Sugar+Spice
メーカー〔Chuable soft〕 発売日2007年9月28日


こけたら立ちなはれ
石を投げれば学生に当たるというほど、需要を超えて濫造され続ける学園系萌えゲーですが、その中で本当の学園生活の楽しさを表現できている作品は、ほんの一握りにしか過ぎないと思います。「学園生活の楽しさ」が何に起因するのかといえば、それはもう「友達」に他ならないでしょう。このSugar+Spice(以下、シュガスパ)は、まさしくそんな友達同士と過ごす日々の充実が描かれており、生き生きとした学園生活本来の魅力が表現されている一握りの作品でした。


人間関係が主人公中心ではなく、ちゃんとヒロインやサブキャラ同士で横の繋がりが出来ているのが好印象。歌・夢路・藍衣・はねる・司の5人はお互いをあだ名で呼び合う仲で、確固とした仲良しグループが形成されています。テスト勉強、学園祭、修学旅行、その他日常の小さなトピックを肴に、仲間内で和気藹々と賑やかに盛り上がる楽しさは、ボクとキミの狭い世界観で綴られる旧来の萌えゲーでは味わえない楽しさだと言えますねー。

ただ、1つ言わせてもらうなら、男1人女5人というグループ内の男女比率は宜しくない。佐藤君・黒越君という気のいい男友達がいるにも関わらず、彼らにまったく見向きもしないで、常に女の娘グループと一緒に行動して遊んでいる主人公和真。こんな人、絶対クラスで陰口を叩かれている存在だと思いますよ。せっかく自然な学園生活が表現できているのに、不自然なハーレム状態で台無しになってしまっているのが惜しい…。


友達同士の掛け合いの楽しさ以外にも、シュガスパの優れている点はあります。友人関係がいくら心地好いからといっても、恋が芽生えれば、次のステップ、恋人関係に移行したいと願うのは自然なこと。そこで用意されているのが「好きになったら告白!システム」いつでも任意で好きな女の娘に愛の告白ができてしまうこのエポックメーキングなシステムは、シュガスパにおいて最上のスパイスであったといっても過言じゃありません!

エロゲの主人公というのは、告白した方が負けとでも思っているのか、いつも鈍感を装って「好きだ」という言葉を相手に言わせようするのが常套。そんな及び腰に、私は毎度憤りを感じていたのですが、この作品ならそんな鬱憤もスッキリ解消。自分の意志で、自分の好きなタイミングで告白できることがなんと楽しいことか! 滅多なことがない限り、発売日を過ぎたエロゲを振り返って購入することのない私が、今更になってシュガスパを購入したのも、まさにこの「好きになったら告白!システム」が「滅多なこと」だったからです!

抑えきれない「好き」という衝動を、勇気を振り絞って告白する瞬間のドキドキ感こそ、恋愛の過程において外せない醍醐味。告白が実り、気持ちが通じ合ったときの喜びは無上であり、逆に断られたときには打ち拉がれるようなショックを受けてしまう……だからこそ、告白は面白い。

あ、今のはチョット嘘です。本当はショックなんかではなく、断れたときですら私は喜びを感じていましたから。振られて嬉しがるなんてドMもいいところですが、「もう大丈夫だろう」と慎重に慎重を期したタイミングで告白しながら無下なく振られてしまったとき、私はその悔しさよりも、越えるべきジャンダルムに立ち会えた喜びの方が断然強かったので!

いや、だって、簡単に落ちるヒロインなんてつまらないじゃないですか? 食い下がって、食い下がって、ようやく掴めた幸せの方が、得られた時の快感は何倍にも勝るというもの。この告白システムは、一度振られたからといって諦めてしまう必要はなく、二度三度と再アタックが可能ですから、己を磨き、次こそは彼女にYESと言わせてみせるとの反骨精神で頑張れる。正直、一度振られるぐらいじゃないと、本気になれませんよ! 最初は遠慮なく断って!


しかし、この尋常じゃない面白さを生み出していた告白システムも、その後の展開、振られたときのデメリット・付き合ったときのメリットの双方が薄いことで、せっかくの魅力が半減されてしまっていたのが実に残念なところ。

振られたときのデメリット、即ち“今後の関係が気まずくなる”ことがないのです。ついさっき告白して振られたばかりなのに、次のシーンでは何事もなかったかのように明るくじゃれ合っていたりするのは不自然。上手くいかなかった後のぎくしゃくした部分がなければ、告白に挑むハードルが随分下がってしまいます。

付き合えたときのメリット、即ち“恋人同士としての実感”も乏しい。というのも、基本的に今までの関係と大きな変化はなくて。仲良しグループとの付き合いも立ち位置も変わることがなく、これまで通りみんなでワイワイ騒いでバカやっている関係のまま。恋人の目の前で、他の女の娘にちょっかいかけたり、じゃれ合ったりも普通にしている。それを見ている恋人の女の娘も、別段怒ったり嫉妬する素振りは見せません

これは恋人関係になっても共通イベントがそのまま続行していることによって生まれた弊害。恋人同士のイベントも幾つかあるにはあるんですけど、割合としてはかなり少ないのです。付き合い始めたら「周りの世界が変わる」ぐらいの実感は欲しかった。つきあい始めても周りの反応に違いがなく、2人きりでイチャイチャするような時間もほとんどないようでは、何のために付き合い始めたのかわかりゃしませんよ。


結局、シュガスパはアイディア自体には特筆すべき点が多々あっても、中身の方が全然追いついていないんですねぇ。テキスト垂れ流しAVGを嫌い、エピソード選択制にしているところなんかも意欲的で評価できますが、肝心のシナリオが欠陥品であってはどうしようもない。何1つ意表を突かれることはなく、何1つ感銘を受けることもなく、古典的な萌えゲーに準えたような底の浅いシナリオは、評価以前の段階でしたので…。

なんていうか、各ヒロインの初登場シーンからして既にしんどい。うっかり着替え中を覗いちゃったぁ!(藍衣) 道端で衝突してパンチラ見えちゃったぁ!(はねる) 男の子だと思っていたら本当は女の娘だったぁ!(司) ……今時、これじゃあ厳しいですよ。歌と夢路は初対面でいきなり泣きついてくるし、ぶっちゃけ第一印象は全員最悪

野良犬に襲われそうなところを助ける話とか、とても18歳以上の大人に向けて作られている話とは思えません。こんな安いフラグでラブストーリーを名乗らないでもらいたい。それも無駄にドラマティックに描かれているもんですから、ディスプレイを隔ててものすごい温度差がありました。あちら側が熱くなればなるほど、こちら側は寒い寒い。自律神経が失調してしまいそうです。

終盤になると、今度は難病だの引っ越しだのお約束の愁嘆場を持ってきて、頼んでもいない感動の押し売りが始まります。「泣きじゃくる女の娘を優しく抱きしめてキスしたらOK」という芸のないワンパターンにはもうウンザリ。やりたいことが1つしかないなら、ヒロインも1人に絞ればいいのに。


本題から逸れた通常のエピソード、何気ない雑談部分は「友達同士で盛り上がる楽しさ」のおかげで問題なく楽しめるレベルであっても、話の本筋となるシナリオがこの有様では厳しい。いくら「萌えゲーだから」というエクスキューズがあっても、ここまで幼稚なシナリオは御免被りたいですよ…。

シュガスパは、せっかく他の作品にはない良いところをたくさん持っているのに、大事な部分がぽっかり抜け落ちている感じ。敵を一瞬の内に置き去りにするスピードに、屈強な相手にも当たり負けしない強靱なフィジカルに、冷静な状況判断能力と優れた戦術理解力に、率先してリーダーシップを発揮する抜群のキャプテンシーを持っていても、サッカーが下手なら2流。それと同じことが、このシュガスパにも言えそうです。

翻して言えば、シナリオさえマシになれば完全無欠となるわけですから、今後の成長は早い気がしますけどね。

主人公はエロゲに珍しい体育会系(硬派ではない)だったのが新鮮。基本明るい性格の人なので悪くはなかったです。

記憶喪失の設定は中二的で好きじゃありませんが、割と効果的な使われ方をしていたと思います。ちなみに、彼が記憶を失った理由、車に轢かれてしまった理由は、最も安易でベタな理由でした。10人中9人は読めるような話で感動を演出しないでくださいって。

私が好きになれたのは藍衣1人だけで、はねるはそれなり、司は普通、夢路はガッカリ、歌とは口も利きたくない

歌&夢路の中心ヒロインが好きになれなかったのは特に痛かった。歌の虚言癖には完全に嫌気が差していましたからね…。最初の内は可愛いジョークだと好意的に受け止めていましたが、場を弁えずにしつこくしつこく嘘を吐きまくるので、段々「もういい加減にしようよ」とイラッとした気分になってきます。バレバレな嘘を吐いた後に、「うん、ウソだよ♪」と舌を出して“してやったり”みたいな表情をしてくるんで、余計イライラ。途中から、この人と会話するのが嫌になりました。

それでも、歌1人を無視したまま放っておくわけにもいきませんので、渋々好きでもない彼女に告白を試みたのですが…。

「友達のままでいてほしいな」

……諦めずに再告白。

「友達としてしか見られない」

さっき「振られることが嬉しい!」と述べたばかりですが、好きでもないヒロインに振られるのは精神的に相当キツイですね…。思わず「こっちだって本当はお前なんか好きじゃないやい! 自惚れるな! バーカバーカ!」と負け惜しみを飛ばしてやりたくなりました。

深山藍衣。クールビューティー・一飜、ワガママ・一飜、オタク趣味・一飜、黒髪・二飜、元カノ・二飜、時たまメガネ・三飜と、プレイを始める前から倍満クラスの魅力を感じていた彼女。メガネを掛けて、髪を下ろして、ラフな部屋着のときの「だらしない姿」には萌えました。キャラに反する「マー君」の呼び方も、エッチ時における「藍衣」の一人称も、破壊力は凄まじい

気になる喧嘩(別れ)の原因については「たったこれしきのことで…?」と拍子抜け。
2007年12月20日