うみねこのなく頃に Episode5
メーカー〔07th Expansion〕 発売日2009年8月15日


今考え中だから解答編はもう少し待って
※作品の性質上、一部ネタバレを含んだレビューとなっております。ご注意ください。

竜騎士07という人物が、段々気持ち悪くなってきましたよ…。よくもまぁ、こんなすごい展開を次々思いつくもんだなと。本当に頭の中、どうなっているんでしょうか。同じ場所を延々ループする話でありながら、Episodeごとに異なる趣を入れて飽きさせず、常に最高の面白さを提供してくれるのは、感心を通り越して寒心してしまう。5作目に入って、そろそろ落ち着きを見せるかと思いきや、ここに来て更なる加速。無尽蔵のエネルギーに言葉もありません。

しかし、今回のストーリーは全体的に悲劇だったので、気分は終始沈みっぱなし。ベアトリーチェは壊れたままだわ、夏妃は不幸のどん底だわ、私の愛する2大ヒロイン、ベアトリーチェ・右代宮夏妃の苦境ばかりがクローズアップされていたので、メチャクチャ辛かったです。

特に夏妃の扱いは散々でした。Episode1以来の見せ場で喜んでいたら、まさかこんなに悲惨な役目とはね。現実世界では親族たちが、上層世界からは魔女たちが、みんな寄って集って夏妃を虐めるんだもん! アリバイがないってだけで真犯人扱いされ、幻想裁判にかけられ、冤罪で裁かれてしまう恐怖。挙げ句には、純潔にして貞淑な夏妃さんが、金蔵との不貞の濡れ衣まで着せられて、彼女の尊厳はズタズタですよ。もう悔しくって仕方がありません!

でもね、ぶっちゃけ夏妃さんはチョット不憫な方が萌えるというか、苦境の中でも決してめげない姿が美しいんですよね~。殺人・不貞の嫌疑に晒されながら、毅然と身の潔白を主張できる凛々しさ。疎まれようが軽んじられようが、右代宮家の誇りを失わない気高さ。司法取引を持ちかけられても、決して蔵臼・金蔵に責任を擦り付けない高潔さ。政略結婚で嫁がされた夫の蔵臼、生涯自分を認めてくれなかった当主の金蔵には、恨み骨髄に徹していてもおかしくないはずなのに、本当に偉大な女性ですよ。だから、夏妃さん好きなんだ!


もう一方、ベアトリーチェは、本体こそ虚ろな抜け殻状態でしたが、夏妃が生み出した幻想(妄想)ベアトリーチェの方は、在りし日の元気いっぱいな姿のままなので嬉しかった。夏妃と蔵臼の夫婦愛を下品に茶化したり、久しぶりにベアトリーチェらしさを見た気がします。そして何より、金蔵の部屋から抜け出したときの戦人とベアトリーチェのラブラブっぷり! これがもう~~堪りませんでしたっ!!

自室に閉じ籠もることで存在を許されてきた金蔵。だが、親族たちに室内に踏み込まれ、金蔵の生存は限りなく疑わしくなった。親族側の代表古戸ヱリカは、既に金蔵は他界していたことを主張。対して、金蔵の死を隠蔽しなくてはならない夏妃は、金蔵が自分の意志で部屋から抜け出したことの証明を試みる。

現実世界での密室談義は、上位世界での魔女代理戦争に発展し、ヱリカとベアトリーチェの論戦に置き換わっているのが面白い。金蔵を部屋から逃すため、ベアトリーチェが数々の言い逃れ・難癖・屁理屈を並べるも、擬人化されたノックスの十戒(ノックスの娘)が、赤字でそれらをことごとく粉砕。施錠を結界と称し、密室の「ドア」「窓」は、それぞれ天界の異端審問官補佐が守護しているという設定で、完全に金蔵の逃げ場を塞ぐ。

必死に抗弁し続けてきたベアトリーチェ(夏妃)も、これで万策尽きたかと思われたその瞬間、我らが戦人が「爺さんは3階窓から飛び降りた」という大暴論を展開。その推理を実践するため自身が3階窓から飛び降りてみせると、今度はベアトリーチェに続いて飛べと命ずる。瀟洒なドレスのまま窓から身を躍らせるベアトリーチェ。それを優しく受け止め抱きかかえる戦人。

騎士が、塔に捕らわれた姫君を受け止めたかのような、……まるでおとぎ話の中の一場面を再現した、美しき絵画のようだった…。

なっ…な…なんという感動的なシーンでしょうか!! もう最っっっ高!! 全身がぞくぞくっと震えましたよ! ぞくぞくっと! 好敵手として啀み合ってきた2人でも、好敵手だからこそわかり合えた2人。ずっと表には出てこなかった戦人とベアトリーチェの絆、愛の発露を目の当たりにして、天にも昇る高揚感です~~! 

「妾の謎は、…そ、………そなた、…そなただけのものだ…ッ!! 右代宮戦人! 他の誰にも溶かせてはやらぬ…!!」

こんなにも美しい愛の言葉は、今までに私、聞いたことがございません。万感の思いが込められたベアトリーチェの珠玉のメッセージは、これ以上ツンでもこれ以上デレでもダメという魅惑の黄金比! ああ~う~!


しかし、これほどまでに感動的な名シーンも、元を正せば、ミステリ定番の密室談義。それも「爺さんは3階窓から飛び降りた(かもしれない)」というバカみたいな話ですもんね。本来なら、ブーイング間違いなしの最低な推理小説なのに、様々な修辞を施していつの間にか小粋なラブストーリーにすり替わっているのですから、竜騎士07さんの偉大さを称えるほかないですよ。ホワイトライとモディファイを魔法と称するなら、紛れもなく竜騎士07さんは現代に生きる魔法使い。


戦人は、今回本当に格好良すぎたな~。今までも充分格好良くて、誰よりも愛すべき最高の主人公であったのは間違いないのですけど、“ベアトリーチェ(とのゲーム)を守る”という意識が、彼に更なる成長をもたらしてくれました。親しみある存在から、憧れの存在へ。立ち絵は変わっていないはずなのに、最近戦人の顔がものすごくイケメンに見えてきて困ります。右代宮家当主の風格を纏い、男として一皮も二皮も剥けましたから。全裸で首輪付けて、ベアトリーチェのお靴を舐め舐めしていた日が遠い昔のよう…。

次回のEpisode6は、その覚醒した戦人主催のゲームとなりますが、今からホント楽しみすぎます。どんな話になるのか、全然予測が付かない。ああ、楽しみだ、楽しみだ、楽しみだ~。

心配なのは、ベアトリーチェだけ。彼女の不在は片腕、いや、半身をもがれたに等しい痛み。ベアトリーチェなしのうみねこは考えたくない! 
どうかベアトリーチェを復活させてください。それだけが私の望みです。

浅生大和

なんかキャラ萌えばかりを語ってしまいましたが、ちゃんと本編ストーリーの謎解きも楽しんでいますよ。今回は幻想描写という名の叙述トリックで大半を埋め尽くされていたため、何が真実で何が虚構かしっかり意識してストーリーを追わないと物事を大きく見誤りそう。ていうか、この物語を綴っている人間が犯人ですよねー。

何気ない出来事をこれだけ大袈裟に描いて、壮大な装飾で施された物語は、ある種爽快感があります。逆に言えば、虚飾を嫌う人、無駄や回りくどさを楽しめない人は絶対に合わないでしょう。端から推理を放棄していた人も、そろそろこの辺が限界なのでは?

偉そうにいっても、私も1週目じゃまだ何も推理できていないんですが~。碑文の謎は、随分とヒントが出て来ましたが、現状雲を掴むような話。残念ながら、私に右代宮家の当主は務まらないようです…。

19年前の男が、電話越しで夏妃の好きな季節を的中させたのは、マジシャンズセレクトで説明可能ですよね。春夏秋冬の紙を予め全部どこかに隠しておいて、彼女の答え通りに紙を選ばせればいい。……ええ、分かっていますよ、そんな単純なオチじゃないってことは。

それじゃ、本格的な推理のために、2週目行ってきます!

ミステリの理を、恋愛に準えていたのが興味深かったです。作り手は読み手に推理してもらえる保証を欲し、読み手は作り手が推理可能である保証を欲する。それは相手が自分を愛している保証がないと先に進めない、奥手な中学生の恋愛のようだと。

しかし、うみねこはミステリである保障がない=自分を愛してくれているとは限らない作品なので、私たちは片想いの真っ最中ということになりますね。両想いになりたいのは当然ですが、これだけ充実した片想いの日々を送らせてもらっているのですから、フラれても恨み言は言いますまい。

ベアトリーチェの復活を祈る毎日。このままだと私も金蔵のように黒魔術に傾倒することになってしまう。

「俺たちは“愛し合ってる”と認め合わなきゃ、……これより先には進めないんだ」と戦人が宣っていましたが、気付くの遅すぎですよ。私はEpisode2の時点で気付いていました。戦人とベアトリーチェは、結婚するしかないと!

アンチミステリーかアンチファンタジーか。長らく議論されてきたうみねこのテーマも、今となってはミステリ(リアル)とファンタジーはただの解釈の違いで、ミステリでもありファンタジーでもあるというのが正しい答えのようになってきました。それとも、更にここから別の顔を見せるようになるのでしょうか? いずれにせよ、まだまだ目が離せません。
2009年9月28日