Maple Colors  
メーカー〔CROSS NET〕 発売日2003年7月25日


世紀の大失速
これだけ遊べる・ハマれる・楽しめる作品は久しぶりですよね。テキストAVGオンリーといってもいい業界の現状では、斯様(かよう)なフィールド徘徊型AVGはとにかく新鮮。かつての同級生や下級生を彷彿させるようなこのゲーム感覚は、既に懐かしいというより、物珍しいと表現した方が良いのかもしれません。

フィールド徘徊型AVG、大所帯の登場キャラ、総数1000枚以上と豪語するCG。MapleColorsは、構想○年という文辞が似合いそうな、まさに年に数度しかお目にかかれない壮大な作品です。これはもう、最初のオープニングイベントを見せられただけでも、その意気込みがビシビシ伝わってきたというもの。

学園を取り仕切る演劇部顧問に歯向かったために、落ちこぼれクラス2Bは壊滅の危機。この窮地を脱するには学園祭において演劇で対決するしかない。だが、相手はこれまで数々の賞に輝いている名門演劇部。既に2Bの仲間たちの間では、勝負の前から諦観ムードが漂っていた。主人公は原因を招いた責任を感じながら、2Bの仲間たちを説得し、演劇を成功させる事を決意する。

この対決の構図への待って行き方が、惚れ惚れするほどに上手かった。この時点でヒロイン、脇役、引いては主人公のキャラが確立されているし、しっかりとしたストーリーラインも完成。所々に挟まったセンスある笑いが潤滑油となり、卓越した演出の効果が、物語へとより一層引き込ませる。CGを多用した動的な見せ方は、文字を目で追うだけのイベントの印象とは段違いでした。

本格的な仲間集めが始まるまでの“オープニング~鬼小島説得”の流れは、本当に本当に素晴らしいですよ。鬼小島説得は、名イベント中の名イベントだと絶賛したい。震える、痺れる、感動する。この時点で私は、完全にMaple Colorsの虜。ゲーム導入の掴みとしては最高のものだったと強く断言出来ます。

そして、続く本編「2Bの仲間集め」。限られた時間の中でマップを歩き回り、情報を収集しては仲間たちを説得する手がかりを得る。行動パターンを把握したり、アイテムを使ったり、ミニゲームをクリアしたりと、様々な手段を用いて仲間を増やしていく楽しさも、また格別。絶妙な難易度のバランスに丁寧な作りといった基本的な部分がしっかりしていたことも、キチンと評価したいですね。ストレスなくプレイに没頭し、いつしか時間を忘れるほどにハマり込んでいる自分。「これは今年一番の傑作かも…」と窺わせるには充分過ぎるほどの魅力が溢れていて、事実、途中まで私は、そう信じて疑っていませんでした。


ところが、仲間も全員揃い始めた辺りになってくると、確信が揺らいできてしまう。まず、最初に直面した問題はイベントの喪失。序盤は時間に追われるように豊富だったイベントも、ノルマをこなし終えてしまうと、さすがにやることがなくなってきて、逆にこちらからイベントを探すため、当てもなくウロウロ歩き回わったり、ただボーっと立ち尽くして無為に時間を進めなくてはならないように。

更に決定的な失速の要因となったのは、前半あれだけ褒めていたストーリーが、急速に尻すぼみしたことですね…。通り一遍純愛ドラマの果てに、意外性なき単純な幕引き。決戦の学園祭に至るまでの過程があれだけ壮大でありながら、その集大成が哀愁漂うまでにショボかった……。

サブキャラの見せ場がないに等しかったのもガッカリ。せっかくの個性的な2Bの面々が、ほとんど数合わせの役割しか持たされていないんですもの。一度仲間にした後、もうそこで出番終了になったキャラが一体何人いましたか? 演劇は完全に主人公とヒロインの2人舞台じゃないですか。「バラバラだった仲間たちが一丸となって」がこの手の物語で一番重要なポイントを担うはずであるのに、その「仲間」が除け者にされていたのは、作品の否定にも繋がってしまいますよ。

オープニングイベントがあれほど秀逸ながら、何故ラストシーンがこの程度だったのかと、鬱積するやり場のない怒りと共に、激しい疑問を禁じえない。未来ともみじ以外の投げやりなエンディングに関しては、もはや呆れてものがいえません。結果が漫然と突きつけられるだけのお寒いエンディングには唖然。


私はよくレビューで「勿体無い」という評価をしますけど、これこそが最高に「勿体無い」作品なのかも。せっかく地道に、慎重に、コツコツと築き上げてきてきたものが、後1歩、後1歩というところで雑になったのは、あまりに勿体無い。

やっぱり、物語は締めは肝心。ラストの印象が、プレイ後大きく心に残るものです。詰めの甘さを見せてしまったことで、せっかくの傑作が後味悪くなったのは悔やんでも悔やみきれない。最初を散々褒めていながら、最後で批判してしまったこのレビューも、印象が悪かったでしょう? ね?

私がこのゲームを購入する直接の動機となったのが、総CG数1000枚以上という謳い文句でした。が、この数字に関しては額面どおりを鵜呑みにしない方が宜しい。嘘や水増しだったという意味ではありませんけど、普通のイベント一枚絵は、差分を含めてもおよそ300枚強しかない実情。多分、いろいろ含めて1000枚以上なんでしょうね。

2週目以降のプレイは劇的につまらなくなるのは宿命か。解き方のわかっているパズルを最初からやり直すような作業には、残念ながら既に楽しめる余地はない。これなら潔く一本道シナリオにすれば良かったのに、なまじっか攻略キャラを複数用意しているものだから…。どうしても複数回プレイをさせたかったならば、面倒でも2週目以降に新たなイベントを設ける等、マンネリ防止策は必須だったはず。

合間合間のアクセントとしては欠かせない個々のミニゲーム。どれも単純なものではありながら、「明日に向かって打て!」のミニゲームには熱中。分裂消滅時間差魔球を見切ってホームランするのは快感…。

2Bのクラスメイトは全部で32人(主人公含む)。ぞんざいな扱われ方をする人も多かったですが、1人1人の個性はみな際立っていて好印象。中でもメインヒロイン未来、図書委員の高野聖演劇部の百地桃の3人の女性キャラは、特に贔屓したい3人。

クールでぶっきらぼうながら素直になれない恥ずかしがり屋と、そそられる側面を数多く持っていた高野聖は、脇役女子の中で最もLOVE。百地桃は、最初のキツくて冷たい性格だったのが説得後180度転換してしまうのに萌え。メインヒロイン未来に至っては、魅力がありすぎてとても書ききれません

女性陣のみならず、男性キャラたちもみんないい味出してしまして、鬼小島、小石、蛇目あたりは私としてもかなりお気に入り。蛇目は当然パンクロッカースタイルの方。蛇目の声優さんはものすごくいい仕事してましたねぇ。

ただ、ある意味で最も強烈な個性を持っていたといえる阿州樹安登(あすきあと)。2chスラングを多用してくる彼の存在に関しては、ハッキリいって私の捉え方は否定的です。彼が単なる端役扱いだったらこういうのもアリだといえても、ここまで密接にストーリーへ関与してくるキャラなら宥和出来ません。物語にとって重要な、シリアスな場面に2ch用語を連呼する彼を起用していたことで、私は完全に白けてしまった。まぁ、感じ方は人それぞれでしょうがね。

数々の女性キャラの中でも飛び抜けて可愛かったのは葵未来。どんなに人数が多くとも、メインヒロインが一番可愛いっていうのは大切なことですよね! バットで殴りこみを掛けるような荒々しさが後半消えてしまったのは、ちょっぴり残念でしたが。
03年8月4日