世界でいちばんNGな恋
メーカー〔HERMIT〕 発売日2007年11月22日


中学生愛してて何が悪い!?
背丈は高いが、気弱で偏食で泣き虫な三十路間際のバツイチ男。没個性が不文律になっているエロゲ主人公の中で、これはかなり異色なプロフィールではないでしょうか? もっとも、彼の一番異色だと言える点は、普通に会社勤めをするところかも知れませんが。まともに会社で働くエロゲの主人公なんて、他に鬼作さんぐらいしか思い出せないよ!

こういう癖のある主人公を敬遠する人も中にはいるんでしょうけど、私は何の変哲もない凡人よりも、個性ある主人公を好むので大歓迎。最近は猫も杓子も学園モノで、学生主人公ばかりでしたから、大人の主人公ってだけでも食指が動きます

作品のイメージが、私の愛する「めぞん一刻」を彷彿させてくれるのも好感触。築30年超の風呂なしおんぼろ木造平屋建てに、個性豊かで一癖も二癖もある住人たち。職を失ったばかりの理は、浪人時代の五代君と被って見えますし、チョット違っていたのは管理人(大家)さんが年上の美しい未亡人ではなく、年端もいかぬ幼気(いたいけ)な少女だったってところ。

世界で一番NGな恋(以下、NG恋)のタイトルは、まさにこの自分より年齢も身長も一回り小さな少女との淫行……もとい、純愛に由来します。母親が男と駆け落ちしたことで、アパートを1人で維持しなくてはならなくなった美都子ちゃんは、毎日朝早くからアルバイトをこなしながら、母親の帰りをずっと待ち続けている。そんな不憫な彼女の支えとなるべく、主人公理(おさむ)は保護者役を買って出て、日々美都子ちゃんの幸せのために奔走。やがて、美都子ちゃんの中で彼に対する恋心が芽生え始めてしまい、次第に2人の関係は危険なものへと…。

ここで少し話が逸れますけど、実は私、途中まで美都子ちゃんのことをてっきり高学園生(苦しい呼称)だと思い込んでいたんですよ。だから、高学園3年と付き合うことが、そこまでモラルを逸脱した行為かな~と不思議に思っていたんですが、なんと美都子ちゃんはまだ中学園の3年生だったんですねぇ。30弱の男が義務教育途中の少女に手を出したら、そりゃNGなのも納得。大人の都合上、ゲーム中で実年齢が表記されないため、この辺は少しわかりにくかったなー。


NG恋は完全に美都子ちゃん中心で構成された物語であり、理は他のヒロインと結ばれた後でも「一番大事なのは美都子ちゃんだ」と公言して憚らないほど彼女を寵愛していますから、プレイヤーも同様に美都子ちゃんに対する思い入れなければ、共感しにくいストーリーかも知れません。私は普通に美都子ちゃんを愛おしく思っていたんで、何も問題はなかったですけれど。

それに美都子ちゃんが中心とはいっても、麻美、夏夜、姫緒の3人の存在感は全然引けを取っていない。実際、私はNG恋の本当のメインヒロインは香野麻実だと思っていますしね! 見た目的にタイプだとか、女教師の響きが蠱惑的とか、そういうことでは……ありますけど、何より彼女は「主人公の元奥さん」であるのが堪らないんですよ!

かつて円満な夫婦生活を送っていた2人が、とある事情をきっかけにして、突然袂を分かつことになるんですが、それは決して愛情が冷めてしまったからではなく、麻美が夫を愛しているがゆえの別離。だからこそ、別れた今でもお互い未練はたっぷり残っているわけです。

この「別れたけれど、お互いまだ未練が残っている」という微妙な距離感こそが、まさに私にとって絶好の間合い! 一度蹉跌(さてつ)を味わっている男女だからこそ、お互い臆病になり、素直になれず、自分を偽ってしまう。彼(彼女)の新たな幸せを祈る一方、新しい恋人の存在に耐え難い嫉妬を憶えるなど、「昔付き合っていた」という過去は、複雑な思惑を交差させる要因となるから実に面白い。一端距離を置くことで、改めてお互いの良いところが見えてきますし、掛け替えのない大切な存在であったことも思い知る。そして、紆余曲折の末に元鞘に戻ることになれば、前以上に強い結び付きとなるというものです。そんな麻美の「復縁シナリオ」とは何とも言えぬ甘露


麻美だけでなく、この作品に出てくるヒロイン全員に言えることですが、皆さん実生活ではしっかり自立した女性でありながら、恋愛に関してはかなり依存体質なんですよ。一度好きになると、「身も心も捧げるから好きにして!」ってな感じで、かなりどっぷり嵌ってくる。その気持ちに嬉しさを感じる反面、愛の重たい4人もの女性から一手に想いを寄せられるのは相当な気苦労も…。後半は結構な修羅場になっちゃったりしますし~。

ただ、ハーレムゲーかと見紛うばかりの理のモテモテ振りも、それはご都合主義に基づいた不自然な関係ではないということをキッチリ強調しておきたいです。理は冒頭で述べたように気弱で情けない朴念仁ですが、それを補って余りある魅力も兼ね備えているんですね。優しく、誠実で、真面目で、底なしのお人好し。仕事はとても有能で、身を粉にしながら日夜通して誰よりも働いている。そんな彼の姿を目の当たりにして、彼女たちが恋心を抱くのは何ら不自然に感じません。

もう1つ、彼のモテモテ振りに納得がいった理由は、“理以外にも男がいる”という点。一般的な萌えゲーだと、周りの男が誰もヒロインに言い寄らず、最初からヒロインの恋人となりうる対象が主人公1人だけに限られてしまっているじゃないですか? そんな状態でヒロインに言い寄られたとしても、「他に相手がいないから自分がモテている」だけで喜びも希薄。

その点、このNG恋では、美都子はクラスメイトの男子に告白され、麻美は同僚の教師から求婚されています。その上で、彼女たちは理を選択することになりますので、理に対する愛情の深さを窺い知ることが出来ますし、同時に彼女らが他の男が放っておかない魅力的な女性である証明にもなっている。

美都子のことが好きな剛志君だって、単なる当て馬キャラじゃないんですよ。お調子者ですが、美都子への想いはとても真剣。勿論、だからといって彼に美都子ちゃんを奪われることは本意ではありませんけど、それでも彼が報われるよう応援したい気持ちにさせられる。サブキャラの、それも恋敵相手に好感が持ててしまうのは、それだけ丸戸さんのキャラクター描写が優れているということでしょう。魅力ある男性キャラを配置することで、作品全体に好循環を及ぼしています。

今更、丸戸さんのシナリオライターとしての実力をどうこう論じる必要性はないでしょうが、こんにゃくやパルフェとは別の引き出しを使って、ここまでのシナリオが書けてしまうことに、私は改めて畏敬の念を抱くことになりました。多感な美都子ちゃんと幾度となく衝突し、すれ違いを重ねながら、共に困難を乗り越え未来へと突き進んで行く。涙腺に訴えかける泣き要素は少なくとも、NG恋にはハートウォーミングな心地好い感動と笑いが作中に満ち溢れています


今後は、こういった作品が単なる異色作で終わらないことを願いたいですね。いつまでも「純愛=学園モノ」では思考停止もいいところ。大学生、社会人でも皆恋愛はしているんですから、もっと様々な視点でのラブストーリーを楽ませてもらいたいです。私が今までプレイした丸戸作品の中では、これが一番好き。こんにゃくよりも、パルフェよりも。

丸戸作品には、里伽子や奈緒子のように「昔いろいろあった」ヒロインが良く出てきてくれますけど、丸戸さんもその手のこだわりがあるんでしょうか? 願わくば、次回作でも是非、因縁付きな元カノが出て欲しいもんですね~。いっそのこと「登場ヒロインが全員元カノ」なんてエロゲ誰か作りませんか!? ものすごく息苦しいエロゲになりそうだけど!

エロに関してはそれなり。オマケで強引に3Pやっちゃうなど、決してエロが疎かになっている作品じゃありません。エッチシーンの時だけ空気読んで(?)主人公のボイスがなくなることにチョット笑いました。

元奥さんである香野麻実。子供相手にジェラシー剥き出しでムキになって張り合う姿が萌え萌えです。

「ダンナ愛してて何が悪い!?」 「理はねぇ、わたしが18の時から目をつけてて、4年もかけてやっとのことで口説き落とした、一生モノの男だったのよ!」 常に自分も気持ちを偽って、平静を装っていた麻美が、一気に感情を爆発させ本音を喚き散らしたシーンはものすごく印象的でした。ていうか、ここでの声優さんのドスの利いた剣幕に圧倒されましたよ…。CVはエッチシーンの演技に定評のあるお馴染みの一色ヒカルさんですが、こんな鬼気迫る演技も出来てしまうんですね。今後、一色ヒカルさんを見る目(聞く耳)が変わりそう。

久々に一切批判なしのレビューが書けました! でもホント、欠点らしい欠点は見当たらなかったです。
2007年11月26日