえ、ウィル個人に恨みがあるわけではなく、彼は彼で、また戦人と違った魅力があったことは私も素直に認めざるを得ないところ。


ウィルはミステリーにおいて軽視されがちな動機・人間の心を尊ぶキャラクター。犯人と犯行が議論の中心となる六軒島の殺人事件において、敢えて彼は「Why done it?」の側面から真実を解き明かそうと奔走します。六軒島で繰り広げられた凄惨な殺人事件はどのような経緯によって生まれたのか? 紐解かれるのは6年前の1980年。ベアトリーチェの自叙伝によって真実が語られます。

事件の発端は、大量殺人事件へと繋がる動機としては、あまりに小さな出来事でしたが、その苦悩は大いに伝わってくるもの。作中で、あれだけ明々白々と語られていた出来事でありながら、まったく気付くことのなかった発端。「重要視されなかったこと」がそのまま罪であるというなら、身に摘まされる思いですよ。今なら、Episode4でのベアトリーチェとの問答も納得できます。

Episode7で明かされた謎の数々は、思った以上に克明なものでした。金蔵の生い立ち、ベアトリーチェの誕生、碑文の謎、六軒島の真実、具体的なWho(犯人)とHow(トリック)以外は、半分以上明るみに出たと言っていいです。変に有耶無耶にされたり、抽象的な描写で誤魔化されたり、私はそういった暈かした答えで煙に巻かれることを恐れていましたが、竜騎士07さんはとても紳士的で、明確な答えをちゃんと提示してくれました。そして、それらの多くが道理に適う素晴らしい真相であると得心できるものでした

あれが伏線だったのか、そんな事情があったのか、こういう意味だったのかと、竜騎士07さんの壮大な仕掛けにただただ驚かされるばかり。そう考えると、解答編として実に有意義なEpisodeであったと断言できるのですが、前段で述べたように、戦人の活躍が一切見られなかったこと、引いては、うみねこの大きな魅力である爽快さ、痛快さが欠けていたことはハッキリと残る不満。私はうみねこに感心するだけではなく感動もしたいのです。

この物語は、既にただ真実が朗朗と語られるだけで満足できるものではありません。感情へ訴えかける大いなる感動が欲しい! そのためには、主人公戦人の大立ち回りなくしてあり得ないと思うのです。私がこれだけうみねこに傾倒しているのは、戦人とベアトリーチェの2人を心の底より愛しているから。その2人の活躍なくして、物語の幕は絶対に閉めさせない!!

今回のEpisode7は、そのための布石であるのだと信じています。打起しから弦を引く引分けまでの動作であったのだと。ならば、Episode8では勢いよく矢が放たれ、見事正鵠を射貫くような、爽快なエンディングを期待しましょう残心もキッチリと欠かさない、完璧な結末を! 求めるハードルがあまりに高すぎるのは重々承知。ですが、うみねこという最高の作品に対して、今更一切の妥協はしたくございません。

碑文の謎。これに関しては、出題されたEpisode1とヒントが出されたEpisode3のタイミングで私も謎解きに取り組んでいました。でも、結局わかりませんでした。それは「どうせ自分には難しくて解けるはずがない」という諦めが根底にあったんだと思います。

ところが、明るみになった碑文の謎は“解けるはずがない難問”ではありませんでした。出発点の「台湾」の目星さえ付いていれば、閃きはなくとも、じっくり時間をかけることで鍵には辿り着ける。そこからは言葉遊びなので正答を手繰り寄せるのも難しくない。そう思うと、真剣に解こうとしなかった、最初から無理と半ば諦めて謎解きに挑んでいた自分が呪わしいです。もっと本気で考えていれば、私でも解けていたかもしれないのに…!

まぁ、呆れかえるほど単純な答えのなぞなぞでも、自力で思考を巡らして正答へ辿り着くのは困難なもの。そういう意味では、決して「簡単」とは言えないものでしたが、自分でも手が届きそうと思わせるギリギリの難易度だったのは上手いですね。実際、解けていた人もいるみたいですし~。

右代宮金蔵とベアトリーチェ・カスティリオーニの純愛(不倫)には感動しました。10tもの金塊が六軒島の地下に眠る理由が、歴史的事実の絡んだ大掛かりなものだったので、思いっきり興味を引き込まれましたね。金蔵の立身出世伝もサイドストーリーとして見てみたくなります。
2010年12月31日