発売日 2004年5月28日
メーカー Abel SOFTWARE 
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音声なしエロ極薄版ミステリート
完全新作としてはまる4年振り(仄かに視える絶望のmementはなかったことに)。長かった…本当に長かった…。週刊ファミ通でこのゲームの存在を目にしたのはいつの日だったでしょうか。以来、ずっとこのミステリートに思いを馳せてきましたが、まさかこんなにも長くお預けを食らわされるとは夢にも思っておりませんでした。

「待たされた分、たっぷり利子つけて返してもらうぞ!」といわんばかりの厳しい姿勢でプレイし始めたミステリート。が、ものの数分プレイした時点で、そんな意気込みも何処へやら。あっという間に物語の中へと引き込まれ、目一杯ミステリートの世界に胸を躍らせている自分がいました。

菅野テイスト溢れる軽妙なセリフ回し、個性的なキャラクター、散りばめられた伏線、菅野作品をプレイしている時の、あの懐かしい気持ちがありありと蘇る。シナリオの奥深さはさすがのもので、予測もつかない驚きの連続に何度も舌を巻く。隠された謎を暴き、事件の犯人を推理する「謎解き」の面白さもそれに拍車をかけ、すっかりやめ時を見失うまでに熱中させられてしまいました。本格探偵推理モノとして、練りに練られた難事件の数々はやりごたえ充分。やっぱり菅野作品は菅野作品だなぁ~。

「読みごたえ」のあるAVGなら他にもたくさんありますが、「やりごたえ」のあるAVGとなると、そうはありませんよ。紙にメモを取りながらゲームしたのなんて、何年振りでしょうか。「考えて解く」楽しみを、このミステリートは久しぶりに思い起こしてくれました。

ミステリートは、ハッキリいって難解です。文字を目で追っていればいつの間にかクリアしている生温いゲームにすっかり慣れてしまっていた私には、そう容易くクリアできる代物じゃなかった。最後の謎なんて、暗号解読に2時間、解読後の意味を解するのに3時間、合計5時間も要したぐらいですから(これは時間かかりすぎですけど)。

でも、この高い難易度が「鬱陶しい」とは感じず、「面白い」と感じられるのは、それだけやりがいのある作品だった証拠。それだけモチベーションを持たせてくれた証拠なのです。これからミステリートをプレイしようと考えていらっしゃる方も、あくまで謎は「自力で解く」ことをオススメ致しますよ。途中わからなくて詰まってしまおうが、安易に誰かに頼ったりせず、意地でも自分1人の力で解決してください。それで初めて、ミステリートの真の面白さが味わえるというもの。

こうやっていつも作品にゲーム性を持たせてあるのが、菅野さんの作品の素晴らしいところですね。テキストに自信があればあるほど、ノベルの直球勝負をしたくなるのが常なのに、菅野さんは敢えて、ゲーム性を大事にしている。マルチサイトシステムを始め、いつも斬新なアイディアをゲームに取り込んでくれることには頭が下がります。

ついでにもう1つ、私が菅野作品をこよなく愛する理由には、主人公の格好良さというものがあります。昨今のエロゲ主人公たちは、知性も個性も自主性も無い人ばかりなので辟易していますが、菅野さんの生み出す主人公は、いつだって素敵。今回の八十神かおるだって、その例外ではありませんでした。

史上最年少でクラスAのアイドラーライセンスを取得した凄腕ディテクティブ八十神かおるは、抜きん出た明晰な頭脳と、シニカルな語り口、英国紳士を自称する気品溢れる振る舞いが特徴的な18歳。タイプ的には、YU-NOのたくや君や、EXODUSGuiltyのカスミ君に近いといえるのですが、彼の場合は「完璧さ」の一面とは別に、プライドの高さ、コンプレックスの強さ、異性に対する不慣れさも併せ持っており、時折、子供染みた弱点が顔を覗かせるのです。でも、こういう年相応の未熟さも上手に描けていたからこそ、逆に好感が持てるといえるんですね。

私は前作の悪行双麻が大・大・大好きだったんですけど、かおる君はかおる君で、悪行双麻とは別の魅力を持っていました。何より、かおる君には女装という大きな武器がありますし。事件のごとに見られる、かおる君の華麗な変装姿(女装)は、ミステリートの大きな楽しみの一つなんですよ!

女装したかおる子ちゃんは、ゲーム中最も美しい女性ですからね~。沢田さんや、東西(あずまにし)が、“男とわかっていながら色香にやられる”のも無理はない。まさに傾城の美女。特に、秘書風キャリアウーマンの扮装は反則でした…。こういう物語とは別の遊び心が含まれているのも、如何にも菅野さんらしさって感じでしたね。


目眩く極上のミステリーに誘(いざな)ってくれるこのミステリートは、是非貴方も体験しておくべきです。生温い萌えゲーばかりをやっている人も、たまにはこういう歯ごたえのあるAVGをプレイして、たるんだ身体を引き締めなおしましょう。

でもその前に、前回の探偵紳士とEXODUS Guilty(現代編)はちゃんと予習しておいた方がいいですよ。これらの作品の世界と、ミステリートの世界は重なりあっているので、2作品を知っていれば、ミステリートがより面白くなることは請け合い。探偵紳士の方はミステリートと同日に「Reverse!」というリメイク版が出ているので、そちらを買い求めれば宜しいでしょう。といっても、私は白髪の悪行双麻、金髪のミントなんて絶対に認められませんが。

私がこれまでやってきたエロゲの中で、最もエロくない作品がこのミステリート。元々コンシューマー(ドリームキャスト)で発売予定だったのを、ムリヤリPC版(18禁)で売っているせいで、エロに関しては惨憺たる有様です。

肝心のCARNELIANさんは、エッチCGを一切描いていないというのが致命的。あるのは誰かが勝手に改竄したCGのみで、それも何とか乳首が見えているといった程度の絵。これを堂々と18禁として売るなんて許せない。エロゲに対する侮辱です。

南条深雪は、前回の探偵紳士の頃から好きでした。探偵紳士では声だけの出演でしたけど、彼女の悪行双麻への一途な想いがいじらしく、私はことあるごとに彼女に電話していたものです。

ミステリートでの彼女は、そのホステスっぽい風貌も相俟って、今まで抱いていたイメージとは若干違っていました。といっても、別に嫌いになってしまったわけではなく、良きおねーさんって感じでまた別の魅力が垣間見えます。まだ22歳だというのに、やけに行き遅れのオバサン扱いされていたのは可哀想でしたが。
2004年6月5日