うみねこのなく頃に散Episode6
メーカー〔07th Expansion〕 発売日2009年12月30日


湖に落としたのはもっと汚いベアトリーチェです
※作品の性質上、一部ネタバレを含んだレビューとなっております。ご注意ください。

魔女幻想を見事解き明かした戦人が、自らゲームマスターに君臨するという波乱の展開で幕を閉じた前回。Episode6は、戦人の生み出す盤面によって次々真相が明らかになっていくものだと期待した人は多いでしょう。が、さすが竜騎士07さん、まっすぐは来なかったですね。

語られるのは真相ではなく、。譲治と紗音、朱志香と嘉音、戦人とベアトリーチェの三者三様の恋愛模様が詳(つまび)らかに描かれており、それぞれの想い人と結ばれるため、恋愛を司る大悪魔ゼパル&フルフルの“愛の試練”に立ち向かうことになります。

3組のカップルの話で、取り分け印象に残ったのは譲治の懺悔。優しく頼れる兄貴分として振る舞う彼も、かつては内面に醜い嫉妬や異性に対するコンプレックスを抱えていたという。紳士的な自分はさぞ男として魅力的であるに違いないと自惚れを持ちながら、退屈で冴えない男とまるで相手にされなかった現実とのギャップ。過剰にレディーファーストを気取る自分は、誰からも頼り甲斐を感じてもらえなかったのだと。自らの苦い過去を振り返る譲治の吐露に、私は強く惹き付けられました

それに対し、縁寿は「童貞臭い」とバッサリでしたけどね! 容赦なさ過ぎ!! ていうか縁寿、そんなはしたない言葉使っちゃダメだって!(笑)

ま、そんな童貞臭かった譲治も、紗音との出逢いで自らの過ち・勘違いに気付き、今では一回り大きく成長。紗音を愛する気持ちは真剣そのもので、彼女を妻として迎え入れるためには、今まで育ててくれた母親をも切り捨てるという非情な覚悟すら見せる。一見冷酷な男にも思えますが、妻を娶ることで母と決別する、それが自立ってもんですからね。言葉だけじゃなく、行動で愛を示した譲治は、男として本当に立派。こんなカッコイイ童貞いませんよ!

嘉音は嘉音で、自分の気持ちを偽ることをやめ、ハッキリと朱志香への愛を表明してからは、人が変わったように積極的に。「恋に、昔も過去も関係ない。今だけが重要なんだ」というセリフは共感。恋をすることで、自分が何者かに代わり、今まで出せなかった力が出せる。陳腐かもしれませんが、やっぱり私はそういうのにすごく弱いです。


しかし、美しいラブロマンスをただ堪能しているだけじゃなくて、同時にうみねこの謎を読み解く鍵を見つけなくてはなりません。竜騎士07さんが、考えもなしにこんな場違いな恋愛話を持ってくるとは思えませんし、やはり、ここは重大なキーが隠されているものと考えるのが妥当でしょう。

まず、共に愛し合っているカップルたちが、「愛の試練」を名目に篩い落としされていること自体が不自然。譲治と紗音、朱志香と嘉音、2つのカップルが両立してはいけない理由は何なのか? 想い人と結ばれるために他のカップルを蹴落とさなくてはならない理由は何なのか?

これが三角関係であるならしっくり来ますが、4人では三角関係を形成するのは無理。じゃあ、本当は3人しかいなかったとしたら…? 譲治・朱志香・紗音・嘉音のうち、誰かが重複している可能性があるのでは…? 紗音と嘉音は「魂が、一人に満たない」とのことでしたので、恐らくそういうことなんじゃないかなぁ~と。

Episode6冒頭で、自らの意志で密室に閉じ込められていたはずの嘉音が、「誰か来て。どうして声が出ないの…!?」と奇妙な女言葉を使っていたりするなど、紗音=嘉音を裏付けする描写は数多い。ただし、それらがそっくりミスリードである可能性も否めません…。今まで散々竜騎士07さんの手の平で踊らされてきただけに、まだ確信を持てない自分がいます。私の拙い推理なんかお見通しっぽいので。


話を戻して本編。「謎は総て解けた!」と自信満々にゲームを作り上げた戦人でしたが、いざ蓋を開けてみたら、結構穴だらけ。余裕綽々で奥の手を隠しているのかと思ったら実は空手だったり、そのくせ、甘さを見せて敵に塩を送ったりと、どうもゲームマスターとして未熟さの目立つお粗末な手合いでした。

とはいえ、まだEpisode6で続きがあるんですから、ここで戦人が圧勝してしまってもしょうがないよね。マントを羽織って気合い満々で、バシッと格好良く決めるかと思いきや、あたふたしちゃう戦人もなんか可愛いし。それに今回は戦人が不甲斐なかったというよりは、ヱリカがすごすぎたと認めざるを得ません。ヱリカは雑魚とまでは行かなくても、中ボス的なやられ役という立ち位置だと思っていただけに、ここまで気骨のある強敵だったのは意外。検死能力を持たないヱリカが、死亡を確認するために用いたとんでもない手段には度肝を抜かれました! 戦人同様、私も彼女を甘く見ていたようです。

セオリー無視の反則技で窮地に追い詰めようとするヱリカに、ロジックエラーを起こさないよう即興でシナリオを修正していく戦人。もはやこれはミステリというリングから外れた場外乱闘。ルールから逸脱したメチャクチャな戦いが、面白くってって仕方ありません。戦人の苦悩は竜騎士07さんの苦悩でもあるのかな~と思いを馳せながら読み進めていましたよ。今この時間も、うみねこのシナリオを必死に書き換えている最中かもしれませんね。


次回は遂に「答え合わせ」。膨大な謎と伏線が遂に収斂(しゅうれん)させるのかと思うと、期待半分不安半分…。私はこれまで、Episode1~6の総てを、心から堪能させてもらいました。いずれも誇張なしに最高に面白いと感じるものばかりで、不満は限りなくゼロ。相性の良さもあるでしょうが、これだけ凄まじいクォリティの作品はお目にかかったことがないので。それだけに、解答編を迎えるのは複雑な胸中なんですよね…。Episode7の真相を経ても、今の気持ちが揺るがないことを祈るばかり。

ラスト、ヱリカは自らを「18人目」と名乗り、戦人とベアトは「ヱリカを加えても17人」だと切り捨てました。お互い赤字で宣言されていますので、この事実の食い違いも共に真なりということになります。ヱリカは「18人目」と序数で表しているので、何らかの理由で島内から1人が減った、もしくは肉体と精神の数が異なるという可能性が考えられますね。

ん~、どうも嘉音=紗音に捕らわれすぎている気がします。

前回、消滅してしまったベアトリーチェがEpisode6に登場するのかしないのか、それが私の最大の関心事でしたが、意外にあっさり登場してくれましたので一安心。

ところが、生まれ変わったベアトリーチェはこれまでと性格が正反対。恭しく傅いては、柔和な笑顔で温かく戦人を出迎え、溢れる愛情をもって戦人のために誠心誠意尽くす、健気で甲斐甲斐しい女性に。今までの傲岸不遜な態度は露程にも出さず、理想の淑女として生まれ変わっていました。

「こんなのはベアトじゃない…!! ベアトってのはもっと、おかしな喋り方をして、品の無い笑いをして、それからそれから…ッ!!」

ホント、戦人は私の気持ちを斟酌してくれますね~。戦人の嘆きは、まさに私の嘆きそのものッ! こんな綺麗なベアトリーチェ、これっっっぽっちも魅力を感じないよ!!

それだけに、最後、在りし日のベアトリーチェが復活してくれたのは涙が出そうなぐらい嬉しかったです。やっぱり密室の魔女は妾でなくっちゃ!

人気ヒロインの縁寿が嬉しい再登場。相変わらず、ふて腐れたキュートな表情で、皮肉混じりのラブリーな悪態をついていました。

私には妹属性が皆無で、今まで「お兄ちゃん」の呼称に萌えたことなんて一度たりともなかったのですが、縁寿の「お兄ちゃん」には初めてグラグラ来ましたよ。お兄ちゃんって呼ぶようなキャラと思えなかったので、そのギャップですかね…。亀田兄弟の弟が「お兄ちゃん」と呼んでいたのと同じ。あ、あれ、萌えない…? でも、これで妹キャラLOVEの諸兄の気持ちが少しだけわかりかけた気がします。
2010年1月20日