Kissing!!
 
メーカー〔valhalla〕 発売日2003年9月19日

幼馴染とは単なる仲の良い女友達に非ず
クリスマス専門イベント会社という家業の手伝いで、毎年クリスマスがつぶされてしまう主人公。「今年こそは恋人と過ごしたい!」との思いから、プロモーションのためにキャンギャルを雇って、ついでにその女の娘と恋人になっちゃおうと、一挙両得を狙う。

そのキャンギャルに選べる候補の女の娘はといえば、同じ学園に通う、智和、梓音&李音、イルマ、あやかの4人(正確には5人)。少し人数的に寂しい気はしますけど、堅物委員長、小悪魔な双子、美少女転校生、連れ添い幼馴染と、彼女らはそれぞれに個性的な面を持っていたので、物足りなさみたいなものは特に感じませんでした。

物語の内容は、そのキャンギャルの女の娘との、クリスマスまでの交際の話が主になってます。「主人公が実はサンタクロースだった」という展開もあったりしますが、あくまで本線となるのは、キャンギャルに託けて付き合うことになった女の娘とのラブラブなお話。仲良くなって、付き合って、エッチして、クリスマスを迎えて。ここで素敵なのは、交際がゴールインではないってことですよね。付き合い始めてからの日々こそが醍醐味

交際以前と交際以後、両方が描かれているお話の最大の魅力と言えば、なんといっても、付き合ってから変化していく女性側の心境でありましょう。つまり、恋に落ちたら、女の娘の態度が急変するってやつですよ。男には目もくれていなかった堅物委員長が、いつしか主人公には心を開いていったり、主人公を下僕かペット扱いにしていた双子が、急にしおらしくなっていったりする変わり様は、やはりグッと来るものがあるでしょう?

幼馴染あやかの場合は、最初から主人公に好意を抱いていますから、残念ながらこういった「変化」や「落差」は見られませんでしたけど、彼女は彼女で素晴らしかった。というか、あやか最高っ~~! ハッキリいって、この作品の魅力はあやか! 彼女に集約されると言っても過言じゃあないのですよ!

彼女のどういうところが良かったのか、一言で言い表せば「心優しさ」でしょう。これだけじゃ伝わり難いのはわかっていますが、でも彼女の魅力を伝えるのに、他に適当な言葉が浮かびません。おっとりとした柔和な性格が、周りの人間までをも暖かな気持ちにさせてくれる。でも、その澄み切った優しさは、主人公古賀幸多郎へ一途に向かっているという健気。幼馴染キャラとしては王道であり定番であるとも言えますが、他の雑多な幼馴染キャラとは純度ってもんが違いますよ。何せあやかは、主人公にだったら胸を揉まれても別に怒らないという、素晴らしき慈愛と寛恕の精神に溢れていますからね!

友人の前で、冗談半分に彼女のおっぱいを揉んでも、「もう、ダメだよ幸ちゃん。学校では、やらないって約束したじゃない」と軽い口頭によるお咎めだけで済まされるんですよ? 会話の最中に何の脈絡もなくおっぱいを鷲掴みしても、彼女は嫌がる素振りを見せずに、平静を装いながら会話を続けようとするんですよ?

いとおしい……いとおしい……嗚呼、なんていとおしい! あやかLOVE! LOVE!


でも、こんな心優しきあやかと相反するように、主人公はめっちゃ度量の狭い男だったり。なんていうか彼は、大したことでもないのに1人ナーバスになっては不貞腐れて、その結果他人を冷たく突き放したりする、かなり自己中心的な男なんですなぁ~。

当然、こんなエゴを剥き出しの主人公には、初め嫌悪感を抱かされました。が、これに関しては私の方がやや思い違いをしていたよう。そう、ゲームを進めていくうちに薄々と勘付いてきてしまうんですよ。こういった主人公の自分勝手さは、わざと盛り込まれていたんだってことに。

Kissing!!は、どうやら「初めて異性と付き合う不慣れな恋愛」というものを表現していたみたいなんですねぇ。だから、初めての交際においては誰しもが経験するであろう無様な失敗や痛い勘違いを、主人公はやらかしてしまう。しかし、そこから自分の過ちに気付き、深く反省し、そして成長していく。この過程こそがKissing!!のテーマのようだったんです。

それがわかってくると、主人公への苛立ちは次第に消えます。未熟な主人公が体験する「格好悪い恋愛」は、戸惑いこそあったものの、今となっては妙に納得させられてしまいました。元々、初々しい男女の恋愛話は私好きですし、不器用な主人公が一生懸命なところも良かったです。


コメディ路線と純愛路線が上手い具合にマッチしていて、とても良く出来ている印象だったKissing!!は、是非皆様にもプレイをお勧めしたい1本です。プレイ時間もお手軽ですし、何かのついでにやってみるのもいいかも。気軽にほんのり幸せな気分が味わえますよ。最近、私は心の病んだ作品ばかりしていたような気がするので(パーフェクトホールとか、今宵も召しませとか、MILKジャンキーとか)、このKissing!!で少しは癒されたかな。

ただ、最後にひとつだけ……。どうしてもわだかまりが解けなかった部分が1つありましたので、これを最後に指摘しておきたい。

そのわだかまりとは「キス」の重要度。タイトルがそうであるように、このゲームは「キス」がコンセプトで高いプライオリティを持っていたはず。でもその割には、普通の恋愛ゲームのキスシーンと大差なく、「キス」の重要性が然程感じられなかったのは残念。他とは違う、印象的でドラマティックなキスシーンがあるものと私は期待していただけに、その思いが空振りしてしまったのはガッカリでしたね。せっかく「キスは心のエッチ」と素敵な理念をお持ちだったのですから、キスにはもっとこだわって欲しかった。

現在進んでいるルートが、フローチャートにて一瞥出来ます。見逃したイベントの確認が視覚的に出来、重要な分岐点へいつでも自由に戻れるのはとっても便利。

反面、もう1つの特徴であるCGアルバム機能は不便。これは作中のCGをスナップボタンを押すことで保存し、そのCGが後にアルバム鑑賞出来るってシステムで、なんとなく楽しそうな印象はあるんですけど、実際には必要を感じるものじゃなかった。だって、普通なら自動でやってくれていることを手動でやらされているわけだから、やっぱり手間を感じるし、面倒臭さがある。物語にハマり込んでいる最中に、イチイチCGを片っ端からキャプチャーする気にはなれませんね。

あやかのストーリーは目尻が熱くなる。泣かせにかかるイベントが設けられているわけではないけど、あやかの優しさについつい心打たれてしまう…。

私はこういう「愛情」もしくは「偉業」にこそ、本物の感動が存在すると考えます。これらに比べると、死や別離などの「悲哀」による感動なんかは、芸がなく安っぽい……と思うのですが如何でしょう?

幼馴染の泉水あやか。個人的には神岸あかりに匹敵する幼馴染キャラだと思うけど、あまり大それたことは言えないので黙っておこう。
03年9月29日