発売日 2002年12月13日
メーカー elf 

行くわよ(1904)!露助退治だ日露戦争
驕れる大国露西亜の南下政策を食い止め、我等有色人種の手によるアジアの共存共栄と、白人どもの支配から解き放たれた真の自立国家を創り上げようという壮大な明治浪漫。

そんな軍靴の音が早足で聴こえてくるような焦臭いエロゲでは、プレイする人間がごく一部に限られてしまうので、突っ込んだ描写なし、時代考証なし、萌えあり、お色気ありの、至極健全なエロゲ版サクラ大戦と仕上がっております。

そもそも、このらいむいろ戦奇譚では、その本家本元サクラ大戦のシナリオを手掛けられておられたあかほりさとるさん当人が、脚本を担当されているというのだから驚き。アニメ界の一線で活躍しているあかほりさんが、わざわざ18禁ゲームの世界で筆を取るということに、それはもう、発表直後から注目を浴びていました。当然、私としても今回の果敢なる挑戦に興趣が尽きません。業界大手のelfさんとのコラボレーションでどのような効果が生まれるのか。そのお手並みをしかと拝見させてもらいましたよ。

が。

これはシャレにならんかった…。まさかこんなツマランものになろうとは夢にも思わなんだ…。私はあかほりさんが手掛られけた作品に関して、全く無知の人間だったりするんですが、彼の実力ってこの程度なんですか? 有名な方ですし、何よりサクラ大戦を大ヒットさせた実績をお持ちなんですから、それ相応の実力は見せてくれるものだと思っていたのに……正直、これはないでしょ、と。こんなお遊びみたいなシナリオ、断じて許されるものでない。

だって、これ、学芸会なんですもの。形式的にはテレビアニメを意識した仕様になっておりますが、オーバーリアクションと、えらく芝居がかった喋りで想起されるのは、素人学生による演劇そのもの。物語全編がまるまる舞台みたいになっているんで、何をやっても何が起こっても虚仮としか思えないんです。

お話自体もすごくつまらない。どれもこれもありきたりで陳腐だし、幼稚。次の展開が手に取るように分かってしまう。お約束としてやっているつもりなんでしょうが、ここまでワンパターンなのは普通じゃないです。

ハプニングが発生すると、女の娘が気を失って倒れて、看病。主人公は、「一体何があったというんだ…」の一本調子。その後、女の娘に纏わる過去が明らかになって、それを主人公が励まして解決。

まったく、このパターンが何度繰り返された事か。懐狭いですよねぇ。物語に伏線は全く見られなかったし、意外性は露ほどにもなかった。

なんか全然戦時の真っ只中って気もしませんでしたし、みんなは何処かしらバカンス気分。かといって、恋愛モノとして筋が通っていたのかといえば、そうでもないという…。結局、戦争モノとしても恋愛モノとしても中途半端なんですよ。もう何がなにやら。


ここまでメチャクチャだと、「エロゲだから手を抜いたのか?」との疑惑も生まれてきます。でも、インタビュー記事では、あかほりさん自身、とてもやりがいがあるみたいな事を熱心に語っていましたし、エロゲだからモチベーションが上がらなかったとは、どうしても考え難いんですが…。となると、やっぱりこれが実力?

一応、真っ暗闇ではなく、微かな光明もあるにはありましたけどね。それは、女の娘キャラクターの魅力。この部分だけはさすがだなと思える所でありました。それぞれに味のある個性の強い女性陣は、とかく魅力的。サクラ大戦を築き上げてきた実績を、ここに垣間見れたような気がします。もとより、あかほりさんの能力が長けているのはこっち方面だったのかも。

と、チョット仏心も出してみましたが、やはり全体としては圧倒的にダメダメで“面白くなかった”わけですから、結論はきちんと厳しく処さねばならない。今回の敗戦の責任は、反論の余地なくあかほりさとるさん。A級戦犯はあかほりさとるさんです。

このらいむいろ戦奇譚は、今後、サクラ大戦のようにシリーズ化を目論んでおられるのでしょうかねぇ。私個人としては、もうらいむいろ戦奇譚はこれで終わりにしてしまってもいいと思っていますが。続編を待望するほどの魅力は、残念ながらありませんでした。

先生稼業を疎かにしたときのペナルティが酷すぎる…。このゲームでは、途中の選択肢や授業科目のバランスを誤ると、段々「教師」としてのポイントが下がってしまうんですが、これが一定値を割ると、なんと、勝手に話を数話先まで飛ばされてしまう。つまり、1話、2話、3話と順調に続いた次が、いきなり第8話になったりするんですよ! こんなアホな話がありますかいな。4~7話の間のストーリーが完全に飛ばされてしまうんで、当然、いきなり8話をプレイしても話は全然繋がらない。っていうか、誰がこのまま続けようとする? 無茶苦茶です。

戦闘シーンに関しても、これまた「2回目からやる気がなくなる」ようなシステム。プレイヤーがすべきことは、敵の属性に合わせて自軍のキャラクターを配置するだけ。これ以上にない単純作業ですからね。ただ黙々と打つべき手を打つだけなんで、戦闘シーンに楽しさを見出す事は不可能です。

そんな中で、主題歌の「凛花」だけはぜひ聴いて欲しい。これはいいものですよ~。私はらいむいろ戦奇譚を購入する以前から、既に主題歌を100回は聴いていました。メロディーがいいといえばそうなんですが、それよりもっと心打たれるのが、下手さ。そう、微妙に音程を外しながらも懸命に歌唱しているこの歌が、逆に心の琴線を震わすのですよ! 「檄!帝国華撃団」とは、また違った趣がございます。

主要な女性ヒロインの名前が、全員布地で統一されているのは面白い。その中で、私が一番お気に入りだった娘は黒田綸子ちゃんです。選定理由は大和撫子だから。十二単はやりすぎだと思いますけど、大和撫子には激しく萌えます。

ただし、この作品には、個別のシナリオというべきものがない。綸子を贔屓にして彼女の好感度を必死に上げたとしても、別に彼女の特別なストーリーはないんですよね。違いがあるのは最後の最後、エンディング間際だけ。それまではずっと一本道という事なんで、繰り返しプレイが非常に億劫なものになっています。だから、5人のエンディングを見ようとするだけでも、相当の根気がいりますよ。

最初から最後まであかほりさんに泣かされる作品でしたね。私は、この作品が2002年の年末、いや、2002年最大の大作であると踏んでいただけに、このまさかの体たらくにはガックリ。

本来ならば、らいむいろ戦奇譚は、決して地に堕ちるような作品なんかではなかったのですよ。完成度においてはelf史上最高のものといっていいですし、エッチシーンだってテキストさえマシなら拍手していたかもしれない。だからこそ、こうも見るも無惨な結果に終わらせてしまった「あかほりさん」に対して、強い怒りと悲しみの感情を禁じえないんです。

表のアニメ界でバリバリやっている人が、裏のエロゲ界でシナリオを執筆する事になったこの度のケースは、まるで、現役メジャーリーガーが島国のプロ野球チームにやってきたみたいな感じがしていたのですけど、どうやらそんなメジャーリーガーでも、変化球主体の野球には全然対応ができなかったようで。散々な結果を残してはそそくさ帰国していくとんだダメ外人でありました。

elfさんは自前で優秀な人材を抱えているんですから、もう無理に外様(とざま)を引っ張ってくる事もないですよ。今後は、自軍の生え抜きだけでやってくださいませ。
2002年12月29日