発売日 2003年9月26日
メーカー Leaf 
この街には瘴気が充満しています
暗くて、重くて、陰気臭くて。物語は終始晴れやかにならない曇天模様(どんてんもよう)。気が滅入ってしまうこの憂鬱なストーリーは、Leafさんの作品とは思えぬ異質な雰囲気をまとっていました。

生来の内気で不器用な性格からクラスで浮いてしまっている透子が、拠り所を求めて主人公と身体の関係を結んでしまうことに始まり、この作品はありとあらゆる「愛のないセックス」が目白押し。逃避のセックスであったり、自虐のセックスであったり、内情はいつも混沌としていて、どれも心が痛むようなものばっか。主人公だけは、単に自分の快楽を求める無責任なセックスって感じなんですけどね。

で、まさにその主人公なんですが、こやつがまた、とんでもない奴だったっちゅーか、そんじゃそこらじゃお目にかかれないほどドギツイ人物でしたのよ~。代わり映えしない毎日が退屈だと愚痴りながら怠惰に明け暮れる無気力無感動の塊のような人間で、世の中くだらないとペシミストを気取っては、自分一人が悟り切った気分になっている勘違い豚野郎。そんなにこの世がつまらないなら5秒以内に死ねばいいのに、「生きるのは面倒。でも死ぬのも面倒」と臆面もなく口走りやがる。

彼に長所と呼べるものは何1つなく、それどころか、ケーキ屋のバイトすらも満足にこなせなくて、それを注意されれば「俺は役立たず能無しだ」とすぐにふて腐れるダメっぷり。そのくせ、自分より弱いものが相手だと、途端に驕慢になり暴力性が発露するんだから、こんな奴もう救いようがありませんって。恐らく彼は幼少の頃、昆虫とか猫を嬲り殺して遊んでいたに違いない。

かつて、これほどまでに最低最悪な主人公がいたでしょうか? 少なくとも、私は初めてお目にかかりましたよ、こんな手強い奴。ここまで徹底していると逆に天晴れっていうか、もう彼を嫌うとか嫌わないとかの問題は吹き飛んでしまうって感じですよね。

でも、学校の後輩の真帆ちゃんや、バイト先のおねーさんの明日菜さんなんかは、この主人公をメチャ高く買ってくれていて、「先輩は誠実」だの「貴方は自分が思ってるより優しい」だの「まっすぐで純粋」だの、弱みでも握られてるのかと思うほどベタ褒め。彼が行ったほんの僅かの善行だけに目を向けて、さも彼が品行方正な人間であるかのように誇大に褒め称えてくるのは、不気味としか言いようがない。眼識ゼロの彼女たち人物評に、私はずっと「え~?」「嘘~?」「どこが~?」とハテナマークが浮かびまくってましたもの。

実はこの作品、女性キャラの方もチョット普通じゃないっていうか、何処か壊れちゃってる人ばかりなんですよねぇ。みんなそれぞれ複雑な悩みを持っているせいか、普通の神経じゃ考えられないような行動をすることが多々あった。

しかしだからといって、どいつもこいつも自分というものを粗末に扱うのは不愉快極まりない。これはこの作品の中で私が一番腹立たしかったポイントでして、このゲームの登場人物たちは、何かあるとすぐに自暴自棄になって、軽々しく死をちらつかせたりしやがるんですよ。一体、お前らは自分の命を何だと思っているのかと。

別に私は、「命は尊い!地球より重い!」とかハンサムなことをいうつもりはないんですよ。死にたい人は思う存分死んでいいと考えている。けど、こいつらが死を口にするのは、絶望でもなく逃避ですらもなく、単に破滅願望に酔っているだけ。何かあれば安直に死へ結び付ける、こいつらの浅ましさに苛立ちを憶えてしまうんです。

多分この作品を通して、「貴様ら如きが軽々しく死を口にするな!」と憤慨される方はたくさんいらっしゃるはず。この私から見ても、うんざりする見苦しさがありましたからね。自暴自棄とは所詮駄々をこねている子供と一緒で、他人からすれば迷惑なだけですから、須磨寺雪緒のストーリーとかも、見ていてものすごくしんどかった。

でもまぁ、そんなに不愉快なら、さっさとプレイするのを止めてアンインストールしてしまえばいいのに、何だかんだ最後までクリアしてしまったってことは、やっぱりそれなりの「面白さ」があったんでしょうな。

良くも悪くも他の作品とは一線を画しているので、新鮮さはありましたし、先の読めないストーリー展開は上手い。大仰なイベントはなくとも、物語にグイグイと引き込んでくれている。元々私はこういった雰囲気の作品が好きですしね。それは暗くて重い話が好きということではなく、フィクション性があまり高くない、辻褄の合った現実味あるお話を好むということ。

各シナリオのエンディングは、どれも釈然としない終わり方ばかりなんですが、それが逆に現実的というか、これからも受け入れなくてはならない現実がまだまだ続いていくことを強く示唆する終わり方。天使のいない12月としてこの終わり方は最上だったんじゃないかな。いろいろ考えさせられる終わり方でもありましたし。

ただ、フィクションなんだから多少ご都合的でも、憂いのないスッキリした終わり方がいいという私の考え自体は、少しも揺らいでいませんよ。私は筋金入りのハッピーエンド至上主義者ですので。あくまで天使のいない12月はこれで良かったというだけです。


さて、総括ですが、この作品は本当に捉え方というものが難しい作品でした。プレイしていて楽しいことなんてないし、ムカムカさせられることだって何度もあったのに、でも不思議と最後までプレイの意欲が途切れることはなかったのですから。

結局、「こういうのもアリかな」という作品だったのかもしれません。文句はたくさんあっても、なんとなく物語に引き込まれてしまう魅力がある。もし続編が出たとしても、私は絶対にプレイすることはないでしょうが、1度くらいはこんな作品もいいと思える。

各キャラクターはフルボイス。そんなの当たり前じゃんと思いきや、意外にもLeafさんはフルボイス作品は初めてだったそうで…。

私が愚痴愚痴いいながら最後まで我慢してプレイできたのも、みつみ美里さんを始めとした超実力派のお力によるところ。女の娘は最高に可愛いし、グラフィックは完璧。今更褒め称えることでもないけど、やっぱり今更褒め称えたい。

麻生明日菜さんは非常におねーさんな感じで良かったね。しかし、相手がこのゲームの主人公となれば別。彼は甘やかしてはならん。
2003年10月15日