発売日 2004年7月30日
メーカー 高屋敷開発 

「ひろっさん」に泣けた
両親とのいざこざが原因で家を飛び出し、高屋敷家へと転がり込んできた家出少女沢村あかり。主人公と同じ沢村の姓、以前末莉が着用していたものと同じ衣服と、多くの謎を抱える少女を中心とした新たな家族計画に感じるものは、ある種の違和感

舞台は本編と同じ高屋敷家。主人公も変わらず沢村司。なのに、何処となく異質な空気を感じてしまう何故か? あかりの存在だけでなく、司の言動にもどことなく違和感がありますし、末莉の登場にも不思議な違和感がつきまとう。電話先の相手は? 他の家族計画の面々は? 物語は順調に先へと進んでいくものの、しっくりとしない引っ掛かりを抱えたままなんですね。

途中には末莉とのエピソードがあります。どうやら、家族計画の以後、司は末莉を選んだことになっているようで、この作品は末莉シナリオの延長らしい。用意されたエピソードは全6種で、「SM事件」のように笑いに満ちた楽しいエピソードや、「すぷらったー事件」のようなラブラブなエピソード、「3P事件」のようなエロエロなエピソードなど、末莉との楽しい日々が回想されます。どれも面白かった。しかし、突然始まるこの回想は一体何を示唆しているのか? ここでもやっぱり違和感が生まれるのです。

再び本編へと戻れば、物語の全貌が徐々に明るみに出てきました。あかりの境遇を知り、あかりが何者であるかを察することで、ようやく今まで引っかかっていた違和感の正体が見えてくる。そして、同時に思い知らされます。世界は大きく変わっていたのだと。沢村司の現在置かれている状況を把握し、数々の違和感が一気に氷解したとき、そこには大いなる驚きと感動が待ち受けていた

なんと鮮やかな叙述トリックでしょうか。活字であるがゆえに有効な書き手の罠に、私はまんまと引っ掛かってしまいましたね。パズルが解けたあとに、違和感のあった今までのあかりとのやり取りを再び思い返せば、総て意味の繋がる言動であったことを思い知ります。恐れ入りました。ネタバレ伏せのままでは、一体何に驚いているのかはわかりにくいでしょうが、どうか雰囲気だけでも汲み取って欲しい。

エンディングに向かうまでのシナリオも感動的。「家族計画」という作品は本編で完成されたものだと思っていましたから、これ以上は蛇足になるのではと考えていましたけど、そんなことは全然なかった。これぞ家族計画真のエンディングと名乗るに相応しいエンディングです。家族計画を心より愛する私にとって、こんなにも幸せなエンディングを迎えたことは感謝の念に絶えない。これほど嬉しい終わり方は他にありませんよ。

1度終わった物語をもう1度終わらせる難しさは並大抵のことじゃないのに、それを最高のカタチでやってのけたこの作品は、本当に本当に見事だとしか言いようがありません。ファンディスクの枠を超えた最高の逸品だと言えましょう。山田一さん、こんなにも素敵な作品をどうもありがとうございます!!



……と、ここで綺麗にレビューは幕を閉じる予定だったのに、高屋敷開発さん(D.O.)の商売のやり方が汚らしいせいで、感動が半減してしまうんですよねぇ。素直に褒めようとする気になりにくい。

ストーリーが短いってのは別にいいんですよ。「長編なら傑作、短編なら凡作」という風潮に偏りがちですが、要点さえ掻い摘んでキチンと伝えきれていれば、無理に装飾する必要もないと思いますし、その点、この作品のシナリオは上手くまとまっていました。

ただし、その場合は、値段をもう少し下げろって話ですね。いくらなんでもこのボリュームと値段は見合わないでしょう。これが2940円ぐらいで売られていたら、いくらでも褒め称えることができましたが、7140円ではまるでお話にならない。

しかも、驚くべきことにボイスが付いてないというのだから、唖然とさせられます…。絆箱でせっかくボイスが付いたというのに、何ゆえまたボイスなしに戻ってるの? この時点で意味不明なんですが、実はこれ、1ヵ月後に配布されるデータをダウンロードすることで、フルボイス仕様にすることができるらしいんです。

ここで反応は2種類に分かれてくると思います。1つは「わぁ! 1ヶ月待てば、無料でフルボイスにしてくれるんだ!」と素直に喜べる人。もう1つは「ふざけんじゃねーよ! 馬鹿にしてんのか!」と怒り心頭な人。ええ、勿論私は後者です。

だって、今回は絆箱の時とは事情が違って、わざとボイスを付けなかったんですよ? ネット接続の特典というくだらない理由のためだけに、わざとボイスを付けなかった。なのに、恩着せがましく、「1ヵ月後にボイスデータをダウンロードさせてあげるよ」なんていわれて、「わーい」と喜べましょうか。そもそも、最初にボイスなしをクリアさせて、1ヶ月待たせて、フルボイス版にして、もう1度プレイしろなんて、ユーザーを舐め切っているとしか思えないんですが…。

せっかく、本編のシナリオは最高のものだったのに、商売の醜さという、作品とはまったく関係のない部分でその感動が失われたのは悲しすぎる。おかげで、家族計画は素晴らしい作品だと改めて認識を強めましたが、D.O.には幻滅してしまいましたよ。大いに反省を促します。

原画の福永ユミさんの日記を見てみると、手掛けたのはパッケージと一部の原画だけとのこと。あかりの立ち絵なんかは別の人が描かれているみたい。実際にプレイしているときは、特に違和感を感じなかったんですけど…。

末莉末莉末莉末莉末莉末莉末莉末莉末莉末莉末莉末莉末莉末莉末莉末莉。

ネット接続で、発売後にいろいろなサービスを享受出来るのは確かに嬉しいこと。ですが、足りないものを後から継ぎ足していく「後付け」のための道具であるなら、こんなもの願い下げ。こういった手口を許していったら、総てのエロゲがコーエーの三国志商法になってきますよ。欠陥だらけの不良品を売りつけても、最終的に体裁を整えればそれでいいというような。そんな考え方が蔓延すれば、品質の低下に拍車がかかるのは自明の理です。
2004年8月23日