少女魔法学★リトルウィッチロマネスク
 
メーカー〔Littlewitch〕 発売日2005年7月29日

同じ大金でも小銭じゃリッチな気分になれない
白詰草話とQuartett!で採用されていたフローティング・フレーム・ディレクター(FFD)というシステム。漫画のコマ割を動的に見せるスタイリッシュな手法は、慣れ親しんだこれまでのAVGの概念を覆す、鮮烈なインパクトを与えてくれる革新的なシステムでした。

ところが、少女魔法学リトルウィッチロマネスク(以下ロマネスク)ではそのFFDが用いられず。プロローグ部分では普通に使われていたため、体験版をやって判断した私はすっかり騙されて(勘違いして)しまいましたが、基本的にこのロマネスクは“非FFD作品”なんですね~。

Littlewitch作品の良さはFFDだけではないにせよ、私の心を捉えて離さないあの素晴らしい技術で、もう一度Quartett!のような傑作をやりたかったと期待していただけに、この選択は残念…。せっかく他にはないLittlewitchならではのパテントだというのに、どうしてこんなにも簡単に放棄してしまったのだろうかと。

ただ、FFD未使用とはいえ、ロマネスクも他の作品と比べれば充分特殊。一味も二味も違っている斬新な作品であることに変わりはなく、Quartett!が「魅せる」作品であったのに対して、このロマネスクは「遊べる」ことに重点が置かれている。FFDを失っても単純な退化とは言えないのです。


2人の少女を一人前の魔法使いに育て上げるべく、日々行われる魔法の修練。絵柄の描かれたダイスを投じてスピリットを獲得し、そのスピリットを消費して魔法を1つ1つ習得していくことになります。特定の魔法を揃えたら、今度はQuestに挑戦──といったサイクルがゲームの基本的な流れ。

作業的な単調さは若干感じつつも、そこはLittlewitchさんお得意の演出でカバーしているのはさすが。魔法発動の際に起こる美しいエフェクトを見ているだけでも、非常に気分が良い。洗練されたグラフィカルな画面構成は相変わらず綺麗で使いやすいし、Littlewitchさんのセンスの良さにはホント脱帽。ゲームとしての完成度はQuartett!を更に上回っているなぁ。現在、これだけ高い完成度の作品をリリース出来るメーカーって他にないんじゃないかな? 私の知る限り完全にLittlewitchさんが図抜けています。このままコンシューマーにベタ移植したとしても、全然恥ずかしくないレベルですよ(コンシューマー移植に賛同しているわけじゃないけど)。

Quartett!では唯一のアキレス腱であったボリューム不足もロマネスクでは解消。いや、解消どころの話じゃない、それが長所と呼べるまでに成長している。毎週必ずといっていいほど差し込まれるイベントに、魔法を憶える際の寸劇。更にQuestと多岐に渡るエンディングの数を合わせると、なんとシーン総数は447! FFDを犠牲にした代償とはいえ、この圧倒的なボリュームはすごすぎる…。

量のみならず、シナリオの質も高い。アリアとカヤを始めとした多彩且つ魅力的な面々の織り成すストーリーは、ほのぼのとした抒情豊かなお話。まるで児童向け文学を読んでいるような心温まるストーリーです。ロマネスクは見た目から中身からとにかく清潔さがありますね。性根の汚れている私には、その潔癖なまでの美しさが時に居心地の悪さに感じたりもしますが、エロゲでこれだけ清浄な空気を醸し出せていることは、素直に褒めるべき事柄。あらゆる点で傑出したロマネスクに、もはや死角が見当たりません!


さてと、以上が建前の部分。ここからは少し本音で語りましょうか~。

単刀直入に言っちゃうと、私はロマネスクが然程面白いとは感じませんでした。確かに良く出来た作品なのは間違いないです。「建前」といっても上記で書いたことに嘘偽りはありませんし、作りの丁寧さ、ゲーム性の高さ、システムの利便さ、シナリオの上質さ、イベントの豊富さ、センスの良さ、ロマネスクのすごさはちゃ~んと私も認めています。

しかし、難しいのは「良く出来ていた」ことが必ずしも「面白かった」ことには繋がらないところで。「面白くなかった」というとこれまた語弊がありますが、「面白かった?」と尋ねられても私は「それほどでも」としか返せません。

ストーリーは「いい話」ではあったけど、当たり障りのない話ばかりでちっとも印象に残らない。イベントの量も「豊富」ではあったけど、内容的には同じことの繰り返しであり、途中で興を失ってしまう。そもそもボリュームがあるとはいっても、所詮はショートストーリーの寄せ集め。小粒なものがいくら束になって集まっても、やり終えた後の感慨が薄いのよね。表題にもあるように、小銭だらけじゃあまり嬉しさが沸いてこなくて~。

エロゲらしからぬクォリティの高さは充分評価していつつ、面白さという根本的な満足感には繋がらない──ってこの感覚、そういえば、以前にうたわれるもの(Leaf)をやったときと一緒の感覚だなぁ。あれも出来の良さと満足感が一致しなかった。「どれだけすごかろうと、それがエロゲとは違うベクトルのすごさであってはノーカウント」という認識があるので、このような奇妙な乖離がしばしば生まれてきてしまうのですよ。


とはいえ、なんだかんだで私は飽きずに、このゲームを相当な時間やりこんでいますし、満足とまでは行かなくとも、それなりの評価はしなくちゃいけないと思っています。凡そエロゲとは思えない超一流の完成度で、致命的な欠点も存在しない作品なんて、普通に考えればまったく批判に当たらない大傑作ですもんね…。私は理性でそれを理解していながら、感情がこの作品を拒否している。それは一体何故なのか、実のところ自分でもよくわかっていません。

まぁ、やっぱりFFDへの未練のせいなのかな。「Quartett!みたいな作品がやりたかったなぁ」という未練が常に私の中で燻っていたため、最初からロマネスクに対して否定的なスタンスで取り組んでいたことは否めないです。Quartett!とロマネスクは別物であるとちゃんと分別がつけられる大人じゃなければ、私同様、どこかしっくりこない燻りを抱えたままになるかも…。

キャラクターの会話は吹き出し表記されるなど、FFD「らしさ」は微かに残っていました。画面一杯のCGを見ながらストーリーを進められる喜びは、やはり格別なもの。

イベント総数447という恐ろしいボリュームなので、当然1週プレイするだけじゃコンプリートなんて不可能。エンディングの数だけでも相当数ありますから、それだけ回数を重ねてプレイする必要があります。

2週目以降は憶えた魔法を引き継いで始められる(レッスンで)という配慮があったものの、このゲームは性質的に複数回やろうという気にはなれない代物なので、2週目以降はほとんど惰性でプレイしていましたねぇ。

魔法習得の際に振るダイスの出目は完全な運任せと思いきや、ダイスを直接キック(クリック)することで出目を変えられたり。魔法の発動の有無で獲得スピリットが大きく変わってきますから、常にこの作業が必要となるのですが、これをイチイチやっていると長いプレイ時間が更に長く…。

音楽は素晴らしい。Quartett!ほどではなくても、心に残る音楽です。Out Selfという曲が一番好き

アリアとカヤの2人はとてもいい子でしたよ~。どちらが好きということはなく、活発なアリアと控え目なカヤ、2人1組のセットで好きといった感じ。ただし、異性としての好きではなく、子供としての好きですけどね。幼稚園児のスモックみたいな服装を着ていることもあって、私は完全に2人を小さな子供として見ていました。こんないたいけな教え子に手を出す気にはなれません(出したけど)。
05年8月17日