うみねこのなく頃に Episode2
メーカー〔07th Expansion〕 発売日2007年12月31日


復唱要求ッ! 病めるときも健やかなるときも夫を愛すると誓う!
※作品の性質上、一部ネタバレを含んだレビューとなっております。ご注意ください。

碑文の謎に見立てて行われる残忍な連続殺人事件。そのどれもが人間には不可能と思しき凶行で、魔女の存在を仄めかすもの。プレイヤーはそんな魔女の存在を否定しつつ、人間の犯行であることを立証しなくてはならない。

ゲームの根幹部分は、Episode1もEpisode2も大きく変わりません。しかし、前回のEpisode1は、まだ魔女の存在は疑わしいものであり、別の真犯人を推理する余裕がありました。いわば、事件の真相を究明する検察官としての見地から物語に立ち向かうことが出来たのです。

ところが、今度のEpisode2では、“い”ないはずのベアトリーチェが客人として堂々と物語に登場し、殺害の一部始終まで克明に披露されてしまう。疑う余地を与えない決定的な事実と証言(自供)が次々と並べ立てられることで、もはや真犯人捜しなど悠長なことをしている余裕がありません。どうやったら「ベアトリーチェ=真犯人」の事実を受け入れられずに済むのか、思考はそればかりなのです。ベアトリーチェの犯行ではないことの証明、つまり、検察官とは逆の立場、弁護士側に立たされてしまったわけですよ。

真犯人を暴くより、1人の無実を証明することの方が楽と言えば楽ですが、彼女はあまりにクロなので、どうやって弁護すればいいのか途方に暮れてしまう。

 ・現行犯である
 ・1度ならず複数回に及んでいる
 ・動機がある
 ・殺意もある
 ・犯行を自供している
 ・やたらと靴を舐めさせたがる

無理無理! こんな人弁護できませんって! 思いっきり犯人じゃないですか! どんな有能な弁護士であろうとも、ここまで真っ黒な被疑者を無罪まで持って行くのは不可能でしょ~。いや、無罪にするだけなら彼女を精神鑑定に掛ければなんとかなりそうですが、犯行はおろか存在まで否定しなくてはならないのですから、要求されるハードルが高すぎる!

実際には、ベアトリーチェが本当に“い”たとしても、イコール魔女の肯定ではありませんから、存在そのものは否定しなくてもいいんですけどね。私はベアトリーチェ(らしき人)は実在しても、魔女としての力は持っていないと考えを改めました。


それにしても、私も今までいろんなキャラを見てきましたけど、ベアトリーチェほど憎たらしいキャラは初めてですねぇ…。残虐非道で無慈悲な手口は勿論のこと、人が苦悶に顔を歪めるのが大好きという性根の腐りきった性格が、何度も何度もこちらを苛つかせてくれます。人が悩んでいたり、悲しみに伏していたりすると、傷口に塩を塗るどころか塩酸をぶっかけるような容赦ない嘲笑の嵐。少しでも弱味を見せれば、嵩(かさ)に回って徹底的に責め立ててきますから…。

「おいおいおいぉい、ガッカリガッカリ、期待外れだぞォオオォ? 右代宮戦人ァアアアァアアァァ…????」

ああっ、なんてムカツク!! この癪に障る挑発的な口振りに加え、浮かべる下卑た表情が心底嫌らしい! 人の神経を逆撫ですることに関しては一級品、もう右にでる者はいないと断言できますよ! 本当にベアトリーチェは最悪で、劣悪で、醜悪で、邪悪で、極悪な魔女! 大好き!

おっと、最後に本音が出てしまいました。まぁ、Episode2の最大の見所は、やっぱりこのベアトリーチェさんのドSっぷりですからね~。Turn of the golden witchのサブタイトルよろしく、魔女の一方的な拷問が繰り広げられた今回は、まさにベアトリーチェの独擅場。彼女自身、本当に楽しくて仕様がないって感じで、無邪気な子供のように大はしゃぎしています。終始ノリノリでテンション高めだったベアトリーチェの姿を見ていると、ついついその残忍さまでが微笑ましく見えてくるというか~。


そんなベアトリーチェとの論戦は実に面白かった。今回、作中で大きな惨劇や、不可思議な事態に直面したとき、場面が一端切り替わって、戦人とベアトリーチェが神の視座から今の出来事について討論し合うんです。例えば、密室殺人が起きれば、ベアトリーチェが「今の犯行は人間には絶対不可能だろ?」と挑発してきて、受ける戦人が「そんなことはない!」と反論する。言うまでもなく、ここでのベアトリーチェの言い分は作者の竜騎士07さんの言い分であり、戦人は私たちプレイヤーの代弁者。戦人と共に、驚き、怒り、悩み、絶望し、靴を舐めることが出来るわけです。

ただし、この手の議論は、どれだけ反証不能な出来事を見せつけられようとも、情報不足、根拠不足を盾に反論すれば「認めない」ことは出来てしまう。証拠を覆すことは無理でも、屁理屈をこねて証拠を証拠として受け入れないことは誰にでも容易い。ここにある種の不毛さは感じていました。

そこでベアトリーチェは、途中から“絶対の真実を赤文字で語る”というルールを設けてきます。真実に対する立証責任は負わないものの、彼女が「赤文字」で語る情報は絶対に嘘ではないという契り。これで「事実を事実として受け入れない」という逃げ道を塞いだわけです。この秀逸なアイディアが、ゲームの楽しみ方を劇的に変化させることに!

思わぬ方法で屁理屈が封じられてしまった戦人の戸惑いに乗じて、ベアトリーチェは持ち前のドSっぷりを発揮しながら一気呵成に煽り立てる。しかし、「赤文字」は相手の屁理屈を封じるのと同時に、自分も論及を嘘で躱せなくなる諸刃の剣。無論、ベアトリーチェにも黙秘権はありますが、彼女が黙秘することは重要な核心を突いていることと同義。突破口を見出した戦人は、お得意のチェス盤理論で発想を転換し、立場を逆転させることに成功します。

主導権を奪って攻勢に立った戦人もノリノリ。居丈高だったベアトリーチェは次第に気圧され、回答も段々言い淀むように。「復唱要求ッッ!」は、逆転裁判の「異議あり!」に通じる格好良さがありまして、ここの展開はメチャクチャ痺れましたね! 核心の証言を“拒否”してチェックメイトにまで追い詰められたベアトリーチェは、最後、苦し紛れにこう言い放ちます。

「その鍵を奪ったのは誰だというのか! 答えて見せろ! お前が今度は復唱して見せろ…!!」
「そうだな、お前にばかりに復唱させた。たまには俺が答えなきゃならないだろうぜ……」
「だが拒否するッ!!」


この流れには爆笑。確かに戦人の勝利条件は「人間の手によって犯行可能」を証明するだけ。フーダニットの論証は必要はありませんからね~。ここで相手の挑発や論点逸らしに与さず、ハッキリと「拒否」したところが格好良すぎです! 普通、これだけ自分優勢の流れで来ていたら、ついでに犯人も誰か言い当ててやろうと欲がでるものなのに、戦人は勢いに身を任せず、自分の証明すべき点を見失っていなかった。感情的で熱い性格の持ち主でありながら、感情に流されない冷静さも持っているなんて、すごいじゃないですか~。こんな男、なかなかいませんよ。


サスペンス、ミステリとしての特色が色濃かったEpisode1に対し、ホラー、オカルトの性質が前面に出ていたEpisode2。頭が山羊の執事が魔法の剣でバトルを繰り広げるなど、Episode2の方が私の肌に合わない要素は多かったのですが、ベアトリーチェとの「頭脳戦」という興趣が含まれていたおかげで、結果的にはEpisode1よりも更に楽しめる出来に仕上がっていました。

これからも一層激しい戦人VSベアトリーチェの舌戦を期待したいものです。そして、最後は仲良く結婚してください。君たちお似合いだよ!

今回は本当に真犯人捜しをする余裕がなかったんですが、それでも、怪しいと感じたのは楼座ですねー。

朱志香殺害時から超怪しかった。施錠した部屋の中に鍵があったから密室という論理ですが、その鍵が“本当に”部屋の中にあったことを知るものは、発見者の楼座しかいません。つまり、楼座は隠し持っていた鍵をさも今発見したかのように装えるわけです。しかも、彼女が鍵を発見したのは、自らが「この部屋に誰か隠れているかもしれない。ベッドの下やクローゼットなどを探して!」とみんなの注意を逸らした間。怪しいです。

更に、南條と熊沢の死体が忽然と消えた際も密室でしたが、この時も楼座は、“偶然”マスターキーが同封された魔女の手紙を室内で発見していますから。同様に発見の偽装だと疑えば、ますます楼座は怪しく思えてきます。そもそも魔女からの手紙は総て楼座が絡んでいるのが怪しい。怪しさ全開です。怪しすぎてシロかと思うぐらいです。ていうか、シロですよね…。まさか犯人がこんな古典的なトリックで炙り出されるはずないですし…。

ま、この推理は的外れだとしても、楼座も容疑者の1人であること、人間に不可能な事件ではないことは証明できたと思います。え? 他の密室はって? さぁ…。

ちょっぴりドSな魔女っ娘ベアトリーチェ様です。ぺろぺろ。今後うみねこがアニメ化やコンシューマー移植を果たして声優さんが付いたとき、ベアトリーチェの声は一体誰が充てることになるんでしょうかね~。

「ほざくな、弟に殺されろよ、紗音ォンンンゥ、きっといい夢が見られるぜェエエエェエエエエエエエエェエエエェエッ!!!」

こんな愉快な人を上手に演じられる声優さんっているかなぁ?
2008年1月9日