発売日 2002年7月26日
メーカー Leaf 
痕 痕 -きずあと- 通常版
音声を付ければバッシングの嵐だったのだろうか
私、元の痕はちゃんとプレイしております。しかも、発売直後ではなく、去年(2001年)にプレイしたばかりであったりします。今から丁度、一年程前にやった訳ですから、当然話の内容なんかはほとんど頭に入っています。したがって、今わざわざリメイクを手に取るメリットはといえば、小さかったものであると思います。

…そう。このようにメリットが少ないと自分自身重々承知していながら、何だかんだで私はこのリメイク作品を買ってしまってるんですよね~。EVEやら下級生やら探偵紳士やら、何度買いなおしている事か…。今回も毎度のように、「ただ画面が綺麗になっただけのリメイクではないだろう」という淡い期待に駆られての再購入でありました。


さて、痕はあまりに有名な作品ゆえに、今更ゲームの概要をイチイチ説明する必要もないものかと思われますが、一応6年も前の作品。ご存知でない方もそれなりにいらっしゃると思われますので、初めに簡単な説明を行っておきます。

痕はジャンル分けをしてみると、基本的には「伝奇モノ」に分類される作品。それに加えて、自分ではない自分が人を殺めていく様を明晰夢で見続ける謎。連続殺人の犯人は果たして本当に自分なのか、それとも別の誰かなのかを突き止めていく、サスペンス的な味付けがあります。

そんなシナリオも現在の基準から鑑(かんが)みれば、随分とさっぱりしている印象。サスペンスでは必ず付きまとう伏線の要素にしても、それほど多くは使用されておらず、寄り道は少ない極めてシンプルなストーリー。勿論、シンプルであるとは言えど、ノベル形式エロゲの一里塚(実際には雫だけど)、そしてLeafさんの出世作になった程の名作でありますから、中身は非常に濃いです。この痕に到っては、シンプルさも一つの評価となり得るでしょう。

その他にも、結末を一つ迎えるごとに増えていく分岐や、会心のオマケシナリオの評価も高く(盗作は置いといて)、あらゆる点で秀逸なアイディアを見せたエポックメイキングな傑作であります。もし、やったことがないのでしたら、迷うことなく、この機会にプレイされてみる事をオススメ致します。


…以上が旧痕の大まかな内容&感想になりますが、今回の新痕の方のレビューを書く上で悩まされるのは、「何処を評価すればいいのか」です。既に痕そのものの評価は結論付けられたものなのですから、これをまた私が絶賛したり、意表に出て批判なんかをしても仕方がない。ですから、今回の新痕のレビューは「リメイク」という点に絞ってみたいと思います。どれだけ今回のリニューアルで、手が加えられているのか、どんな所が良くなっているのかを評価していこうかと。つまり、以前に痕をやったことがある人が、今一度買いなおす必要性があるのかどうかを念頭にした評価になります。

とはいえ、私も大雑把なストーリー展開は覚えているものの、1年間の空白で細部をしっかり失念させられてしまっていました。それで今回、再確認の意味も込めまして、埃をかぶっていたリニューアル以前の痕をわざわざ引っ張り出し、実際に比較をしてみる事に。

旧痕・新痕、照らし合わせてみますと、その差は歴然。やっぱりメチャクチャ変わっています。原画は変わらず水無月徹さんのままなのに、この6年もの歳月の間に何があったのか、メチャメチャ絵が上達されております。16色からフルカラーに塗りなおされたことも相俟って、描き直されたグラフィックはどれもが美しい。

テキスト面でも大幅に手が加えられていて、この変容はもはや刷新といっていいほど。文章の構成、台詞の言い回し、いずれも全く新規のものに仕上がっていたのです。ストーリーの原形は当然崩されてはいませんが、細部の違いは多く見られました。1年前、私が痕をプレイしたときは「確かに傑作だけど、今の時代(2001年当時)に照らし合わせるとさすがに粗さが見えるなぁ」と思っていましたが、今回のリメイクではそれら粗さの部分が総て改善され、非常に洗練された大人なテキストへと清書されています。

18禁、非18禁に関わらず、ゲームのリメイクというものは、「テキストそのものには決して手を加えない」という暗黙のルールのようなものがありましたが、この痕は敢えてそのテキスト部分に大胆な改変を施しているんですね。あれだけ絶賛されたテキストを、わざわざ手を入れる(書き直す)というのは、なかなかに勇気のある試みですよ。

シナリオは動かさずに、テキストだけを刷新されると、話としては懐かしいのに、それでいてまるで別のストーリーを体験しているような、なんとも不思議な感覚が味わえてしまいますね。一方で、敢えて音楽だけはアレンジを加えなかった自信に痺れる。タイトルのBGMなんて、未だにゾクゾクッときますね~。リメイクは完全に成功であるといえましょう。


さて、一通り誉めた次は逆の部分。不服であった点についてを述べさせて頂きましょうか…。

リメイクといった点では、確かに文句のない見事なものでありましたが、それだけに留まってしまっていたのもまた残念なところ。つまり、私が期待していたのは新たなルート、新たなシナリオであって、それらがまるで見られなかった結果には強い不満があります。

一応クリアした後に、幼少期の話という新たなエピソードが用意されているにはいましたが、これは本当にオマケ程度の短いものですし、ぶっちゃけ必要とは思えなかったぐらい。「柏木家の食卓」の書き下ろしの方は嬉しかったですけれど、これだけではとても満足はねぇ。

今回のレビューのテーマとして掲げた「痕をやったことがある人間が、今一度買いなおす必要性はあるのか」の答えとしては、「一応YESではあるけど、過度の期待は禁物」といったところでしょう。いやはや、なんとも通り一遍の結論で申し訳ない…。

昨今の毒気が抜かれたLeafさんのエロとは違い、痕は本来、エロにも目が行き届いていた作品です。が、当時のあの水無月さんの絵でエロさを感じる術はなく、せっかくの濡れ場に突入したとしても、余所見をしながら「早く終わんないかなぁ」と惰性にクリックを連打していました。

ところが、今回は見違えるまでの美麗なグラフィック。その恩恵は、エッチシーンを余所見するなどという侮辱を許しません。やっている事はリメイク前となんら変わらないものですが、やはり絵がこうまで違ってくると、印象は大きく違ったものにならざるを得ません。音声がないこと、陵辱が主体であることが足を引っ張りましたが。

柏木四姉妹。いやいや、この中で誰と選ぶのは土台ムリな話ですよ。みんな可愛すぎます。

強引に一人に絞るのなら、初音ちゃんになりますかねぇ…。彼女は、もう何も口を挟む事は出来ない程に、有名で人気のある妹キャラ。アンチ妹、アンチ幼女の私であっても、御多分には漏れず、彼女の愛らしさにメロメロになってしまいましたもの。

何よりしっかりしているのがいいですね。妹キャラって何故か、判で押したように頭の弱い少女(幼女)ばかりが横行していますから~。まぁ、その部分が他ならぬ「萌え」って事になるんでしょうが、私はむしろ初音ちゃんのような利口なタイプに「萌え」を感じます。
2002年7月28日