発売日 2010年10月8日
メーカー Overflow 
誠心と秋の空
旧作、及びアニメを見ていないため、超有名作でありながらほぼまっさらな状態でプレイしました。私が事前に知識として持っていたのは、ヒロインがヤンデレであること、バッドエンドが刃傷沙汰であること、伊藤誠がみんなから忌み嫌われていることぐらい。

病んだり死んだりを好まない私にとって、この作品に対する興味は、主人公伊藤誠に集約されていたと言ってもいいです。鳴海孝之の双璧、エロゲ界で最もヘタレな主人公の1人として悪名高い彼を、是非この目で確かめてみたかったので。世間の評価に反して鳴海孝之に好意的な私ですから、もしかすると伊藤誠にもシンパシーを感じるかもしれません。最初から色眼鏡で見るのではなく、できるだけフラットな状態で、伊藤誠という人物を見極めるよう心掛けましたよ。


最初のイメージは内気で奥手な少年。通学中の電車で遠目に見る桂言葉に想いを馳せ、このまま見ているだけでいいといじましいことを言いつつも、クラスメイトの西園寺世界の協力もあってその想いを打ち明けることを決意。どこへデートに誘えばいいか悩んだり、手を繋ぐことも逡巡するような純粋さは実に微笑ましい。こういうプラトニックな恋愛は最高ですね~! 言い寄られないと何もできないパッシブ主人公ではなかったので、早々に私の中の「ヘタレ」というカテゴリーからは外れました。やっぱり、世間と私のヘタレの概念は異なるみたい。

しかし、物語が進むにつれ、徐々にマイナス面が目立ち始めます。私の選択肢の選び方が悪かったせいもありますけど、誠君は本当に言動がコロコロ変わる。普通、優柔不断ってのは選択の中間あたりでまごまごしているものですが、彼はFar rightとFar leftで極端に揺れ動くから怖い。考え方が突然180度ガラッと変わってしまうので、こっちはその振り幅の大きさに戸惑いながら常に右往左往ですよ…。

それでも、最後までヘタレという感覚はなかったかなぁ。ヘタレというのは、曖昧な態度で自分の気持ちを表に出せない弱腰野郎のことを指すと思うのですが、少なくとも誠君はその場その場できちんと態度を明確にしている。明確にしておきながら、ホイホイ別の女に走る移り気の早さに唖然としますけど、これは「外道」であって「ヘタレ」とは別物ですよね。伊藤誠が人間的にカスであることに異論はございませんが、ヘタレと呼ぶならその他大勢のエロゲ主人公の方がよっぽどだと思います。

それに、お相手の言葉と世界も大概でしたんで、どうも誠君ばかりを叩く気には…。私は当初、“ハッキリしない主人公と業を煮やして暴走するヒロイン”という構図を思い浮かべていましたけど、言葉と世界も最初からチョット頭がおかしい。思い込みと躁鬱がやたらと激しく、彼女たちもALL OR NOTHINGの極端な思考の持ち主なんで、どっちもお互い様って感じですよ。

SCHOOL DAYSは、この人間の醜い部分を敢えて隠さずに描写しているところが最大の特徴なのかもしれませんね。表と裏、明と暗、善と悪といった二面性を赤裸々に映し出しているからこそ、それぞれ登場人物にリアルな人間臭さが醸し出されています。「こいつら最低だ」と呆れ果てるのと同時に、どこか共鳴してしまう自分がいまして…。だから、誠も、言葉も、世界も、ついでに乙女も、私は嫌いになれません。


ストーリーに関しては、かなりのインパクトがありました。厳密には、エンディングが。愛憎相半ばする三角関係の果てにある悲劇は、想像していた以上に悽惨で鬱。常に考え得る最悪の事態へ物語が進行していくので、本当にこのゲームの神様は意地が悪いです。これ、絶対最初からバッドエンドありきの帰納法によって構築されたシナリオですよね。シナリオの過程が、総て悲劇への辻褄合わせのようにしか思えないですもん。

ハッピーなエンディングも当然用意されてはいますけど、こちらは逆にとってつけたような内容。他のエロゲで類を見ないセンセーショナルなバッドエンドは確かに高く評価されるべきなんですが、結局、人が不幸になったり殺されたりする場面を見てほくそ笑む悪趣味なゲームなのかと思うと、虚しさを感じなくもない…。新たに追加された唯一のエンディングがバッドエンド(しかも、一番残酷)であるのもなんだかなぁって感じ。


最後は少しばかり辛口になってしまいましたけど、さすが話題作だけあって、充分私も楽しませていただきました。とりあえず、伊藤誠はそんなに毛嫌いする主人公でなかったことが一番の収穫。悪いところばかりがクローズアップされがちな彼ですけど、彼女を守る男気があったり、妹には優しいお兄ちゃんだったり、何気に料理が得意だったり、魅力的なところもたくさんありましたからね。人間的にちょっぴりクズでカスでゴミなのはご愛敬。そもそも、陵辱作品の主人公に倫理を問うても仕方ないように、こんな泥沼三角関係の主人公に実直さを求めても仕方がない。それじゃ、三角関係にならないっす!

アニメーションに関してはややガッカリ。構図が単調で静止画が多い上に、代わり映えしないシーンばかり。これで新カットが追加されているなら、元のはどれだけ動かないアニメだったのかと。

とはいえ、アニメーション作品としては異例なほどボリュームがありましたので、これを全部を綺麗にアニメーションさせると膨大な手間と費用がかかりそう。この辺が採算の取れるギリギリなのかな。

君が望む永遠の遙と水月、WHITE ALBUM2のかずさと雪菜、双方のヒロインが甲乙付けがたい魅力を持っていることで盤石の三角関係が成り立っていましたが、言葉と世界の場合は「どっちもどっち」という意味で甲乙が付けられません

まぁでも、強烈な印象を残してくれたのは断然言葉の方面と向かって嫌いと言われても全然へこたれないタフな精神は賞賛に値しますよ。ヤンデレって、攻撃的なイメージが先行していましたけど、実は防御力も高かったのね。攻守共に穴がないヤンデレは実に厄介な相手。「倒した!」と思っても道連れで自爆してくるし…。
2010年10月16日