発売日 2009年4月24日
メーカー FLAT 

仁愛の卓球部
トランプに模した13個のPDAに、それぞれ課せられた非情なルール。制限時間内に条件がクリアされなければ、爆弾が仕掛けられた首輪が作動し絶命は免れない。逼迫した状況下、各プレイヤーは試行錯誤を重ねながら、生き残りの道を模索する…。

ならば、このゲームは愚図が堕ちていく。勝つのは智略走り他人出し抜ける者。騙す者と騙される者なら、騙される者が悪であり、一瞬たりとも気を抜くことのできない、命を懸けた熾烈なゼロサムゲーム

ところが、私の心構えとは裏腹に、呆れるほど主人公総一君に緊張感なし。殴られて拉致られて監禁されて首輪はめられたってのに、犯罪に巻き込まれたという考えに及ばず、その場で知り合った少女と悠長に談笑している脳天気っぷり。悲鳴が聞こえても、「ドラマのプロモーションだよ」とおめでたい頭で現実が直視できません。

実際に人が死に、自らも殺されかけて、遅蒔きながらゲームと向き合う彼ですが、そのあとも、「この人は信じられる」と、根拠もなく安易に他人に心を許す平和ボケ感覚に私は戸惑う。初対面で見ず知らずの人間を雰囲気だけで信頼してしまうなんて正気ですか? 信頼は「する」ものではなく、「築き上げる」ものでしょ? 貴方は本気で生き延びようとする意志があるのかと。

ていうか、「ない」んですよね。主人公に“本気で生き延びる意志”が希薄なのが、そもそもの大問題。総一君のクリア条件はQUEENの殺害。しかし、人を殺めてまで生き延びたくないと、彼は生きる希望を最初から放棄しているんです。その心意気は立派だと言えても、ゲームとしてこれほどお寒いことはありません。ゲームやスポーツにおいて一番白けるのは、当人に勝つ気がないことですから。

おかげで、「頭脳をフル回転させて生き残る」ことを楽しみにしていた私は、肩透かしもいいところ。戦わない、考えない、勝つ気がない、“ないない尽くし”の人間を応援する気にはなれませんし、例え最後まで生き残ったとしても、「運が良かったね」としか言いようがない。エピソード1は、まさしくそんな感想に終わるシナリオでした。


エピソード2では、矢幡麗佳という少女と手錠で繋がれ、共に行動を余儀なくされます。手枷のハンディを抱えつつ、2人が協力し合いながら困難に立ち向かう展開は、純粋に面白い。何より、他人を簡単に信じない慎重さと、生き残るための非情さを持ち合わせている麗佳は、私自身の考えに近しい存在。よって、ここでは総一ではなく、麗佳に感情移入することができたんです。

得体の知れない総一に警戒感を抱き、不可解な行動の意図を深読みしながら、疑心暗鬼で際限なく恐怖心が膨らんで行く過程は、見事に私の感情とシンクロ。やがて、不審は極まり、彼を殺して逃げだす算段を暗々裡(あんあんり)に始めるのですが、窮地に追い込まれたとき、総一君は自ら「俺の手首を切って、麗佳さんだけでも逃げて下さい」と事も無げに言う。これには雷光で打たれたような衝撃がありましたね~。麗佳同様、私もここですっかり主人公にデレてしまいました

すると不思議なもので、総一君に対する印象がガラリと変化。エピソード1ではあれだけ苛立ちを感じていたのに、エピソード2で「他者」として見たとき、今まで短所だと思っていた甘さ・弱さが、極限状態で人を信じられる優しさ・自己犠牲で他人を守れる強さと、たちまち長所に思えてきたのです。

現実感の薄い空間で、誰もが(私含めて)欲望・恐怖・猜疑に駆られ、狂気を身に宿してしまう中、彼だけは空気に流されず、まともな感覚を失わなかったのはすごい。騙し裏切りが横行していても、彼は誰も騙さず誰も裏切らない。誰も傷付けない。そんな無欲と無抵抗が、荒んだ人間の心を打っていく。愚かしさもここまで一本気が通っていると、逆に格好良さに映るものですよ。


……それでも、4つのエピソード総てで総一君が主役なのは、無理があったと言わざるをえませんが。毎回このパターンでは、さすがに食傷気味。エピソードごとに主人公を変えた方が絶対良かったと私は思いますよ。一度ぐらい、主人公手塚で修羅の如く戦い抜いてみたかったですもん。エピソード3は、JOKERが主人公に割り当てられるという、すごくワクワクする展開だったのに、バカ正直な主人公はあっさり手の内を晒すので、駆け引きも何もありゃしない。

エピソード4は、ゲームを主催する胴元を倒す展開になったところまでは良かった。ゲームに勝つことより、黒幕に勝つことが本当の勝利ですから、この対決はシナリオとして絶対に必要。とはいえ、これまでのゲームの体裁を全部ぶち壊して、ドンパチ戦争を始めるのは違うでしょと。あくまでルールの穴から突破口を見つけ出し、反逆を企てるのが筋じゃないんですか? 重火器の撃ち合いで白黒付けるなんて、ちっとも面白くないや。


ついつい不満先行で批判が増えてしまっていますが、面白いのはすごく面白いんですよ。久々に熱中して、どっぷりハマリ込んでしまったことは嘘じゃないです。なのに、これだけ愚痴の口数が増えるのは、2つの大きな理由に拠るもので…。

1つは、当初想定していたものとは大きく違ったこと。私はカイジでいう「限定ジャンケン」的なものを期待していたのですが、駆け引き・心理戦の妙味はほとんどなく、同じカイジでも「鉄骨渡り」の方に性質が近かった。「そうきたか!」と意表を突かれるシナリオ展開に乏しく、ラッキー依存なので勝利のカタルシスも低い。

もう1つは、「もっと面白くできたでしょ!」というもどかしさ。企画自体は最高のものでありながら、そのポテンシャルを十全に発揮できていない。例えば、他のPDAに偽装できるJOKERの存在とか、秀逸なアイディアだと思うんですよ。仲間だと信じていても、常にJOKERで欺かれている危険性があるスリルは、私でさえいろんな料理の仕方を考えつく。JOKER所有者を炙り出すのだってゲームの1つの肝であるはずなのに、終ぞそんな展開が見られなかったのは一体何故なんだと…。

最初からルール全容が解明されるのではなく、不透明なルールを模索する楽しみも欲しかったですし(エピソード4でこれをやられても)、逆にエクストラゲームのような余計な横槍は不要審判が試合の最中に頻繁に口出ししてきて、好きなようにルールをコロコロ変えられたら、興が殺がれること甚だしいですよ。バラエティ番組じゃないんだから。

エピソード2単体なら、95点を付けたいぐらい面白かったんですが、エピソード1は70点、エピソード3は80点、そして、エピソード4は55点がせいぜい。結局、平均して75点って感じ。最後をもうチョット頑張ってくれれば、少しは愚痴も控えられたのですが…。

シークレットゲームは、「信じることが正義、疑うことは悪」という思想の押しつけがやや過剰に感じる部分もありました。「信じる」ことは確かに美しいことであっても、同時に一種の思考停止状態でもある。心細くて不安なとき、誰かを信じてすがってしまうのは楽ですが、現実から逃げずに、自らの意志でしっかり考えることも大切であるはず。そのために「疑い」続けるんですよ。

心優しい咲実、おっとり口調の渚、ロリっ子甘えんぼ優希。私は彼女たちが100%裏切るものだと最初から疑いの目で見ていましたんでね(笑) 特に、いきなり「お兄ちゃん」と慕ってくる優希には、一切油断しなかった。面識もない赤の他人が「お兄ちゃん」だなんて、怪しすぎるじゃないですか! 私は騙されないぞっ!

女性陣では、矢幡麗佳が唯一の好み。彼女の思考と完全にシンクロしていたので、エピソード2はまさにツンデレの気持ちを疑似体験できるシナリオでした。

心を許したあとの麗佳は、主人公に対する好意をストレートに隠そうとしない。見た目はお嬢様っぽいですが、体育会系的な爽やかさと情熱。1歳しか年が違わないのに、やたらと先輩(おねーさん)ぶっている態度も体育会系らしさですかね。そこがLOVE。

クリア後のNGボイス集は良い! 声優さんの失敗する場面を聞けるのは貴重ですし、間違ったあとの素の瞬間がみんな可愛くて~。申し訳なさそうに「テイク5…」って小声で呟くかりん(紅月ことね)や、うぎゃぅとか訳のわからない奇声を発する渚(梨本悠里)には萌えました。

葉月のオジサン(大久保けんたろう)は、間違ったあとの反応が何故かオカマっぽくて超キモイ(笑) でも、それが普段の葉月のキャラとギャップになっていて楽しいです。逆に手塚(一条和矢)はキャラそのまんま。ミスったあとでもやたらとカッコイイんだもの。

残念なのは、優希(北都南)のNGシーンがなかったこと。一度もミスしなかったのか、それとも公開を拒否したのか…。まぁ、普通はNGシーンなんて恥部を公開したくはないよね。
2009年5月5日