こいびとどうしですることぜんぶ
メーカー〔Sirius〕 発売日2007年11月30日


玖羽理玖羽論
浅生大和が求める最高のエロゲとは、1人のヒロインとひたすらラブラブ和姦を繰り広げるバカップルゲーである。
こいびとどうしですることぜんぶは、1人のヒロインとひたすらラブラブ和姦を繰り広げるバカップルゲーである。
ゆえに、浅生大和にとってこいびとどうしですることぜんぶは最高のエロゲである。 Q.E.D.

私の桃色の頭脳をフル回転させて導き出したこの論理的帰結は、一分の隙もない完璧な証明であったはずなのに、結果は敢えなく破綻。絶対の自信を持って始めた「こんぶ」が、何故、満足な出来に至らなかったのか? 今回のレビューでは、そのイレギュラーな問題点を徹底検証して参りたいと思います。


まず、小前提である「こいびとどうしですることぜんぶは、1人のヒロインとひたすらラブラブ和姦を繰り広げるバカップルゲーである」に関しては、何ら問題なかったんですよ。ラブラブ度が足りないとか、陵辱っぽいプレイがあったとか、そのような裏切りはありません。ヒロインも園生玖羽(そのおくう)1人だけで、サブキャラへの浮気など、余計な要素は一切ございませんでした。

この「1人のヒロイン」というのは、非常に重要なポイント。元々、私はエロゲのヒロインは1~2人がベストだと考えていまして、3人以上になるともう手に余るぐらい。ヒロインが少数に限られている方が、より深くキャラクターを掘り下げられることになり、その分思い入れも強くなるもの。だから、単独ヒロイン特化型エロゲは高く評価したいのです。実際、これまでのレビューでも、ヒロインの人数が少ない作品が上位にランクされていますからね。

で、その唯一のヒロインである園生玖羽(そのおくう)はどのような人物だったのかと申しますと、容姿端麗で頭脳明晰で運動神経抜群という、非の打ち所のないパーフェクトな少女でした。身長151cmなのにB98(Jカップ) W54 H84という空想的……もとい、理想的なナイスバディにも圧倒されます。

そんな高嶺の花に思い切って告白してみたら、なんとあっさりOKの返事をもらったというのがゲームの導入。まさか色よい返事がもらえると思わなかった主人公の遠藤陽介は、もう有頂天になって大はしゃぎ。喜びのあまり、そのまま彼女をホテルへと連れ込んで、キスもせずにいきなり抱いてしまったぐらいです。……って、えええええええぇぇ!??

いくらなんでも、告白直後にホテルは性急すぎやしませんか~? 「メチャクチャ大事にするぞ」と意気込んでおきながら、即アポ即ハメとは。玖羽は物静かで感情を表に出さない分、本音も見えにくくて、「付き合ってくれ」「ホテルに行こう」に対するYESは本心からのYESなのか、疑わしい部分があるんですよ。なので、これだと大人しい彼女の人の良さに付け込み、強引にホテルへ拐(かどわ)かしてセックスを強要したという受け取り方も出来てしまうわけで…。そこまでは行かないにしても、単に玖羽は意志の弱さで押し切られただけなのではないかという疑念が拭えないんですよね~。ラブラブ和姦を標榜しながらこの展開は拙い。

でも、その疑念は当の陽介君も同様に持っていたようで、玖羽が本当に自分のことを好きでいるのか、途中で自信を失いかけてしまうんです。なるほど、こういった不安も恋人同士特有の悩み。その気持ちは理解できなくもない。ここは一端怒りを鎮めて、どうやって2人が本当の結び付きを得られるようになっていくのか、興味深く見守ることにしました。

……が、悩んだ末に彼の取った行動は「彼女の日記を無断で覗き見る」。そりゃねーだろーよー。彼女の愛情を確かめるために、勝手に日記を覗き見るなんて最低の手段じゃないですか! そこまでしなきゃ自信の持てない恋人関係って一体何なの~?

まぁ、とはいえ、彼にとっては人生で初めてできた彼女。経験不足で余裕がなかったことを考えれば、あまり厳しく責め立ててしまうのも可哀想な気がします…。やり方はともかく、積極的で行動力のある主人公は好きなタイプですし、喧しくてバカっぽくても、暗くて斜に構えている人よりは何倍もマシ。今回は若さゆえに先走ってしまったと大目に見ることにしますよ。バカップルゲーの主人公なら、多少「おいおい」と思わせられる方が丁度いいってもんですしね。

しかし、陽介君のことは“頑張って”好きになることが出来ても、もう1人の方は、どんなに“頑張って”も好きになることが出来ませんでした。そう、これこそが私がこんぶを楽しめなかった根源的にして致命的な原因。最後までどうしても受け付けることが出来なかったその人物こそ……

恋人の園生玖羽!!

この人だけは本気でダメでした。「1人のヒロインとひたすらラブラブ和姦を繰り広げるバカップルゲー」で、肝心のヒロインが好きになれなきゃ、そりゃ何かもご破算で当たり前ですよ!!

大人しくて感情に乏しいヒロインなのはわかっていましたけど、こんなに人間味のない子とはねぇ。何を考えているのかわかりませんし、何を話しかけても「うん」「そう」「いい」ばかり。恥ずかしがり屋で口下手という事情を差し引いても、ここまで片言口調で辿々しい喋り方なのはわざとらしさを感じます。私はもっと普通にコミュニケーションの取れる恋人が良かった…。

会話の最中、すぐに泣き出してしまうのも萎え萎えですよ。普通の人なら、「可愛い奴だなぁ」と庇護欲を掻き立てられるところかもしれませんが、私はまったくの逆で、メソメソ泣けば泣くほど突き放したくなる。むしろ、弱さを人に見せず、1人で抱え込もうとするタイプの方が庇護欲沸いてきますんで~。

玖羽はとても可愛い女の娘だと思います。でも、一緒にいても楽しくない。実際、2人きりになっても会話が長続きせず、間が持たないから仕方なしにセックスを始める感じ。友人である航路とつかさの2人の存在がどれだけありがたかったことか。普通、恋人同士の語らいの最中に友達が邪魔して割り込んできたら、「空気読め!」と退けたくなるものですが、私は彼らの来訪を心待ちにしていました。玖羽と話しているより、航路とつかさと盛り上がっている方が何倍も楽しいんだもんなぁ。


さすがの玖羽でも、後半に差し掛かればそれなりに口数が増えて、辿々しい喋り方……は変わりませんけど、意思疎通は問題なくなるようになってきます。これで私も多少は楽しめるようになるかなと思った矢先、今度は新たな問題が発生。

恋人同士じゃなくなっている。

全校生徒に向かって「結婚します!」と高らかに宣言したことによって、陽介と玖羽の2人は、学校公認カップルどころか学校公認夫婦となってしまうのです。2人がアパートを借りて同棲し始めた時点で雲行きは怪しかったんですが、これで私は完全について行けなくなりました。「こいびとどうし」が「ふうふどうし」になったら、まるっきり意味が違って来るじゃないですかーーーー!!

新婚生活は新婚生活で確かに素敵なものだと思いますよ。同タイプの憂ちゃんの新妻だいあり~は心底楽しめました。でもね、この作品タイトルは「こいびとどうしですることぜんぶ」でしょう? 私はその通り恋人同士ですることを求めていたのに、どうして「夫婦同士ですること」にすり替わらなくちゃいけないんですか?

高校生(っぽい人)の身分で、アパート借りて同棲して、ノリで結婚しますと宣言して、避妊もせずに子供を産む。妻と子をちゃんと養っていける甲斐性があるのかという指摘はこの際我慢してあげるとしても、明らかに普通の高校生(らしき人)の恋人同士が行うようなことじゃない。もっと身の丈にあった恋人同士であって欲しかったです。電話したり、登下校したり、デートしたり、エッチしたり、そんな些細なことでも、恋人同士の間柄なら充分特別なこと。いくらラブラブだからといって、即同棲、即結婚、即出産なんて浅はかすぎるでしょう。え、愛があるから大丈夫? なら、タイトルは「こいぞらどうしですることぜんぶ」にすればいいじゃん!(ごめんなさい、これはさすがに私も言い過ぎました)

「1人のヒロインとひたすらラブラブ和姦を繰り広げるバカップルゲー」の誕生を誰よりも望んでいた私が、その芽を摘むようなレビューを書いてしまうのはどうかと思うんですが、理想に極めて近似する作品だったからこそ、小さな齟齬が大きな亀裂となり、フォッサマグナの如く巨大な溝を生んでしまう。本当に……残念でなりません。

ですが、私のこんぶ批判は、あくまで「玖羽が好きになれなかった」ことに起因していますので、そうでない人、玖羽に普通に萌えられる体質の人にとっては、やっぱりこんぶは最高のラブラブ和姦バカップルゲーになりうると思います(ここからフォロータイム)。

見ている方が照れてしまうような2人の強烈なラブラブっぷりに中てられて、プレイしながらニヤニヤと相好を崩してしまうこと請け合い。この作品に「月に叢雲(むらくも)花に風」といった野暮な格言は当てはまらず、好事魔もいません。高脂肪高カロリーな超甘甘な展開が、途中ブレーキを一切引くことなく延々と続いていく。最初にどっぷり嵌ることさえ出来れば、最後まで安心して幸せに浸り続けることが可能なのです。

小動物チックな玖羽を優しく愛でて守ってあげたい、そんな風に感じている貴方にはぴったりな作品なはず。玖羽のいじらしく、健気な愛情にゴロゴロと萌え転がるような幸福を感じることでしょう。……私もその仲間入りがしたかった。


今回はまさに「単独ヒロイン特化型エロゲ」の毒に当たった感じ。ヒロインが1人しかいない分、嵌ったときの喜びは甚大ですし、嵌らなかったときのショックも甚大。ハイリスクハイリターンなエロゲであることは間違いなさそうです。

私は思いっきり裏目を引いてしまった訳ですが、これに懲りずに、今後も単独ヒロイン特化型エロゲを強く所望し続けていきたいですね。勿論、「1人のヒロインとひたすらラブラブ和姦を繰り広げるバカップルゲー」が理想であることも変わりません! 次なる「こいびとどうしですることぜんぶ」が、私好みのヒロインであることを切に願います。その日が来るまで、まだまだ終われないな。

エロもかなり上出来。特殊なシチュエーションや、フェティッシュなプレイはなくとも、雰囲気の良さがエロを押し上げている。おまけに、ミヤスリサさんのさすが汁の描写は相変わらず素晴らしい。

でも、やっぱり玖羽が好きになれなきゃ、何の益体もない。

園生玖羽 → そのおくう → すなおくー → 素直クール。なるほど、これが素直クールに属するキャラですか。だったら、私の肌に合わないジャンルのようです。ハキハキ喋って元気のいい娘の方が好きですから、私は断然世良つかさの方が好みでしたね。彼女と恋人同士であったなら、このレビューは130度ぐらい違ったものになっていたでしょう。

すりまり、LOVERS、あねいも、幼なじみな彼女、きみはぐ。私が事前に大きな期待を抱いて、そして返り討ちにあった作品がまた1つ増えました。こんぶの期待はズバ抜けて高かっただけに、ガッカリ度も半端じゃありません。今後は過度の期待はしすぎないよう気をつけなくちゃね…。毎回そう思ってはいるんですが、数ヶ月経つとコロッと忘れる鳥頭。
2007年12月5日