発売日 2010年8月12日
メーカー ゆにっとちーず 



安心JASマークのオーガニックエロゲ
レビューを依頼されたFifteen Houndsをあれだけボロカスに貶してしまった冷血人間の私に、金輪際「レビューしてくれ」と頼んでくる愚かな人はいないと思っていましたが、世の中わからないものですね…。

しかし、いくら遠慮なく批判してくれていいと言われても、人が一生懸命作ったものを貶すのは心が痛みますし、私の好感度にも関わってくる問題(ねーよ)。本来、辞退を願い出たいところだったのですが、完全にテリトリー外だったFifteen Houndsと違い、今回のおれまにあは私のポリシーにピタリと符合するものでしたので、謹んでレビューを執筆させていただくことにしました。もしプレイして自分に合わなかった場合は、レビューを書かないことをご容赦くださいと逃げ道を作りつつ…。


物語は、冒頭からいきなりラブラブ同棲生活でスタート。ラブプラスのように付き合うまでの過程もなければ、初々しい馴れ初めの期間もなく、お互いすっかり気心の知れた関係。真に恋人同士のイチャラブゲーを愛する者なら、通常エロゲでなかなか描かれないこの時期こそ、本当の“旨味”だと捉える人が多いのではないでしょうか。恋人が隣にいることが特別ではなくなった日常において、仲睦まじくイチャイチャラブラブするところに意義があるってもんですよ!

白川幸一と内海弥織の2人は、時折バカップルらしさを見せるものの、ごく一般的な普通の彼氏彼女。悪くいえば捻りがないってことですが、良くいえばリアリティがある。彼女と連れ立ってショッピングしたり、たまには手の込んだお夕飯を作ったり、部屋でじゃれ合いながらそのままエッチしたり。「イベント」というよりは「出来事」に近く、そこに話のオチなんて呼べるものはありませんが、この決して特別ではないさりげない日常の些事には、恋人同士における「あるある」的な共感があり、2人の生活感をリアルに感じ取れるんですね。この場合のリアルとは、生々しさではなく自然さ。ナチュラルという表現の方がニュアンスは近いかな。

これが一般の商業エロゲであれば、ヒロインの魅力をもっとアピールしようと画策しますし、日々のイベントももっと愉快なものに脚色するでしょう。おれまにあには、そんなユーザーを気持ちよくさせようとする「下心」がない。普段、エロゲに慣れ親しんだ人間であればあるほど、この外連味のなさに新鮮さを憶えるはずです。

もし、チョットでもユーザーへの「媚び」というものがあるのなら、ヒロインが非処女だなんて絶っっ対ありえないですもんね! 単独ヒロインによる恋人同棲ラブラブ作品でありながら、彼女の初めての男は主人公じゃないという衝撃的設定! 今や、Atelier KAGUYAですらビビってヒロインを全員処女にする時代なのに、この神をも恐れぬ大胆不敵!!

だからこそ、私は大いに評価したい。そもそも経験人数が1人だけじゃ、本当の異性の善し悪しなんてわからないもの。1人しか男を愛したことがなけりゃ、その人が自分にとって一番なのは当たり前の話であって、その狭い視野の中での「好き」という言葉に、一体どれだけの信憑性があるのか疑わしい話ですよ。

「私、初めての人はコウじゃなかったけど…え、エッチするたびにすごく好きになるのも、あんなに気持ちよくなるのも、コウが初めてなんだよ」 

日本しか知らない人間が日本を一番だと感じるのと、世界を知った人間が日本を一番だと感じるのは意味合いが違うように、ある程度恋愛経験を踏まえた上での「好き」という言葉にこそ説得力が付帯するのだと私は思います(あくまで私見です)。

別に処女が悪くて非処女が良いとかじゃないんですよ? 処女とか非処女とか、そんな超くだらないこと本当はどーでもいいんで。しかし、非処女であるというだけで、中古だのビッチだの口汚くバッシングされる現状を見ていたら、嫌でも非処女側を擁護したくなる心情に駆られます。嗜好として処女が好きなのは全然構いませんが、総てのヒロインが処女じゃないとダメなんて、どう考えてもファシズム。そんな思想の押しつけが、昨今のエロゲの幅を大きく制限してしまっていることに憂いを感じてしまうのです。


思いっきり話が逸れました。元々おれまにあは自分の趣味に沿った作品でありましたけど、作中で共感を憶える箇所がホントたくさんあったんですよね~。

…なんというか、相手の女子がコスプレ衣装を「偶然」持ってて、ラッキーそれでやろうぜーっていうエロゲーをプレイしてると、なんかこう、ムズムズするんである。

まさしくその通り! コスプレエッチは、相手にお膳立てしてもらって行うものではございません! 自らの手を汚さぬ者にコスプレエッチをする資格などない! 積極的な彼女に負けじと、主人公もちゃんと能動的だったのは好感持てたなぁ。

Highslide JS
一般的な商業エロゲを色艶の良い人工的な野菜だとすれば、このおれまにあは有機農法によって作られた野菜といったところ。荒削りで見た目も歪ながら、私たちが忘れかけていたエロゲ本来の自然な美味しさが詰まっています。とはいえ、私が普段スーパーで買う野菜は農薬をふんだんに使った小綺麗な野菜なので、無農薬こそが絶対だと賛美するつもりはありませんが。第一、いくら無農薬野菜といっても、値段が市価を大幅に上回る高価なものになるとチョット…。

具体的に申せば、これが2300円というのはいくらなんでも高すぎるだろうということ。同人作品として2000円を超える価格帯は相当強気な部類。面白そうだと興味を持った人がいたとしても、無名なサークルの処女作にこの値段をぽんと支払う人は、やはり少数派ではないでしょうか。プレイ時間が1時間に満たない超短編であることを考えると、費用対効果が良いとはとても言えません。うみねこですら2000円を切っている現状を考えれば、もっとリーズナブルな価格を考える余地はあったと思いますよー。

他にも悪いところは勿論あります。悪いところというか、全体的なクォリティという点でまだまだですね。CGのクォリティもバラバラ。というか、原画のうみのさんが製作過程において明らかに絵が上達されているので、古い絵と新しい絵の落差があまりに激しい。恐らく初期の頃に描かれたであろうCGは、やはり身体の構図がぎこちなく、眉毛がめっちゃ気になります。でも、土壇場で全部描き直しされたという立ち絵は、塗りも柔らかくて、とても可愛く描けていたりするんですよ。そんな絵師としての成長日記の側面もあったり。

ビジュアルノベル形式である必然性も謎でした。物語重視で読ませるタイプの作品でもないのに、わざわざ画面を活字で覆ってしまうビジュアルノベル形式を選択したのは失敗だったと思います。セリフごとにキャラの名前を付記していたり、シナリオの山野さんの筆致は明らかに通常のAVG向けのもの。素直にウィンドウタイプでよろしかったのではないかと…。

待Tシャツ愛用の内海弥織さん。それ以外にも、私服姿が3パターンもあるのがいい。女の娘はオシャレじゃなくっちゃね。彼女の自然な可愛さに触れていると、今のヒロインがどれだけ「萌え属性」という添加物にまみれているかを実感します。それが悪いってわけじゃないですけど。

「…コウは完璧超人じゃない、って、わかった。でも…それを、いやじゃない、って思った」

これは個人的に好きなセリフ。嫌なところを含めて好きになれてこそ、本当の愛でしょ!
2010年8月23日