真剣で私に恋しなさい!
メーカー〔みなとそふと〕 発売日2009年8月28日


直江といえば上杉、上杉といえば謙信、謙信といえばガクト
姉→ツンデレ→執事(主)と来て、武士娘。タカヒロ作品で、初めて“ハマらない”ジャンルがやってきました。剣を振り回す野蛮な女の娘って好きじゃないんですよ。

だからこそ、この作品を通して「武士娘っていいな」と思えるようになれば良かったんですが、残念ながら翻意には至らず。武士娘と言っても、ほとんど喧嘩が強い理由付け程度の意味合いしかなく、精神性は武士から程遠いものでしたからね(クリス以外)。結局、単にバトルがやりたかっただけなのかな。

その割に、バトルの出来は…なんていうか…その……超つまんなかった。タカヒロさんはセリフの掛け合いこそ神懸かり的に上手いですが、状況描写のテキストが上手いわけじゃない。戦いの迫力を十全に表現出来ているとは言い難く、臨場感に欠けるんですよ。

百代がバカみたいに強すぎるっていうのもね…。街の不良を薙ぎ倒す程度なら可愛いものでしたが、空中に浮いて戦うわ、遠くの敵を気で感じ取るわ、エネルギー波を放つわ、瞬間的に傷が癒えるわ、完全にドラゴンボールの世界。デタラメすぎて白けました。どんな強大な敵を相手にしても、「百代がいるからどうせ大丈夫」と楽観的になれてしまうので、ストーリーにも悪影響を及ぼしています。

タカヒロさんなら、こんなシリアス路線の異次元バトルではなくて、もっとらんま1/2的な、コメディを利かせたバトルの方が相応しかったのでは…? そもそもバトルなんかやらなくて良かったのでは…? やっぱり、私にとって武士娘はどうも相性が悪い。


とはいえ、ヒロインたちに魅力を感じなかったわけではありません。キャラメイキングは、さすがタカヒロさんの本領と呼べるもので、みんな個性豊かで魅力に溢れています。溺愛クールの京を初めとして、ワン子・まゆっちもかなりお気に入り。師範代になるため、友達を作るため、懸命に努力を重ねる彼女たちの姿はとても輝いていて、私の荒んだ心が洗われました。

反面、主人公直江大和の見劣りが激しい。彼は、常に計算が先に立つ頭脳派で、目的のためには手段を選ばないという、私の理想といえる主人公だったはずなのに、実際はイメージの齟齬が甚だしくてー。

ワン子シナリオ・まゆっちシナリオにしても、大和は何の役にも立っていないんですもん。やったことといえば、セックスを求めたぐらい。仮にも軍師と呼ばれている身分なんですから、何か献策(アドバイス)をして力になってやれないの? 長けているのは人脈作りや根回しぐらいで、頭の回転や閃きは特別優れていなかった印象。まったく軍師の名折れですよ。名折れ大和。

私の感覚として、ヒロインが90点でも、60点のつまらない男(主人公)と付き合ったら、ヒロインも同等の価値に落ちてしまうので、どれだけヒロインに好感を持とうとも、大和がダメならあっという間に台無し。おかげで、クリスルートは普通、まゆっちルートは微妙、ワン子ルートは失望、その他サブヒロインのルートは論外と、惨憺たる有様でしたよ。ワン子ルートなんて、大和とさえ付き合わなければ、絶賛する価値があったのに…!

ただ、少しフォローしておきますと、百代ルートと京ルートは文句なしでした。特に百代に振られたあとの大和の本気モードは見応えあり。百代の相応しい男となるべく自分を必死に磨き上げつつ、押しの一手で積極的に距離を縮ると、デートは下見を行った上で綿密なプランまで立てる気合いの入れよう。今までの怠惰な消極性が嘘みたい。やればできるんじゃん!

大和は最終のリュウゼツランルートでもカッコイイ一面を見せてくれて、ここで自分の中の大和のイメージと、ゲームの中の大和のイメージが初めて一致。ラスボスであるマロードとの対決も痺れたな。お互い相手の思考を読み合いながら駆け引きを打つ。100%の真価を見せてもらったという感じ。せめて他でも80%ぐらいは見せて欲しかったけどね!

結果として、リュウゼツランルートは、私のまじこいに対する印象そのものを大きく上方修正させてくれるものでした。超つまんないと吐き捨てたバトルも、ここでは素直に受け入れられる。今までのような内輪での馴れ合いバトルではなく、絶対に負けられない真剣なバトルだからこそ、観ているこちらも燃えられたのです。

極め付けは、 ガクトが死ぬほど格好良かったこと!! 総勢50名を超える登場人物の中、私が最も心惹かれた存在は紛れもなくガクト。普段は三枚目でコメディリリーフの役所ですが、リュウゼツランでの彼の活躍はマジで泣けます。仲間が来ることを信じて、ボロボロになりながらも必死に耐え続けるガクトは格好良すぎでしょ! もう俺にはガクトしか見えねえ──

いや、でも、九鬼英雄と井上準もすごく良かったんだよなぁ。最初は50人超えのキャラクターなんて、烏合の衆とは言わずとも、必要性を感じないキャラが若干混ざっているものだと思っていましたが、ちゃんとそれぞれに個性と存在意義が備わっている。1人として無駄に感じたキャラがいません。これってすごいことですよ~。


まじこいは、ラブストーリーとして二流。されど、青春ストーリーとして一流。大和の色恋沙汰よりも、風間ファミリーというコミュニティを中心にした話の方が断然面白く、たくさんの感動を与えてもらいました。思わず涙ぐんだシーンが幾つあったことか。ホント、みんないい人だよね。

これだけ泣き、笑い、萌え、ふんだんにエンターテインメントが盛り込まれた大作は、数あるエロゲの中でも有数でしょう。プレイしてみる価値は多分にあると思われます。期待以上ではありませんでしたが、期待に違わぬ結果を出してくれました。

まじこいはボリューム満点の豪華な力作ですが、CG数がそれに追いついていないのが欠点。バトルでは一枚絵をほとんど使わず、立ち絵だけでちまちまちまちまやっていたので大きなマイナス。稚拙な効果音を交えながら立ち絵をぶつけ合わせて遊んでいるのは、まるで小学生の人形遊びのよう。

この際、エッチシーンのCGを削ってでもバトルに回した方が良かったと思いますよ。全体のCGの半分がエッチシーン関連に使われているのは、バランス的におかしい。ていうか、バトルを削れば円満解決なんですけどね。

wagiさんの絵は、みんな頭身高くて綺麗でいいね。私は百代と大和の相合い傘のシーン(CG)がメチャクチャお気に入り。この時の2人、ものすごく可愛いんで~。

エロゲ史上(あまり)類を見ない大所帯のキャラクターに、超豪華な声優陣。そこに惹かれて購入した人もきっと多いと思われます。ちなみに、タカヒロさんも声の出演をされていますよ! 同梱のまじこいマテリアルブックによると、るーすぼーいさんに「俺もやるからお前もやれ」と言われたみたい

それでは、今回、私が好きになったキャラクターをベスト5方式で紹介しましょう(ガクトは別格)。

男性部門
1位 九鬼英雄
 破天荒な性格でありつつも、しっかり将来の自分を見据えている。ワン子への真剣な想いも好感。
2位 師岡卓也
 ツッコミ役として場を和ませる温厚さと、仲間のことに対しては本気で怒れる二面性がカッコイイ。
3位 井上準
 ロリコン設定以外でもキャラが立っている。CV杉田智和さんは、アドリブの冴える素晴らしい演技。
4位 葵冬馬
 真意の見えないミステリアスさが魅力。何より、私はライバルという存在そのものが大好きなんで。
5位 源忠勝
 乱暴な言葉で悪態を吐きつつ、何だかんだで優しさを見せる男版ツンデレ。そりゃ懐かれますよ。

女性部門
1位 椎名京
 大和への溺愛っぷりが最高。でも、もっと嫉妬が欲しかったな。理解よすぎ。この辺美鳩に通ずる。
2位 川神一子
 小動物的な愛くるしさと、努力家という人間としての美しさ。実は男性陣からモテまくりなのも納得。
3位 黛由紀江
 痛い性格も、不器用で自然に笑えないところも、まとめて萌え。友達作りに頑張る姿に心から応援。
4位 クリスティアーネ・フリードリヒ
 真のお嬢様は、傲慢ではなく、空気を読まないものなんだなと。悪気ゼロのKY発言が好きです。
5位 不死川心
 偉そうな性格は前振りとしか思えないヘタレっぷりが可愛い。攻略できなくてガッカリした人多そう。

仲間との友情に大いに感動させてもらったまじこいですけど、大和の薄情な印象は拭えないんですよね…。自分の利益にばかりご執心で、友人のために何かをするという意識に乏しい。ガクトが彼女を欲しがっていても協力せず、落ち込むモロに対して励ましも言葉もかけず、結局、他のエロゲ主人公と一緒で、友達を一段下に見ている感じ

彼がそういうポジションだということもありますが、やっぱりもっと対等な友人関係であって欲しかった。ガクトが侮辱されたとき、本気でブチ切れたモロの方がよっぽど仲間思いです。

もう今回はガクトでいいや。初めて女子ではなく、男子がFAVORITE。弄られ役として普段から楽しい人なんですが、友達のために身体を張ったり、騙されても他人を責めなかったり、人間性が何より素晴らしい

彼の行動理念が、「モテたい」「格好付けたい」というシンプルな衝動によるところなのも共感しやすいですよ。学生時分なんて、誰だって「モテたい」が頭にあるはずですし、女の娘の前でいいところを見せたいからいつも以上に頑張れるというのは、とても素敵なことだと思います。

タカヒロ作品における序列は、きみある<姉しよ<まじこい<つよきすになりますかね。最初は各ヒロインの個別シナリオがイマイチだったので、きみあるにも及ばない作品かと心配しました。

レビューでヒロインに対する記述がほとんどありませんが、別にヒロインの影が薄かったり不満があったわけじゃないですよ。ただ、エロゲでこれだけ男性キャラが魅力的に描かれている作品は初めてだったので、どうしてもそちらに話が及んでしまうのです。
2009年9月20日