発売日 2011年4月28日
メーカー ALICE SOFT 
人類皆兄弟、八紘一宇!
舞台こそ宇宙であっても、モチーフは第二次世界大戦。並み居る欧米列強に正義の鉄槌を下し、我が日本帝国軍が宇宙全土の統一を目指す、スペースオペラ型戦略シミュレーションです。

過去の侵略戦争を美化し、歪曲された歴史観を植え付けかねない軍国主義賛美の不適切なエロゲには、アジアの人々多大な迷惑をかけてしまった日本人として強く抗議する所存ですが、大帝国はそこまで偏狭なナショナリズムに凝り固まった作品ではなく、肇国(ちょうこく)の精神大宇宙に共栄圈を広げようと悠久の大義を掲げているだけ。何ら危険なイデオロギーを持たない、安全なエロゲですのでご安心ください。スリッパの足音しか聞こえてきません。

右からも左からも怒られそうな前置きはさておき、大帝国はある程度史実に則ってストーリーが進行するのが面白いところ。最初はアメリカ……もとい、ガメリカの露骨な日本イジメがあって、日本企業の海外撤退を迫ったり、輸出品に不当な関税をかけたり、軍隊の日本駐屯を認めさせようとしたり、果ては思いやり予算を請求されたりと、強大な軍事力を背景に次々と不平等条約を突きつけてきます。

その他にも日独伊三国同盟や日ソ中立条約もちゃんとイベントとして存在し、それぞれ自分の判断で締結・拒絶することが可能。それによって、展開も変わってくるんですね。最初、史実通りにプレイすることを目論んでいた私ですが、ソビエトの不可侵条約だけは思わず突っぱねてしまいました


ゲームの見どころは何といっても、大艦隊を率いての戦争シーン。互いにドンパチ派手に撃ち合う様は、アニメーションも綺麗でとても見栄えがいいです。ただ、この戦闘システムがかなり独特なものでしたので、皆さんも戸惑われる方が多いのではないでしょうか? システムとして明らかに煮詰まっていない感があったのも事実。そこで、特に大きな不満点だった3つを、順に説明して参りたいと思います。

1つめ、攻撃手段の偏り。戦艦には、航空・レーザー・ミサイル・鉄鋼弾の4種の武器が用意されておりまして、それぞれ攻撃優先度と威力に違いがあります。“航空”は最初に攻撃できますが、そのぶん威力は低め。“鉄鋼弾”は最後に攻撃することになるものの、威力は高め。どちらにも一長一短があり、性能的にはちゃんと理に適っているんですけど、実際には航空とレーザーを高めればそれで充分なのだからやるせない。

航空は威力が低めといっても、強化すれば大抵の敵はそれで一発で沈むんですよねぇ。結局、先手必勝で敵を黙らせるのが一番効率的なので、ミサイルや鉄鋼弾の活躍はないに等しい。航空に耐え、レーザーに耐え、ミサイルに耐え、最後にどでかい一発をぶち当てる快感を味わいたかったのに、ジャブでKOしてしまえるようでは、そんな必殺アッパーを放つ機会がありません。ジャブ当てゲームですよ。

こうなると、せっかく種類豊富だった戦艦の数々も、航空攻撃可能な空母を量産するだけで事足りてしまいます。大部分の艦船はほとんど使わず終い。選択肢が広いようで狭いのがもったいないなぁと。航空の攻撃力は4分の1ぐらいにしてもらわなきゃ、釣り合いが取れませんって。

2つめ、作戦立案の時点で確定する勝敗。敵艦隊の戦力を見極めながら、適切に自軍の艦船を配置して作戦を遂行する、それはまさに大都督としての醍醐味です。しかし、戦いとはどれだけ頭の中で綿密にシミュレートしようが、事前の計算通りには推移しないもの。そこを臨機応変に応対することも手腕の見せ所であるはずですけど、大帝国はこちらが手順を間違えない限りイレギュラーが起こり得ないので、最初の配置で完全に勝敗が決まっちゃっているんですね…。戦いは矛を交える前から始まるものであっても、矛を交える前に終わっているのは論外でしょう。

勝てないときはどう足掻いたって100%勝てませんから、駒を一手も動かすことなく投了ですよ。侵略戦の場合、撤退することも許されず、成功確率0%のスーサイドアタックを敢行しなくちゃいけない。敵前逃亡は士道不覚悟とはいえ、自決を強要されるのはひどすぎ! 主人公の東郷毅は、「新生日本海軍は生き残ることを最優先とする。…ま、ようするに、やばくなったらとっとと逃げろってことだ」と抜かしていたくせに、その撤退が許されないのはどういう魂胆かと。

こんな絶対勝利しか許されない戦争ならば、石橋を叩いた万全の準備で仕掛けたいもの。ところが、ここで3つめの問題点。偵察という手段がないため、肝心の敵勢力の情報を取得する術がないのです。今から攻め込む星域にどれほどの軍勢が配備されているのか、皆目見当が付かないということ。ノープランで侵攻しました。思わぬ大艦隊が待ち受けていました。勝ち目はゼロでした。撤退できないので自害しました。こんな子供のお遣いのような戦争はイヤ!

だから結局、適当に攻め込んで、勝てそうになかったらロードでやり直すという繰り返し。本当はこういうズルはやりたくないんですけど、大帝国というゲーム自体がそういうプレイを前提として作られているのでやむを得ません。やり直し前提って、シミュレーションゲームとしては邪道でしょ~。

ついでに言うと、ゲームとしてやりごたえがあったのは、序盤の頃だけ。ガメリカ・エイリス・ソビエトの3大国から目の敵にされながら、自国内の右派がクーデターを起こして大混乱! でも、この厳しい難局を乗り切る部分がピークであって、そのあとは流れ作業。敵国を併呑して自国が第一勢力に上り詰めれば、もう趨勢は決まったようなものです。初回プレイは最後ソビエトとの決戦になりましたが、圧倒的な戦力差で灰燼(かいじん)に帰してやりました。敵国はイベント以外で領土を広げようとしませんし、戦力の増強も行わないので、後半になるにつれ楽になっていく…。


このように、不満は本当にいくらでも並べられるんですけど、全然つまらなかったかというとそうでもないので悩ましい。なんだかんだで時間を忘れるほど熱中していたのは事実ですので、良い部分も確実にあるんですよね。具体的にそれがなんなのかと問われれば答えに窮するのですが…。

まぁ、「敷居の低さ」というのはあるかもしれません。この手のウォー・シミュレーション系はついつい身構えてしまいがちですけど、難しさと面倒臭さを極力省いて、ビギナーにも優しい仕様になっているのは嬉しい。独特のシステムを採用していながらマニュアルを熟読する必要はなく、感覚で理解できるように作られていたあたりもさすがです。私はそこまで本格派シミュレーションを求めていたわけじゃないので、これぐらいシンプルな方がありがたい。戦闘がパズル的であったとはいえ、少なくともパズルとしての面白さはあったわけですからね。

敷居が低く、「サクサクプレイできた」ことが重要。肩が凝らない程度に軽くプレイすることができる。だから、ついついやめどきを見失う。想像していたスケールから一回りも二回りもこぢんまりしていたことは否めませんが、そんなに悪いゲームでもなかったですよ。ALICEさんらしいアイディアが詰まった佳作だと思います。

毎ターン戦略のことで頭いっぱいなので、途中に差し込まれるイベントが煩わしく感じることもしばしば。他国の情勢より、今そこにある危機をどうにかしないと。申し訳ないですけど、エッチシーンはほとんどスキップさせてもらいました。別にエロくもないし…。

KING CORE絡みのエッチシーンは別の意味でスキップ。気分悪い下衆なストーリーになっちゃって、急激にモチベーションダウン。そもそも、途中でこういう横槍が入るのは好きじゃないんですよね。戦国ランスでも、魔人ザビエルが現れて一気に白けてしまったように。あ、ちなみにランスとシィル(っぽい馬)がカメオ出演していますよ!

子持ちの司令官・東郷にその参謀秋山のコンビが好きでしたが、ヒロイン側にこれといった人材が見あたらなかったのは残念。正ヒロインは、一応帝ちゃんになるのかな? 彼女は前線に出でて戦うんじゃなく、あくまで護持すべき象徴であって欲しかった。
2011年5月4日