RONDO LEAFLET
メーカー〔Littlewitch〕 発売日2007年1月26日


異母兄妹とはマクガフィン?
落ちこぼれ執事マシューが派遣された先は、名門として誉れ高いアシュレイ子爵家。その名家も度重なる不幸で借金が嵩み、今や没落寸前。当主はまだ若い我が侭お嬢様で、従事するメイドたちは賃金未払いが続いてやる気ゼロ。そんな二進も三進もいかない惨状の中、次から次へと舞い込んでくるトラブルにマシューは立ち向かう。バラバラだった皆と協力し乗り越えていくことで、仲間意識と労働意欲が徐々に芽生え始め、やがてマシューを中心として、アシュレイ家再興のために一致団結していく。

イメージとしては、世界名作劇場と王様のレストランを足して2で割ったような感じでしょうか。2007年執事年の幕開けとなる華々しい執事ゲーの第1弾として、当初の私の期待値は相当に高かったです。これがヒットすれば、執事ブーム到来に大きな手応えを残しますからね!


ゲームを起動すると、まずタイトル画面の桁違いの美しさに驚かされます。木の葉が舞い散る中、美しい旋律に乗ってゆっくりフェードインしてくる荘厳なタイトルロゴ。その格調高い華美なグラフィックに、期待感はより一層高みへと引き上げられる。Littlewitchさんのインターフェイスの美麗さは、他の追随を許さないものがありますよ~。

しかし、ここで1つとても残念なニュースが…。FFDがお亡くなりになりました

Littlewitchさんの高い技術力によって完成された至高のFFDシステムが、このRONDO LEAFLETでは跡形もなく消え失せています。……厳密には今作にもFFDは採用されているらしいのですが、従来のコミック的な体裁は一切見られず、吹き出しのメッセージ表示が芸のない下部ウィンドウ(字幕)方式に変わり果て、動的でスタイリッシュな演出は完全に失われました。即ち、立ち絵とテキストのみで進行していく、どこにでも転がっている凡庸なAVGに成り下がってしまっているんです…。

これには失望感アリアリ。Quartett!→ロマネスクの劣化具合にもショックは隠せなかったですが、今回は遂に何の変哲もないフツーのAVGですよ? 何故、1作ごとにどんどん持ち味が消えていくのでしょうか? それだけFFDを駆使した作品には膨大な労力を使うの? せっかく強力な武器を独自に編み出しておきながら、それを自ら封印してしまうLittlewitchさんの真意が計り知れません。使わないなら、誰かに譲ってあげて!


FFDを捨て、他作品と同じ土俵で勝負をすると言うことは、必然的に評価はシナリオの優劣に絞られてくる言うこと。しかし、そのシナリオが、賞賛に値するレベルには届いていなかったわけで。

別に今までより劣っていたと言いたいわけではなく、いつものLittlewitchさんらしい、雰囲気と暖かみ溢れるストーリーを見せてくれてはいるんですよ。ただ、北側寒囲さんのシナリオは、美味であっても薄味。その繊細な味付けはFFDによる“魅せる”作品に抜群の相性を発揮しますが、今回のように“読ませる”作品では圧倒的に食い足りなさが残ってしまう。単純で素朴な味付けのシナリオは、単体で味わうには不向きなのです。

RONDO LEAFLETは、恋愛劇として非常に未熟な作品だったと言わざるを得ません。何をして未熟と言わせるかといえば、マシューとヒロインがお互い惹かれ合っていく過程が全然描かれていないから。この作品は共通ルートが長すぎるんです。RONDO LEAFLETは、全15話の構成で共通ルートは11話まで。なんと3分の2以上を共通ルートが占めています。それまで恋愛の素振りすら見せなかったのに、後半残り4話で唐突にマシューは特定のヒロインに恋心を抱き始めるのですから、そりゃあ無理も出てくるってもんでしょう。

メインであるロビィのシナリオなんて、厳しい身分格差のある19世紀ロンドンにおいて、貴族のロビィと、庶民のマシューが社会的に許されない恋に落ちるという難しいテーマを、その僅かな4話の中に強引にまとめようとしているんですから…。

主従の関係で、身分も異なる2人が、互いに愛し合うようになるというのは、まぁベタながら感動を呼ぶものでした。爵位を逃すことになろうと、マシューとの愛を貫き通そうとするロビィの決然とした態度には、私も胸を打つものがありましたよ。一方のマシューは、ことの重大さに対する認識力が低く、立場を弁えない軽率な行動が目立ちましたが、それもロビィを想う故の暴走だと解釈すれば、共感できないこともありません(ホントに結果オーライですけど)。

しかし、彼等の間には身分格差の他に、異母兄妹であるというもう1つの大きな壁が残されています。そう、マシューは兄で、ロビィは妹なんです。身分の問題は、2人が真に愛し合うことで乗り越えられても、血縁だけは「愛しているから」では決して乗り越えられない問題ですよね? なのに、物語では「身分」に対する問題ばかりを取り沙汰していて、それ以上に重大なはずの「血縁」に関しては、なぁなぁで済ませてしまっているから納得いかなくて。「血縁」の問題は、最後までスッキリした解決が導かれていないのです。

確かに、この問題をもっと深刻に捉えてしまうと、話が一気に重たくなってしまいますから、作風を考えて、突っ込んだ描写を避けたのは正解だったのかも知れません。でもそれなら、「異母兄妹」なんて設定は最初から要らなかったんじゃないかと。「兄妹」が発覚したからといって、2人の関係に然したる変化が起きたわけでもなければ、「兄妹」が大きな足枷になったわけでもなく、「兄妹」の設定が必要性を持つシーンはどこにも見当たらない。彼等の犯す禁忌は、「身分」に限った方が綺麗に話がまとまっていて良かったと思いますよ。結局、個別ルートが4話しかないというミスが、こういった歪みをもたらしているんですねぇ。


最初のバラバラだった皆が1つにまとまっていくまでの過程は良かったですし、個々のヒロインの叙情豊かで微笑ましいエピソードの数々には見所を感じましたが、個別ルートに入ってからの恋愛絡みの話はどれもイマイチ。執事ゲーとして期待はかなり高かった作品ですけど、完全に期待ハズレだったと結論を述べるに他ありません。

それでも、これがFFDによるものだったら、手放しで褒めていたでしょうが…。北側寒囲さんのシナリオはFFDによって活かされるものだと思いますし、FFDは北側寒囲さんのシナリオによって活かされるもの。やっぱり、LittlewitchさんがFFDを捨てるのはバカげているとしか言いようがないですね! ファンはLittlewitchさんにしか作れないものを待っているはずです! 次回作では必ずや、FFDの復活を!!

相当厳しく叩いてしまいましたが、基本やっぱり温かくていいお話なので、感動する場面もあります。ここでネタ晴らしするわけにはいきませんが、それなりにホロリとくるシーンがありますよ。それなりに。

今回、初めてフルボイス仕様になりました。FFDを失った代償(?)としては、あまりにチャチな見返りですけど。音声なんか別にいらないから、FFDに戻してください! ええ、何度でもしつこく言ってやりますとも!

誰がお気に入りかと言えば、やはりロビィことロビネッタ・アシュレイになりますが…。彼女は生粋のお嬢様で、執事である主人公に対しては厳しく当たるものの、一方で、時折隠しきれない愛情を垣間見せたりもします。

つまり、平たく言えばツンデレなんですけど、愛情の照れ隠しで放つ言葉にしてはキツすぎる嫌いがあり、逆に本当にプライドの高いお嬢様にしては、容易に媚び過ぎている部分がある。愛情優先のツンデレ、プライド優先のツンデレ、私はどちらも大好きですけど、ロビィはどちらのタイプとしても不完全。なので、そこまで好きにはなれないヒロインでしたね。
2007年2月11日