るいは智を呼ぶ
メーカー〔暁WORKS〕 発売日2008年6月26日


メタボレトリックシンドローム
うざっっっっ!! な、なんですか、この贅肉まみれのテキストは…。常用しない難解な単語の乱用と、エスプリ効かせたつもりの迂遠なくどい言い回しが、とにかく鼻につく。

いや、本来なら私はこういうの嫌いじゃない(好きってこと)んですよ? でもね、るい智のテキストは、レトリックを用いながら美しくなく、ペダンティックでありながら学がなく、似非文学的な“無理している感”が見え隠れしていて嫌なんだー! 個人個人が洒落た発言を意識しすぎて会話が噛み合っていなかったり、逼迫した状況でも言葉遊びに興じているから緊張感が伝わってこなかったり、言葉が手段でなく目的となっていることの弊害は数多い。物語どうこうの前に、テキストが1人勝手に空回りしちゃって見るに堪えないのよねぇ。

一番厄介なのは、シナリオライター本人はこれがイケてると思っていそうなところ。こんな肥満体のテキスト、どう考えても格好悪いでしょ…。失礼極まりない表現で大変恐縮なんですが、私のるい智の第一印象は「ナルシストのデブ」でしたよ。こんな風に思っている時点で、私とるい智の相性は決定的に最悪なものだったんですが…。


しかし、途中からテキストの灰汁が薄れるとの情報を聞きつけたので、諦めず頑張ってみる。すると、確かにオープニングムービーを越え個別ルートに入った辺りからは、冗漫なテキストが鳴りを潜め始めました。弛んだ贅肉が嘘みたいに搾れて、まるで別人のようなスリムな体型に!(本当にシナリオライターが別人になった?) これならテキストに余計な気を奪われることもない。雑念を払拭し、ようやく私は物語に入り込むことが出来たのです。

そこで初めて気付いたのは、るい智は当初想定していた内容とは大きく異なっていたということ。女装主人公というインパクトの大きさから、私はてっきり女装が話題の中心となったエオニズムエロゲであるものだとばかり。ところが、これは女装そのものではなく、女装しなくてはならない理由、「呪い」にピントを合わせた作品だったんですね~。

呪いとは、○○してはならない、○○できないといった制約のことで、その禁忌を破ってしまえば死が訪れるという恐ろしい縛り。ヒロインたちも同様の境遇にあり、それぞれが平穏と程遠い窮屈な生活を強いられています。そんな忌まわしい呪いから解放されることが、話の目的の1つでもあります。

この設定はすごく面白いと思う。呪いを抱えた同士が寄り添いあい同盟を結ぶという流れは、かの「家族計画」に通ずるところがありますし、単なる寄せ集めの“群れ”だったのが、徐々に信頼を深めて、“仲間”となっていく過程はとても感動的。タイトル通り、まさに類が友になっていく感じですよ。1人の仲間が窮していれば、みんなが一致団結して大きな困難に立ち向かっていく友情も実に美しいものでした。この辺は「ひぐらしのなく頃に」を彷彿させてくれます。

更に、呪いを避けるがゆえの不可解な行動から、彼女らが一体どのような呪いを抱えているのか推測する楽しみは、さながらサーヴァントの真名を予想する「Fate/stay night」のようでもある。家族計画、ひぐらし、Fateと、私の大好きな傑作の性質を3つも兼ね備えているんですから、これは面白いと感じるのも当然。相性悪いと決めつけていたけど、実は結構相性良かったのかも~!?

登場するヒロインたちが、不幸な呪いを抱えているからといって、暗くなったり、厭世家気取ったりすることなく、みんな前向きでポジティブなところもすごく印象いいね。下手に悲観的にならないおかげで、日常での賑やかなバカ騒ぎも楽しめます。中には、呪いと同時に受け継いだ特別な「才能」を誇りに思い、呪いをハンディと感じない人までいましたから。逆境を言い訳にしないで強く生きられる人に私は弱いというか、尊敬の眼差しなんですよ。


ただ、プロットはこれだけ素晴らしいものがあるのに、肝心のストーリーは今一歩だったっていうのが…。いえ、正確にはストーリー自体そんなに悪くなかったんですが、考え方の相違というか、私にはいろいろ釈然としない部分が多く、喉元に引っ掛かるような違和感が幾つかありまして。

とりあえず、各人の呪いの正体は、もっと秘匿すべきものだったんじゃないかと。あまりにあっさり判明しすぎます。せめて個別ルートに入るまでは伏せていて欲しかったな。例えば、花城花鶏(はなぐすくあとり)のルートでは、彼女が仲間の助けを借りようとせず、意固地に孤高を貫こうとします。こっちは「何故なんだ!?」と思いたいのに、それが呪いのせいであるのは事前にわかっていたことなんで、ちっともハラハラしませんでした。

同じくその花鶏のシナリオで、大切な本を紛失してしまった場面のやり取りも気になる。花鶏は盗んだ犯人として仲間に嫌疑を向けるのですが、るいはそのことに激高して、友達を疑うなと食ってかかるんです。それでも花鶏が引かないと、るいは突然キレて本気で殴りかかってくる。ええ~? 友達疑うのはダメだけど、友達にいきなり暴力振るうのはOKなの? 意味不明の基準だなぁ。信頼を他人に強要するるいには共感できません。

続いて、恋愛要素。智は魅力的な主人公でしたけど、男とバレていない内からヒロインに惚れられてしまうのは戸惑うところでした。普通こういうのって、気の合う同性の友達だと思っていたのが実は男であることを知り、異性を意識し始めて恋愛感情が芽生える……ってもんでしょ? 少なくとも私はそういう展開を期待していた!

これが女である状態でLOVEな感情を抱かれると、話が大きく違ってきます。男として好きになってもらったわけじゃないので嬉しさは微妙ですし、性別が異なるという衝撃の事実が発覚してからも、向こうに然したる心情的変化がないのは甚だ疑問。「あれ、男だったの? まぁ、それでもいいや」的な軽さでは、どうしても不信感が募りますよー。

あと、智の呪いは「男であることを隠さなければならない」なので、女装がバレてしまったら危殆に瀕してしまうわけです。親密になったヒロインは、当然智が男であることに気付いてしまう瞬間があるんですが、その時、ちっとも罪悪感に苛まれる素振りがないのが不思議。不可抗力とはいえ、自らが智を死に追いやるきっかけを作ってしまったのですから、もっと罪悪感に苦しんで然りなのでは…?


こんな感じで、腑に落ちないキャラクターの行動原理が少なくありませんでした。非常識な人間の集まりなんで、イチイチ気にしたら負けなのかもしれませんけど、るい智の世界(シナリオライター)の常識が、私の中の常識とかなりズレていたのは事実です。

ちなみに、最も納得いかなかったのは、なんで最後が茜子ルート固定なのかってことですけどねっ!! 普通なら、メインヒロイン格のるいが適任でしょ? それがなんで茜子? なんで“よりにもよって”茜子なの!?

正直に白状しますと、茜子は私の中で完全に捨てキャラだったんですよ。毒舌+クール+ロリ+不思議ちゃんという設定で、常にふざけてつまんないことばっかり口にしている彼女は、早々に私の眼中から消えていた存在でした。いろんな個性のキャラクターに肯定的でありたいと常に思っていますが、「まともにコミュニケーション出来ない人」っていうのだけはどうしても受け付けられなくて…。

「茜子さんの乙女パウワーがあれば、一発必中で役立つこと間違いアリマセン。べいべー」
「チビチビコートは一人で出ていかせましたが」
「ご安心ください。茜子さんは危機が訪れると800ミリ秒でアカネ・ザ・キャットに変身しますので」
「ネコ耳フェチの脳腐れですね」
「そういうわけですから」


この一連の会話の流れ、何を言っているのかわかります? 私には何がそういうわけなのか意味がわかりませんし、笑いどころも全然わかりません。面白くないという以前に、こんな会話文を延々読まされている自分がすごく哀れな気になってきましてね…。「なにやってるんだろ」と一瞬素に戻ってしまうのです。そんなとき、茜子は「ちゅぱかぶらー」とまた神経を逆撫でする訳わかんない奇声を発してくる。ああ、頼むから二度と私の前に姿を現さないで…。


シナリオ自体はこれまでの気になる伏線を上手く回収し、広げた風呂敷を無難に包み込む綺麗なまとまり方をしていたので、最終シナリオとして優秀なものでした。が、返す返すも茜子がメインなのが惜しい。序盤はナルシストデブなテキストに悩まされ、終盤は捨てキャラ茜子に苦しめられ、やっぱり私には頗る相性の悪い作品だったみたい。良い部分がたくさんあったのは認めますが、それを私が素直に受け取るには障害が多すぎました

冒頭の母親に捧げる手紙の中で“難解な語彙を蝟集すると適度に知的に見えるという、日本語体型のありがたみを噛み締めます”との言い回しがあったので、あの冗漫なテキストは自覚的だったのかもしれません。わざわざそんな真似をする意図は不明ですが…。おどけていたつもりかな?

仲間の中で一番好きなのは花鶏だったんですが、声優さんの演技に若干難があり、特に感情を荒げるところで棒読み気味なのが気になりました。CVは天乃そらさん。一体誰だ? ……と思ったら、君あるの久遠寺夢か! キャラが正反対だったので全然気付きませんでしたよ。でも、納得

男だけど女らしい、女だけど男らしい和久津智。ルックスの時点で、他のヒロインより数段上回っているからな~。見た目は女なのに、男らしくカッコイイところがあったり、中身は男なのに、ふとした反応がやたら女の娘っぽかったり、男として見ても女として見ても魅力的です。

それだけに、智の立ち絵がなかったのは大きなマイナス。主人公だからって立ち絵がいらないことにはなりませんよ。

実はこの作品、オフ会での話題の種としてプレイしてみた側面があるんですが、ここまでけちょんけちょんに貶すぐらいなら、逆にやらない方が良かったかも…。面白さが理解できなくてごめんね! 先に謝っておきます。
2008年9月13日