発売日 2008年3月28日       
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家に帰るまでも、家に帰ってからも人生です
君が望む永遠Latest Editionには、エンディングを迎えてからの後日談として、新たに第3章が追加されています。多大な悲しみと犠牲を払いながら、それでも何とか掴んだ幸せ。長い苦難から解放され、ようやく愁眉(しゅうび)を開くことのできた孝之君だけに、後日談ではさぞやラブラブで幸せいっぱいの日常が描かれるものだと思っていましたが、なんとこの第3章で語られていたものは「現実」。有耶無耶にされることのない赤裸々な現実なのです。

「2人は末永く幸せでした」で幕を閉じていいはずの物語で、その後の現実の厳しさを見せつけられるわけですから、ある意味、非常に野暮なシナリオだったとも言えますね。これまで壮絶な人生を送ってきた孝之君ですけど、本当に大変なのは「その後」なんだということを痛感させられるシナリオでしたよ。

今回は、その第3章の遙・水月・茜ルートを個別にレビューいたします。第3章の存在そのものがネタバレですので、レビューの記述もネタバレは伏せません。予めご了承ください

 遙ルート
不幸な事故から3年の月日を経て、再び遙との時間を取り戻すことができた孝之君。もう遙とひとときも離れていたくないという想いは強烈なはず。余計なことは全部忘れ、今はただ遙と一緒の時間を共有したい…そう考えるのはごく自然なことだと思うのですが、孝之君は次のステップを踏み出すため、敢えてこれまでの3年間と向き合おうとするんです。忘れたい過去として封印してしまうのではなく、遙のために先送りにしてきた自分の将来や疎遠になっていた両親のことなどを、しっかり見つめ直そうとする。何気ないことのようで、これはすごいことですよ。

遙も遙で、失った時間を取り戻すべく、退院後はすぐに白陵大を目指して受験勉強。周りに依存するばかりの現状を許さず、自分の力で未来を歩めるよう懸命に頑張っています。2人ともしっかり地に足を付けて前に進んでいるのが偉い。

そこで孝之君に別れを告げたのは少々やり過ぎだった気がしますけど、それだけ彼のことを思い、理解してあげているからこそですよね。別れを切り出された孝之君も腐ることなく、遙の真意を汲み取った上で、一層やる気を燃やしていたのが格好良すぎる。茜ちゃんが「理想的な彼氏」だと称していましたが、ホントその通りだと思いますよ!

「愛があれば他に何もいらない」という理想が罷り通らないのが現実。フィクションの世界で、それをやってのけたのは大きな意義があったと言えます。2人に優しくない現実の中だからこそ、2人の愛を強く感じさせてくれました。

 水月ルート
遙との別離を乗り越え、恋人水月との将来を真面目に考えていくシナリオ。しかし、「互いに愛し合っているから」だけでは容易に解決できないのが結婚という問題。特に孝之君にとっては、水月の輝かしい人生を犠牲にさせた上での「今」ですから、結婚を口にする前にきちんと筋は通さなくてはなりません。水月の親御さんに直接ご挨拶に向かう緊張感は、こちらにまでひしひしと伝わってくるほどでした。

一方、慎二は、孝之にはもう果たせなくなってしまった遙のお見舞いに。傷心の遙に、自分がよすがとなり、いつの日か再び4人が仲間として集まることはできないかと提案するものの、遙は慎二の犠牲の上に成り立つ関係は望まないと拒否。これまでの慎二の優しさに謝意を述べながら、過ごした時間は短かくても私たちは確かに親友だったと。だから、さようならしようと。孝之を失い、水月を失い、そして自ら慎二とも永訣を告げる遙の心情を慮ると、涙が溢れ出てしまいました…。孤独を抱え込み、潔く未練を断ち切ってしまえる遙は強いですよ…。

このルートで孝之君がいつにも増して男らしかったのは、そんな遙の想いに答えるという自覚があったからでしょうか。遙との別れが成長を促し、彼を大人に変えましたね。3つのルートのうちで最も就職が早かったですし(笑)

 茜ルート
遙・水月ルートで男を見せてくれた我らが孝之君ですが、ここでの孝之君はグダグダ孝之君。茜との関係を考えていく上で、このままじゃいけないのはわかっているが、ケジメを付けるためには、まず自分の将来をハッキリさせなくちゃならない…。そんなことを考えながら、ずるずると結論だけが先延ばしにされてしまう。持ち前の優柔不断さと間の悪さ・運の悪さが全開です。ま、まぁ、これも孝之君の愛嬌ですよね。

このシナリオでは、孝之・茜の2人を取り巻く環境、友人たちの優しさが心に残りました。親友として茜に助言する千鶴に、姉として茜を心配する遙。普段子供っぽくて甘えんぼで、気の強い茜とは、しばしば力関係が逆転してしまう遙ですけど、ここぞのときは立派にお姉ちゃんしているところが私はたまりません~。

恋人同士の問題は、当人同士で解決すべき事柄ですが、当人同士だけではデッドロックに乗り上げてしまうこともしばしば。そういったとき、信頼の置ける友人から、冷静な第三者としてのアドバイスしてもらうことで、解決の筋道が見えてくるもの。エロゲは、ボクとキミの狭い世界で語られがちなだけに、周囲の人間のありがたさを感じられるのは稀有。孝之と茜の関係は、みんなに支えられた上での関係だと実感できます。

最後は水月まで絡んでくるとは思わなかったですね。グダグダ孝之君を鉄拳制裁してくれてスッキリ。水月も辛い立場でしょうに、わざわざこんな嫌な役目を引き受けてくれた優しさが胸に染み入りますよ。

 総括
誰よりも安息の日々を追い求めてきた孝之君が、一時的な幸せにしがみつくことなく、逃れられない現実としっかり向き合い、2人のために本当の幸せを得ようと努力する姿は素晴らしかったです。ヘタレだなんてとんでもない。敬意を表すべき主人公ですよ。

一度終わらせた物語の続きを強引に付け足した第3章は、蛇足になるかもと危惧していた面もありましたが、どれも文句なしの最高のシナリオばかり。DVD specificationで、水月犬エンド・水月奴隷エンドといった馬鹿野郎な追加シナリオを付け足した怒りは、これで綺麗さっぱり忘れることにします。
2010年5月24日