肢体を洗う
メーカー〔SILKY’S〕 発売日2002年5月31日


自分の遺体は献体できそうにありません
新生シルキーズ作品第6作目。奴隷介護の潮流を汲んだような作品で、漂うオッサン的雰囲気がとても近似しています。ストーリーはシリアスで、エロは淫靡。これこそ、本当の意味でのアダルトゲームといえるでしょう。

しかし、ストーリーやエロ云々より、まず目を奪われる事柄と言えば、やはり「死体洗い」。これだけ特異なテーマを題材にされますと、インパクトは抜群である反面、購入前にある程度のユーザーの篩(ふる)い分けがなされてしまいますね。

わかりやすく言い直せば、「死体」に対して嫌悪感を持つ方であるのなら、こんな作品をわざわざ金を出して購入する事はないだろうという事。実際、私にしても死体に対して良い印象を持っている訳ではなかったので(当たり前)、直前までスルーを考えていました。

そんな私が一転、発売日購入に到ってしまったのは単なる気紛れだったのですけれど、今にして思えば、この何気ない気紛れに感謝していたりしてます。だって、そのおかげで肢体を洗うという優れた作品巡り合せてくれたのですからね。もし今、私同様「俺は死体なんかに興味ないから、こんなエロゲどうでもいいぜ」とのお考えであるのならば、すぐにそれを改めてください。この「肢体を洗う」は、食わず嫌いで済ませてしまうには余りに惜しい作品なのです。


主人公は、大学付属病院の事務局でバイトをしながら浪人生活を送っている医者志望の青年。しかしとある事情から、突然にバイトの解雇を言い渡され、その代わりの仕事として「死体洗い」を斡旋されます。

つまり、主人公は「死体洗い」に関してずぶの素人。知識も充分でない所で、突然の死体洗いという訳です。私も主人公と同じく、死体洗いの仕事に関しては無知に等しいものでありましたので、ガッチリとシンクロする結果となりました。初めての死体洗いシーンなんかは同様にドキドキでしたよ。

でもこういうものって、大抵2回目以降は慣れてしまい、ふとすれば作業的なものに変わっていってしまいそうなものなんですが、これが巧い事に毎度毎度様々なハプニングや驚きを組み入れてきますので、なかなか「死体洗い」という仕事に飽きさせてくれないんですよね。

それに、例え“洗い場の蛍光灯が1本切れている”といった瑣末なアクシデントであっても、死体を目の前にしている状態となると、これがとんでもない大事件に化けてしまうもの。肝試しでビビッてる最中では、チョットした事でも心臓が飛び出るほどに驚いてしまうのと同じ原理です。

そんな訳で、死体洗いという斬新的な主題を掲げたこのストーリーは、大変満足できるものでした。主人公が初めて死体と対峙した心情、直面したアクシデントに狼狽する心理描写等、テキストの演出、表現も完璧。これもライターさんの実体験の賜物なんでしょうか。

これは蛇足的な個人的意見となるのですが、「死体洗い」のシーンで、画面上の死体をマウスを使ってプレイヤーが自分の意思で洗わなくてはならない、ミニゲームみたいな仕様であったのならば、もっと面白くなったような気がします。死体の洗浄をヴァーチャルで体験できるような。

文章を目で追っていくだけですと、どうしても受動的なものとなりますから、死体を洗うというより誰かが死体を洗っている気分の方が強いんですよね(それでもビビらされますけど)。これが「小説」であるのなら致し方のない事ですけど、せっかく媒体が「ゲーム」である訳ですから、是非、この利点を生かして、「任意死体洗浄」を実現して欲しかった思いです。ホイールマウスで死体をゴシゴシなんてね。

ま、「肢体を洗う」は、繰り返しのプレイを必要とするマルチエンディング方式ですんで、イチイチこんなミニゲームをやらされていては邪魔で邪魔でしょうがないものになるでしょうけど。


さて、「死体洗い」という強烈なインパクトの前に、ついつい軽視されがちになってしまいそうなエロですが、ご安心くださいませ。この分野においても手抜かりは見せずに、及第のエロシーンに仕上がっていました。

死体洗いの日々の合間に点在する甘美なエッチシーンは、さながらオアシスのよう。鬱~な気分に陥っている中での清涼エロですので、実に有用です。ラストシーンに無理矢理つぎ込んだ強引なエロや、物語の整合性を損なう突拍子なエロではない、ゲーム全体に程よく配合された濡れ場は理想的であると言えるでしょう。

懸念されていた(私の中で)陵辱色もそれほど高くなく、どちらかというと、合意のもとで交わされるエッチシーンが多かったのはナイス。キャラクター1人あたりに振り当てられたシーンも数がありますし、期待に応えうるだけのものは、しっかり用意されてあると思われます。

しかし、登場する女性達の「見た目」が、少々クセのある……というか灰汁が強い感じなので、気に入らないという人もいらっしゃるかもしれません。私も当初、違和感があったのですけれど、ストーリーを進めていくうちにサッパリ気にならなくなりました。これもキャラクターの性格付けが抜群に上手いおかげ。ここでもシナリオライターさんの力量が大いにプラスされていたという事です。

最後に念の為に言っておきますけど、死体との性交は出来ませんよ。射精は出来ますが。

グロテスクな画像を避けたい方のために、死体にモザイクをかけるシステムが搭載されています。ですが、これだけ魂の入りまくった死体画像(日本語オカシイ)に、モザイクをかけてしまう行為は冒涜というものでしょう。皆さんも恐れずに、ありのままの美しい死体を眼に焼き付けましょう。

幸い、それほどベチョベチョのグチョグチョな死体はありませんので(当然です)、それほど気分を害するような事はないはず。これが実写であるならばまた話は別ですけど、やはり「絵」なワケですから、逆に「よく出来てるよな~」と感心してしまうはず。

ストーリーは面白くて、エロも豊富。おまけに声優さんの演技にも脱帽。その他細かな点にも配慮が行き届いているような、一つ一つが優れた無欠のエロゲ。なんか誉めてばっかりなのも癪ですけど、ケチの付くような箇所が本当に見当たりません。

泣いたり萌えたりするゲームではありませんから、歴史に名を残すような傑作にはならないでしょうけど、こういった作品が正しいエロゲの手本であると言えますね。もしご友人から「俺、エロゲを始めたいんだ」と相談を受けましたら、是非、このゲームを勧めてあげてください。

実はこのエロゲには、もう一つ隠された特徴が存在します。それはなんと、登場する女性キャラクターが全員年上という事。一人ちっこいのがいますが、彼女も実は年上。エロゲで全員がおねーさんなのも珍しいのでは?

で、そんなおねーさんたちの中で一番好みだったのは、最もおねーさん的だった真田美和子。私が大好きな、可愛い年上タイプです。最近、一人称「おねーさん」の女性が堪んなく好きなんですよ。

けど、昼休みに誰もいない雑木林で、1人昼食を摂っているのは寂しいです…。真田おねーさん…。
2002年6月4日・02年6月17日追記