みにきす
メーカー〔きゃんでぃそふと〕 発売日2006年12月15日


きゃんでぃそふとにもダルビッシュがいれば…
「姉、ちゃんとしようよ!」、「つよきす」と次々ヒット作を飛ばしてきたきゃんでぃそふとの遺作(注・ジョークです)。

まぁ、きゃんでぃそふとにとって、タカヒロさんの存在はあまりに大きすぎたので、満更ジョークだとも言えない状況ですけれど…。タカヒロさんと白猫参謀さんの抜けたきゃんでぃそふとなんて、いわば新庄と小笠原の二枚看板が抜けた日本ハム状態。ファン離れ必至の情勢で、「来年からどうするの?」と、人ごとながら心配になってきます。

そんなこんなのゴタゴタがあったせいか、この「みにきす」も、待望のつよきすファンディスクだというのに、非常に微妙な仕上がり。メインコンテンツがPS2版つよきすの素奈緒ルート再録というのは、何とも情けない話ですわね~。既にPS2版を体験している人には、何の益体もないファンディスクじゃないですか。その割に値段は高いし…。やれやれ。

幸いにも、私はPS2版に手を出していなかったので、その価値を見いだすことは出来たのですが、元々素奈緒に対してそれほど大きな期待を持っていたわけじゃない。つよきすは他の作品よりキャラクター同士の横の繋がりが強く、生徒会執行部を中心とした1つのコミュニティが既に出来上がっているので、そこに素奈緒という後付のキャラを紛れ込ませても、果たして上手く作品に溶け込めるのだろうか? という漠然とした不安があったからです。

結論から言えば、それはまったく私の杞憂で、素奈緒はあたかも最初から存在していたかのように馴染んでいました。主人公・対馬レオがテンションに突き動かされなくなった理由となる過去の話を踏まえ、しっかり物語の中枢に絡んでくる重要なヒロインとなっており、決して蛇足を感じさせる存在ではなかったんですね。思えば、姉しよの時も、柊家という完成されたコミュニティの中に、途中参加の犬神姉妹が何の違和感もなく馴染んでいたもんなぁ。この辺のケミストリーは、タカヒロさんの上手さでしょうか。


素奈緒は他のつよきすメンバーと比べ、若干毛色の違うヒロイン。といっても、彼女が異質な人物だったわけではなく、むしろ逆。他の人たちがあまりに突飛で非常識な面々なので、普通の感性を持っている彼女が珍しく感じてしまうということ。ツンデレとしては最もスタンダードなタイプで、ある意味、正統派ヒロインと言えるでしょう。ただ、その分、パンチ力が弱いというか、他の強烈な個性の中に埋没している気がして、最初はチョット物足りなさを感じてしまいました…。充分魅力的なヒロインではあるけど、乙女さん、カニ、姫、なごみん、よっぴー、祈先生といったスペシャルな人たちと比べると、2,3段階魅力が落ちるかな~と。

しかし、1つのイベントを経て、そんな私の見る向きは軽く一変。

体育武道祭を間近にしたある日、素奈緒は心ない事件に見舞われ、その犯行が仲間であるはずの演劇部員たちの仕業であることを知ります。難詰された部員たちは開き直ると、あべこべに素奈緒を非難。生来の真面目さが祟って、反感を買っていた彼女は、これを機に部員全員から一斉に不平不満をぶつけられることになり、今まで良かれと思ってやってきたこと総てを否定されてしまう。ショックを隠しきれない素奈緒。でも、怒鳴るでもなく、喚くでもなく、冷静にみんなの意見を耳を傾け、自らの不明の責任を取って部長の座を辞するという。卑劣な行為に及んだ部員には厳しく譴責するも、最後は明るい口調で「3連休登校、お疲れ様でした!」と言い残し、静かにその場を後にする…。

でも、私はこの時点で、なんとな~く展開が読めていたんですよ。みんなの前で気丈に振る舞った素奈緒だけど、どうせ裏では1人で泣き伏しているんだろうな~。そこに駆けつけた主人公が慰めてやることで、2人の恋が始まる寸法なんだろうな~ってね。

ところが、素奈緒にはこんなことで意気消沈してめげてしまう弱さはなく、逆に自らを奮い立たせ、最後まで気丈に自分の仕事を全うしようとしていた。彼女の表面的な強さではなく、本当の芯の強さを見た気がして、この瞬間、私の中で一気にグッと込み上げてくる物が…。そして、完全に私は近衛素奈緒に惚れ込んでしまいました

普通一般の純愛エロゲなら、主人公が不意にカッコイイ一面を見せて、そこにヒロインがキュンと来て惚れてしまうもの(見せなくても勝手に惚れてくる場合が多いけどね!)ですが、この素奈緒の場合、彼女のカッコイイ一面を見せられて、逆にこっち(私)がキュンと来てしまったんですね~。エロゲやってて、ヒロインに「可愛い」とか、「萌える」とか感じるのは日常茶飯事ですけど、「惚れる」という経験はなかなかないですよ~。

対馬レオは対馬レオで、ひたすら事の成り行きに任せているような情けない主人公ではなく、最後はテンションに身を任せてビシッと思いの丈をぶちまけるところがカッコイイ。ホント、こういうのが萌えゲーの規範となって欲しいな。やっぱりタカヒロさんは尊敬に値する偉大な方だなと、再再再認識させられました。


素奈緒は心根は強いけど、至って普通な女の娘ですし、用意されていたイベントも、観覧車で2人きりだとか、居残り作業を手伝うとか、フォークダンスを一緒に踊るとか、全部ベタベタで有り触れたものばかりだったと言ってもいい。されど、この全身を包む暖かな充足感。日頃、食べ慣れて、食べ飽きたもののはずなのに、この新鮮な味わいは一体何なんでしょうか。同じ炒飯でも、家庭で作る炒飯と、中華屋さんの炒飯は別物ってことですねぇ。真のプロが作ると、質素な料理がたちまち御馳走になっちゃう。

なぞきす・強打(つようち)といったミニゲームが収録されています。なぞきすはクイズゲーム。○×ゲーム、4択クイズ、画像クイズと種類が豊富で、ミリオネアのようなフィフティフィフティ・テレフォン・オーディエンスが備わっている遊び心もあり、なかなかやりがいのあるものでした。強打(つようち)の方はタイピングゲーム。キャラクター対戦形式で、こちらも工夫を凝らした作りになっています。

どちらも「ハマる!」って代物ではありませんが、丁寧には作っていましたね。ちなみにエロのご褒美はありません…。

改めてつよきすをプレイして思いましたが、本当にみんな揃いも揃って超魅力的なキャラクターですよ。乙女さんも大好きだし、カニも大好きだし、よっぴーも…。オール5を付けられる作品って、そうそうないです。そのつよきすメンバーともこれっきりだと思うと、言いようのない寂しさが襲ってくる…。

PS2版には存在しなかったエッチシーンが追加されています。ただ、手掛けているのはタカヒロさんじゃありませんが。

それだけで拒否反応起こす人が出てきそうですけど、実際のところ、違和感みたいなものはなかったです。エッチシーンに入って、突然、キャラクターの性格が変わるとか、そういうことはないんで。言われなければ、まず誰も気付かなかったことでしょう。

私はゲームで近衛素奈緒を知る前に、アニメで近衛素奈緒を知りました。今にして思うと、この2人は完全に別人ですよね…。アニメ版素奈緒も普通に可愛いと思いましたけど、やっぱり「本物」は違うなと。私のようにアニメ→ゲームの順だと普通に両方好きになれそうですが、ゲーム→アニメの順だと、アニメの素奈緒は好きになれないかも知れない。

みにきすをプレイして、タカヒロさんの新作、「君が主で執事が俺で」がますます楽しみになってきました。

一方、きゃんでぃそふとさんの方はこれからどうなるのかなぁ…。致命的な大ダメージですよね。でも、きゃんでぃそふとにはコガアツシさんという有能な人材が今も残っていますから、タカヒロさんを失っても、まだまだ盛り立てていけるんじゃないかなと、人ごとながら応援しています。
2006年12月17日