発売日 2001年7月27日
メーカー CIRCUS 
水夏 ~SUIKA~
全編通して死にまくるゲーム
このゲーム、他と比べて異彩を放っているのは、各章によって主人公もヒロインも全く違うオムニバス形式となっている点です。章が変わればその雰囲気も全く固有のものに変化してしまうので、一まとめにして感想を述べるのは困難。よって、今回は章ごとに分けた感想でお送りさせて頂きます。

   第一章
天然ボケな巫女水瀬伊月(いつき)と、その妹水瀬小夜のストーリー。「巫女は天然ボケである」と誰がはじめに制定したのか気にかかるところですが、彼女はもう一つのスキルとしてオタクを兼備しています。オタクな巫女さんとはなかなかに面白い設定ですが、その設定はただの飾りに過ぎなかったようで、全く活かされておりませんでした。せっかく高尚なご趣味をお持ちだというのに、突っ込んだ描写がほとんど無かったのは残念でしたね。

さて、一章の感想を結論から申し上げますと、どうもイマイチな感じであったんですよ。

いや、姉妹による恋の鞘当てというコンセプトは非常に私の好むところではあったのです。仲の良かった姉妹が一人の男性(主人公)への恋慕で険悪になっていくという過程は、背徳の混じったドキドキ感があって、とても痛快でしたし(まぁ、オチがオチなんで笑えるものではありませんが)。何が不服だったのかと仰ると答えは明瞭。主人公を務める風間彰くんのせいです。彼はなんと言うか……会話のそのほとんどがつまらないんですよ。

 女の娘「(出発の時間は)何時よ?」
 風間彰「ああ? 何G? 1Gだろ?」

万事この調子。口を開けばギャグを飛ばしてきます。好意的に解釈すればお調子者であるとも言えるんですけど、私には馴染めませんねぇ…彼のノリに。

それに、「るふぅ」とかなんだか訳のわからない口癖は何とかなりませんか? 女性が「うぐぅ」だの「ぱぎゅぅ」だの宣(のたま)われるのにはまだ微笑ましくてよいのですが、野郎が連呼すると殺意が芽生えてしまいます

   第二章
眠っている主人公に唇を重ねては「幸せすぎて壊れちゃいそう」と呟く、激キュート白川さやか先輩がメインを張っています。どこかで語ったと思いますけど、「可愛い年上」属性を持つ私として、この章が楽しめなかった訳がございません。しかも、二章は事実上ヒロインが彼女一人なので、じっくりとその魅力に浸れることが出来ます。ま~、ラブラブな展開がもう少し長く続けば言う事なしだったのですが。

ところで終盤の山場、「さやか先輩大ピンチ!」の場面で、テキストがややわかり辛かったと感じたのは私だけでしょうか。この場面では一枚絵のCGは用意されおらず、立ちキャラだけで話は進行していきますので、必然的にテキストのみをもって情景を思い描く事になるのですが、独特な回りくどいテキストのせいで現在どのような事態が起こっているのかを窺い知る事が非常に困難でした。

そもそも、この迂遠で断片的な言い回しは第二章全体に及んでます。ライターの手法(クセ)なんでしょう。謎を持たせたり、何気ない不安をプレイヤーに抱かせたりさせるのには有効である手法でしょうが、反面、難解であった事は否めません。先述の「さやか先輩大ピンチ!」は物語の一番の盛り上がりを見せる場面だけに残念でした。「テメェの読解力がねぇんだよ」と言われれば私は何も言い返せませんが。

   第三章
控えめで大人しい恋人京谷透子(きょうやとうこ)と、元気で明るくてブラコンでやっぱり義理な妹柾木茜がヒロイン。この章は素晴らしい。純粋に面白い。いや、面白すぎます。二人のヒロインはこれ以上に無いぐらい魅力的ですし、シナリオも後半における展開は魅入ってしまうほどでした。

この章、途中に設けられている選択肢は一つだけしかありません。そしてそれは究極の分岐点です。

これはね~、この選択はね~、たじろぎますよ。そうそう安易に選べる代物じゃあございません。まぁ、結局ここでセーブをして両方の展開を見てしまう訳なんですが、もし、どちらか一つしか見てはいけないと誡められてしまえば、一日中悩んでしまうことでしょう…。それぐらい、怖い選択肢なんですよ。

最後に断定しておきましょうか。この章だけで元は取れると。

   第四章
風体はまるで魔法使いを連想させる、一人称ボクの「名無しの少女」が最終章ヒロインです。

結局、最後に待ち受けていたのは看病話。いわゆる、幼女萌えで幼女泣きなストーリー。登場キャラクターも可愛らしい幼女や病弱な妹などと盛り沢山。ま、それに反比例するが如く、私はどんどこ盛り下がっていったんですけどね。一、二、三章と徐々に楽しくなっていただけに、最終章であるこの第四章にはひじょ~にガッカリさせられました。

そりゃまぁ、確かにこの「名無しの少女」はそれなりに可愛いかったですよ。ちっちゃい女の子というステータスで萌えな要素は多分にある。身体がだんだん弱っていけば可哀想とも思うし、胸も苦しくなってくる。でも、いくらなんでもあざとい

大体、この第四章に至るまでにありとあらゆる方々が死んでいますんで、もうインフレなんですよ。それにもし、主人公が神社で出会ったのが「名無しの少年」だったら全然感動的な話にはならなかったでしょうしね。可愛い女の子だったからこそというもの。


あと、少し話は逸れてしまいますけど、ちとせ(病気の妹)に音声が無かった事が激しく疑問です。このゲームは女性キャラでも脇役には声がありません。つまり、ちとせは脇役であるということなんでしょうか? これだけストーリーの中枢に据えられている彼女が脇役であるとは到底考えにくい事なのですが…。

   各章総括
まとめとすれば“4<1<2<3”の順でしたね。面白さは。

幼女相手に恋愛感情を抱ける方はこの限りではありませんでしょうが、私個人としては一番最後が一番つまらなかった。というか、最終章では今までのキャラクターが一堂に会するストーリー、もしくは、何らかの話がクロスしているのであると、当たり前のように考えていたんですがねぇ…。各章は完全に別物の話だったとは。それだったら、初めからどの章からスタートするのか選ばしてくれるのがフツーじゃありません?

こういった類いのゲームではサウンドが大きな比重を持っています。しかし、残念ながらこの水夏のBGMは場の雰囲気にそぐわない突飛な音楽が流れている箇所が幾つかありました。音楽の質そのものは悪くないのですが、ころころとBGMが転調してしまう躁鬱(そううつ)の激しさは演出として減点であったといわざるをえません。曲調がこうまでバラバラだった事に強い違和感が残ってしまいましたねー。

っていうか何で8曲しかないのよ!

第三章、恋人の京谷透子さん。彼女を選ぶという事は妹の茜を切るって意味で、とっても心苦しいのですが…。この人、主体性が欠落しているほどに主人公にベタ惚れしまくってます。いわゆる「私を嫌わないで…」タイプ。加えて、彼女の常軌を逸した愛情にもゾクゾクさせられました。内向的でありながら、内向的であるがゆえの本性に…。
2002年3月10日