発売日 2010年12月9日
メーカー Leaf 

自ら切り開いた王道を往復する
To Heartとは、現在の萌えゲーの確固たる地位を築き上げ、後世の作品に多大なる影響を及ぼしたメルクマール。

私もTo Heart好きでしたよ。幼馴染の神岸あかりちゃんが抜群に良かったです。あれだけ健気で一途な幼馴染もいないでしょう。ただ、良作であることは充分認めていつつも、あそこまで激賞される作品だったかという違和感は今でもありますね。マルチが何故あそこまでの人気を博したのか、私には永久に解明できそうにありませんし…。

だからというべきか、To Heart2を始めたときも、「懐かしい!」といった感慨はなし。かろうじて“To Heartらしさ”を感じられたのはビジュアルノベルという部分ぐらいでしょうか。でも、To Heart2はビジュアルノベルに固執する必要があったのかは疑問。キャラクターを覆い隠すように文章が表示されるノベル形式は、それだけ「活字」が主役であることを意味しますが、To Heart2はどう考えたって物語を読ませるタイプの作品ではないでしょう。ヒロインに萌えてもらうことが何より優先される萌えゲーなんですから、大人しく普通のウィンドウタイプにしておくべきだったと私は思いますね。


To Heart2は、もう王道中の王道を直走るガチガチの萌えゲーでした。親しい間柄でもないうちから、やたらと馴れ馴れしく接してくるヒロインの皆さんたち。一方的に擦り寄ってきて、一方的に好意を持つ。というのも、主人公の貴明君は極めて受動的な性格の持ち主なので、相手が馴れ馴れしく近寄ってこないと、いつまで経っても女の娘と接点が持てないんですよ~。ああ、情けない。

女の娘が苦手、免疫がないという設定は構いませんし、シャイな主人公も私は好きですけど、その現状にただ甘えて、自分から行動を起こそうとしないのは嫌。そのくせ、女の娘の弱り目に付け込むのは得意としていて、相手が泣いていたり、傷ついていたり、失意に陥っていたり、病気になっているときだけ「チャンス到来!」とばかりに積極的になるのが浅ましい…。話の展開なんてぜ~んぶこのパターンでしたよ。

こんな調子では、当然ストーリーの中身なんてスカスカ。To Heart2は萌えゲーなので、ストーリーの重要度は低いのかもしれませんけど、もうチョット何とかならないものですかねー?

一番期待していたタマ姉のストーリーの出来なんて最悪。“犬に追われて腰を抜かしたタマ姉をおぶって帰る”とか…。な、なんなの、このくだらないイベント。隙のない完璧なタマ姉が実は犬を苦手としていたという事実は、ベタベタながら何とか許せる。けど、犬に追いかけられて、大声で泣き喚いて、立てなくなるぐらい腰を抜かして、街中をおんぶされて送ってもらうなんて展開はありえないでしょ…。タマ姉幻滅だよ。

このイベントはタマ姉の「か弱い女」を印象付けると同時に、主人公の「頼れる男」を演出し、恋愛感情を成り立たせるフラグのつもりだったんでしょうね。気持ち悪くて鳥肌が立っちゃいました。

向坂環ことタマ姉は、PS2版が発売された頃から絶大な人気を獲得していたキャラで、私としてもずっと前から気になり続けていた存在。余程素敵な「姉萌え」があるのだろうと期待して、今回のPC版を購入したようなものですが、この体たらく。ガッカリというよりショックです。敢えてもう一度申しますが、ホントにシナリオが最悪すぎる。タマ姉が同性からの告白を断るために、咄嗟に自分は主人公と付き合っていると嘘をついて、恋人のフリをするためにデートの真似事をするけど、実はタマ姉は本当に主人公のことが好きで……ああ、説明すら恥ずかしい。

本命だったタマ姉が思いっきりコケた(私の中で)時点で、To Heart2の見通しは一気に暗くなりました。このみ→花梨→優季と次々攻略していくものの、誰一人萌えられませんし、どのシナリオも平凡としか思えない。いや、確かにこのみや花梨にも可愛らしいと思える部分は多々あります。ですが、彼女たちが貴明君なんかに惚れている時点で、私はもう白けてしまうというか…。この魅力のない主人公にそこまで懸想する理由が全然わからないのよ。恋人は自分を映す鏡。恋愛にロジックは存在しないといえど、それなりに納得できる男性を選んでくれないものでしょうか。

だって、貴明君なんかより、男友達キャラの雄二の方がフツーにいい男じゃない? 彼は明るい性格で会話も面白いし、友達思いな優しさと、女の娘への気配りを持ち合わせている。タマ姉の弟だけあって、ルックスも充分イケている上、実家は超が付くほど裕福なお坊ちゃん。誰もが放っておかないパーフェクトボーイって感じなのに、何故か取り得のない貴明君が何人もの美少女から言い寄られ、雄二は誰からもまったく相手にされていない。もう不条理としか言いようがないですよ! 何故、貴明なのか。何故、雄二じゃないのか。誰か説明してください。私は断固として雄二を支持しますっ! 彼が主人公なら良かったのにー!


結局のところ、問題は主人公に尽きるってことですよ。どんなに魅力的なヒロインでも、ダメな主人公を好きになっている時点で、その人の価値が著しく下がってしまうんですから。片方がどれだけ頑張っても無駄。釣り合わないカップルほど美しくないものはありません

それともう1つ、王道すぎて見え透いていたシナリオも何とかしてください。この「王道」は他ならぬTo Heartが一端を築き上げたものだといって過言ではないですけど、ビッグタイトルの看板を背負っている自覚があるのであれば、2は2で新たな王道を切り開こうとするぐらいのプライドが欲しかったです。それでなくても、1の発売から8年以上も経過して、スタッフもほとんど入れ替わっているんですから…。

あのTo Heartの続編が、単なる凡百キャラ萌えゲーで終わったことは悲しいね。

個人的にノベルタイプの作品にキャラクターの音声はいらないと思っています。「活字」を読む妨げとなるだけですから。しかし、世の中にはFateを「音声がないのが×」と驚きの評価をする人もいますので、やっぱりTo Heart2に音声は必要だと考える人は多いのかな? それなら尚のこと、ビジュアルノベルをやめるべきですが~。

ちなみに音声といえば、瑠璃&珊瑚の姫百合姉妹のボイスはすごかった…。2人とも関西弁を使うキャラなんですが、姉の珊瑚はともかく、妹瑠璃の関西弁はもうメチャクチャ。外国人みたいなイントネーションで発音するんですもの! ひ、ひどいよ、関西はちゃんと日本にあるのに~!

「そんなことないよ。さんちゃんのおかげですごいマンション住めてるやん」

文字ではなんてこともない普通のセリフでも、音声で聞くともう爆笑。真面目なシーンでこのギャグのような関西弁はシュールすぎて、お腹を抱えて本気で笑ってしまいました。しかも、抑揚が突然東北弁っぽくなったり、素になって普通の標準語っぽくなったり、一定せずにバラバラ。本人も混乱しながら演じていたんでしょうかねぇ。って、誰か演技指導してあげなよ…。

何だかんだで結局タマ姉かな。期待していたレベルには程遠かったですけど、彼女がいなければプレイは途中で頓挫していたのは確実。それに悪いのは彼女自身ではなく、彼女の最悪なシナリオ(三度目)ですもんね。

現に、瑠璃&珊瑚ルートの導入部分を経て、私の意識はやや変化しました。雄二から合コンの誘いを受けた貴明君が、あれこれ理由を付けて難色を示しているシーンなんですが、そんな怠惰な彼に対してタマ姉は、「タカ坊のは女の子にアプローチできないヤツの言い訳よ?」 「あんたは意気地ない。チキンだってこと」 「合コンに賛成するわけじゃないけど、せめてもうちょっとなにかに積極的になってみたら?」と、これまで蓄積されていた私の憤りを代弁してくれるかの如く、主人公を厳しく諭すのです(愛情込みで)。ここで初めてタマ姉への見方が変わってきましたね。

まぁ、瑠璃&珊瑚ルートだけでなく、どうせなら全部のルートで主人公を諭してくれよって思いますけど。

To Heart2に対して、ここまで否定的な感想を持っている人も珍しいと思います。文中の表現を不快に感じてしまった人がいるのであれば、素直にごめんなさい。私も別にLeafさんに恨みがあって悪く書いてるわけじゃないですけどね…。単純にTo Heart2が私の肌に合いませんでした。

レビューを書いた後、不安になって一度Erogame scape(エロゲー批評空間)さんをチラッと覗いてみましたが、案の定皆さん高評価。私のようにTo Heart2を悪し様に貶している人間はほとんどいません。だからきっと、私の感性がどこかズレてしまっているんでしょう。
2005年12月18日