死神の接吻は別離の味
メーカー〔Citrus〕 発売日2009年4月24日


余命1ヶ月の学生
インストールメニューの「死神の接吻は離別の味」の誤字にいきなり脱力。離別? 別離でしょ? インストール後に生成されたショートカットもやっぱり「離別の味」。でも、ゲームを始めると「別離の味」。普通、自分が作ったゲームのタイトル間違えますかね? おるごぅるさんが泣いていますよ(本人がタイトル付けたかどうかは定かじゃないですが)。

今回、私がこの作品を手に取ったのは、その敬愛すべきおるごぅるさんがシナリオを手掛けているからという理由で100%を占めます。ちなみに、原画は風見春樹さんですので、メーカーこそ違えど、「うちの妹のばあい」コンビの新作になるんですよね。これは期待せざるをえないでしょう。

といっても、うちの妹のばあいとは性質的にほぼ別物。エロよりシナリオへの意識が強く、厄介な寝取られもなし。そもそも主人公以外に男性キャラが出てこない(ほのかのお父さん除く)ので、物理的に寝取られようがありません。これならびくびく怯える必要もない……と油断していたら、予想外の方向から寝取られがありましたが!

ま、そのことはひとまず横に置いておいて、とりあえず物語のあらすじを。

平穏な日々を過ごす主人公天宮誠は、ある日突然、大きな鎌を抱えた琥珀という不思議な少女と出会います。彼女は死神であり、人間がその存在を視認できるのは、即ち、自らの死期が迫っているということ。ところが、その事実を知らされても、主人公は取り乱して悲観する様子もなく、運命をそのまま受け入れようとする。何故なら、彼は過去に初恋の幼馴染に先立たれており、そのことから生への執着心が希薄。QUEENを殺害して生き残ろうとする意志は、最初から持っていなかったのです。……あれ、シークレットゲームが混ざっちゃった

これだけしがらみに塗れた主人公だと、ちゃんとヒロインとの色恋沙汰に発展できるのかという疑問が当然生まれてくるわけですけど、大した葛藤もなく、あっさりとくっついちゃうので逆に拍子抜け。もうすぐ死ぬのがわかっているくせに、ほのかの告白を安請け合いしてしまうってどうなんでしょ? というか、誠君はほのかに告白される直前、里中凛という少女の告白を「僕も、ずっと好きな人(死んだ幼馴染)がいるんだ」と退けたばかり。どうも話が撞着していて、首尾一貫されていないんですよね。

まぁ、好きで付き合ったものは今更仕方がないですけど、それならせめて凛のフォローぐらいはしてやれと。この凛という娘は近年稀に見る不幸なサブキャラクターでして、自らを庇った兄が目の前で無惨に殺されるわ、なんとか立ち直ろうとした矢先に、今度は愛していた男(誠)を親友(ほのか)に寝取られるわ、涙なしで語れない悲惨な人生なんですよ~(泣)

遂にはショックのあまり精神を病んでしまい、学校にも姿を見せなくなるように…。ところが、地獄に追いやった当のほのかは、「凛ちゃんどうしたんだろう~」と罪の意識ゼロ「お前のせいだよ!!」とキーボードを叩いて思い知らせてやりたかったですが、ゲームの世界の彼女に、私のメッセージは届きませんでした。

もう1人のヒロイン雫とは、「義理の妹」という更に1段階高いハードルがありながら、誘惑に負けた主人公が、我慢できずに身体を求めてしまうという最低のハードル越え。兄としてあれだけ妹を大切に想っていたのに、そんなあっけなく性欲に負けますかね? この主人公、普段は思慮深い性格なのに、時折無思慮な行動に走るから戸惑ってしまう。


最初に敬愛すべきシナリオライターだと言いながら、ここまでボコボコに否定してしまう私は人としてどうかと思いますが、正直シナリオに関して、今回あまり心に響くものではなかったのが本音。「うちの妹のばあい」コンビとして期待値は高かっただけに、結果はハッキリ言って物足りないです。

ただ、その中でもさすがと言うべきテキストの上手さが光っていて、おるごぅるさんだからこそ、最後まで物語に没頭することができたのも事実。虚飾や蛇足を省き、物語の要諦を綺麗にまとめている引き締まったシナリオは、やっぱりレベルが高いと思うのですよ。この手の感動話はついつい冗長になりがちですし、実際、尺を伸ばして、いやらしいぐらいの心理描写で感情に訴えたら、もっと泣きを誘発させていたはず。しかし、安易に泣きに色気を出さずに、テーマの貫徹を優先させたのは好感が持てるところです。

それとキャラクター描写がすごく冴えているので、日常会話のやり取りが秀逸。雫なんて、兄に対して辛辣な言葉を投げかけつつも、根底に愛情が見えるとても萌えくるしい義妹ですよ。挑発を交えた誘い受けは、確かに理性を崩壊させかねない威力はあります。おるごぅるさんの特徴ですが、普通の会話の中で不意にドキッとさせられる単語や台詞を盛り込んでくるところが良いね。エッチした翌日、通学途中に「それで失神した妹にかまわず、腰を振り続けてきたわけですね」といきなり対応に困る話題を振ってきたり。

クラスメイトのほのかだって、上記の説明だけだと最低の女のように思えますが、ホントはすごく心優しくて、奥床しくて、メチャクチャ性格の良い女の娘。交際後の一生懸命尽くそうする甲斐甲斐しさと、ラブラブイチャイチャっぷりは堪りません。1人の人間の犠牲の上に成り立っているので、素直に喜べないのが辛いところですけど…。

この作品、もしかすると萌えゲーとして割り切った方が評価は高くなるのかもしれませんね。シナリオは決して悪くはなかったですが、辻褄の合わないところや、納得の行かないところが多すぎて、ついついツッコミを入れたい衝動に駆られてしまう。もう少し時間を掛けて煮詰めれば、深みのある味わいが出て来たんじゃないかと思います。

最終の琥珀ルートも、腑に落ちないまま幕引きでしょんぼり。死神のルールがかなり適当で、後付けでどうにでもなってしまうため、ご都合主義感が否めません。全体的に流れは道なりでしたし、何か1つでも予測を裏切る展開が欲しかったな。

琥珀の正体なんて、最初のヒロインをクリアした時点でネタバレですよ。エンディング後のスタッフロールに、琥珀と○○のCVが同じ夏野こおりさんと表示されるんですもん。これじゃあ、どんな間抜けでも、琥珀の正体が○○だってわかるじゃないですか。スタッフしっかりしてよ~。

普通の純愛ゲーとして考えるなら全然エロいけど、おるごぅるさんの作品として考えると全然エロくない。明らかに本気出してないですから。

割とエロで頑張っていたのは雫ですかね。「お兄ちゃんは、私を性奴隷にしたくない?」「蹂躙、したくない?」「……お兄ちゃん、信じてたのに」の流れには吹き出してしまった。

お気に入りは義妹の天宮雫ですが、おるごぅるさんは優香という至高の義妹キャラを既に生み出しているので、それと比較したら見劣りしてしまう。

雫は、お尻が大きいと散々からかわれ、本人もそれをコンプレックスに感じているのに、CGで見ると全然大きなお尻じゃなかったのでガッカリ。むしろ肉付きがなくて小振り。Fカップ設定の巨乳キャラがCGで貧乳だったらブーイングでしょ? ここはちゃんと大きく描くべきです。
2009年5月17日