発売日 2012年6月28日
メーカー 5pb. 
海翔八汐のたぎらない話
大ヒットしたあのSteins;Gateに続く科学アドベンチャーシリーズ第3弾。私の人生で五指に入る超名作の続編となれば、そりゃあ期待しないわけにはいかないでしょ! Steins;Gateレベルの傑作が次から次へと量産されるはずはないと思いつつ、発売前の熱いプロモーションムービーを見せられると、もう滾る気持ちが抑えきれない…!

そう、抑えきれなかったんですけどねぇ。

出鼻を挫かれたのは、まず主人公の強烈なウザさ。終始上から目線の舐めた態度と、かったるそうな無気力口調が私の神経を実に鮮やかに逆撫でしてくれました。この手のやれやれ系主人公は気持ち悪くて仕方ない。オカリンは自覚的厨二病でしたけど、こちらは無自覚厨二病なので単にムカつく奴でしかないんですよ。

声優が木村良平さんと細谷佳正さんで坂道のアポロンコンビだったことも注目ポイントの1つでしたが、人を小バカにしたような主人公の喋り口にCVの木村さんまで嫌いになってきたり…。木村さんとしてはムカつく主人公をその通り演じているので、むしろ名演なんですけど!

当然ながら積極的にアクションを起こすタイプの主人公ではなく、些細な頼まれ事を受けても「嫌だね」の一点張りで協調性ゼロ。それでも食い下がって向こうがお願いしてきたら、今度は「自分に格闘ゲームで勝ったら」という嫌味な条件を付けてくる。格闘ゲームなんてやり込んでいる人が圧倒的に有利なゲームですし、世界ランク5位に付けている主人公に素人が勝てるはずもない。容赦なく返り討ちにした上で、「残念でした」。うわぁ…、性格悪っ!

これまでロボ部の活動に否定的だった部員たちが次第にやる気を見せ始め、JAXAを絡めた巨大ロボット製造プロジェクトに一丸となって取り組もうとする熱い展開にも、当の主人公だけは「俺はゲームしてるんで」と我関せずですから。なんなのこいつ? もう本気でどっか行って欲しい。

動力源はどうする? 材質はどうする? 外観はどうする? 各々がアイディアを持ち寄り、みんなの手で夢の巨大ロボットを造りあげる過程こそがRobotics;Notesの醍醐味だと思っていたのに、そこに主人公が参画してこないなんて予想外も予想外ですよ。“気付いたらロボットは出来上がっていた”には唖然。もっと試行錯誤を繰り返し、いろんな壁にぶつかりながら、苦心惨憺ようやく完成に漕ぎ着けるものだと思うでしょフツー? いや、そういう苦労は実際あったんでしょうけど、主人公の与り知らぬところで起きているので一切その大変さが描かれていないんです。ダメすぎる…。

おかげで、シナリオが盛り上がらないこと盛り上がらないこと。Steins;Gateは、Dメール発動によって別の世界線を移動するという最初の“掴み”からして完璧だったのに、こっちは1章を過ぎても2章を過ぎても3章を過ぎても4章を過ぎてもちーーっとも盛り上がりを見せない。「お、ようやく面白くなってきたかな!」と兆しが見えてきた頃には既に最終のトゥルールートに入っていました。

まぁ、さすがに終盤はテンションの上がる展開ですよ。廃部寸前だった三流ロボ部がいつしか世界の命運を担い、闇に蠢く陰謀へ立ち向かっていくプロットは最高。冒頭で紹介したプロモーションムービーにもありますが、仲間たちの、全校生徒の、種子島島民の、ネット住人の、世界中の人々の期待を一身に背負ってガンヴァレルを発進させる瞬間は、やっぱり興奮で身体が震えましたから。ここぞという場面で一気にグッと盛り上げる力は、Steins;Gateにも劣りしません。

ただ、そんなグッと盛り上がる熱い展開が最後のほんの僅かしかないのが大問題…。ぶっちゃけ、Robotics;Notesの見どころなんてプロモーションムービーの中に全部詰まっていますよ。わざわざ高いお金出してゲーム買わなくても、このムービーだけ見ていればそれで充分という悲しさ。

せっかく現実の航空宇宙開発機関であるJAXAを登場させるなら、もっとJAXA施設や業務に突っ込んだ描写を増やしたりして、Steins;Gateのように知的好奇心を満たしてくれるシナリオであって欲しかったなぁ。主人公の魅力不足とシナリオの練り込み不足。共にSteins;Gateでは最高だった部分が欠陥となっているのは皮肉です。


名作中の名作であるSteins;Gateとあれこれ比較するのは酷ですし、それを超えられないからといって批難してしまうのも可哀想。だから、ある程度期待ハズレでも寛容でいたいと私は思っていましたが、想像以上にレベルが落ちていたので失望を隠せない状態です。こうなると「Steins;Gateだけが突然変異だったのでは…」との疑念が頭をもたげてしまうように。

とりあえず、今回のような無気力主人公だけは二度と金輪際登場させないでくださいな。こういう手合いはラノベに隔離して一歩たりとも外界へ出さないでもらいたい。大体、ロボットがテーマの物語なのに、主人公がロボットに興味示さないって時点でシンパシーを感じられるわけがないんです。こっちがストーリーにハマリ込めばハマリ込むほど主人公と気持ちが乖離していくんですから。

サッカー漫画なら、主人公はサッカー少年! スク水エロゲなら、主人公はスク水フェチ! 主人公が対象物に興味を持たなきゃ始まらない。そこは徹底させましょうよ。

Robotics;Notesは、巨大ロボットと同時にAR(拡張現実)がテーマになっています。ARは私が現在最も未来を感じる技術ですので、むしろ私の興味はこちら側。ARが人々に身近になって、様々な分野に取り入れられている未来を是非体感してみたかった。

ゲーム中では、ポケコンのカメラを通して拡張現実を映し出すことができます。ただ、それがゲームに良い影響を及ぼしていたかというとそうでもなく、これといった必要性を感じなかったというのが本音。AR機能ならではの謎解き要素なんかを期待していたんですけどね。現実では見えないのに、ディスプレイ越しだと見えるというギミックは、もっと多彩なアイディアがあって然りだと思います。

メインヒロインの瀬乃宮あき穂は目標に向かって突っ走るがあまり自己中心的になりすぎる嫌いがありましたが、これぐらいの放縦さがなければ壮大な夢を叶えるのは不可能だと思いますので、私は好意的。姉の意志を継ぎ、実物大ガンヴァレルを造るため、誰に認められなくてもずっと1人でロボ部を支え頑張ってきた。誰よりも情熱的に夢を追い続ける姿は美しく、そんな彼女の努力と苦労が報われた瞬間は感動でした。あき穂が主人公なら、私は素直に楽しめたでしょうね。

特異な個性を発揮していた神代フラウも好きなヒロイン。2ちゃんねるスラングを多用するオタク女子設定は前回の牧瀬紅莉栖でやっちゃっているのでややインパクト減でしたが、早口でどもり口調なのはいい味出している。生真面目なキャラクターが多い中、唯一笑いを生み出していた貴重なキャラでもありますね。デュフフ笑いがキュート

主人公のみならず全体的にキャラクターの魅力は乏しく、印象的だったのはこの2人と昴だけ。残りはサブを含めて全員記憶から消えました。「Steins;Gateのような奥深いシナリオをもう一度!」は無理な注文でも、「Steins;Gateのような魅力的なキャラクターをもう一度!」ぐらいは聞き入れて欲しかったなぁ。

Robotics;Notesは、総てにおいてSteins;Gateを下回るというのが私の結論。
2012年7月3日