君が主で執事が俺で
-They are My noble Masters-
メーカー〔みなとそふと〕 発売日2007年5月25日


執事か下僕かなんて宇宙の大きさに比べたら小さいことかな
姉、ツンデレと時代の機運を読み取り、ブームを巻き起こしてきた仕掛け人タカヒロさんの次なる一手が、この君が主で執事が俺で(以下きみある)。主に仕える執事をテーマにした異色作は、今後の執事ブームの牽引役となりうるに相応しい一本。2007年執事ゲーの大本命として、私はあらん限りの期待を寄せておりました。

そんなわけで、この私がきみあるに求めていたものは上質な「執事萌え」。まぁ、萌えというと語弊があるので、「執事の格好良さ」ですかね。主人公の執事としての活躍っぷりを堪能しながらハァハァしたいという気持ちです。……あれ? これも語弊があるな。

しかし、いざ蓋を開けてみると、事前に思い描いていたイメージとは大違い。期待していた執事としての格好良さや、活躍っぷりはほとんど見られず、ハァハァも出来ない。どうやら、タカヒロさんの「執事」と私の「執事」には、決定的な認識のズレがあったみたいで…。


私の中の執事像って、なんていうか軍師とか参謀みたいな捉え方なのですよ。久遠寺三姉妹のイメージを三國志に置き換えると、森羅は魏の曹操、未有は呉の孫策、夢は蜀の劉備。となれば、森羅に仕えるなら私は荀彧(じゅんいく)となり、彼女の突き進む覇道を影となって力添えしていきたい。未有に仕えるなら私は周瑜となり、協力し合いながら目標に向かって共に邁進していきたい。夢に仕えるなら私は諸葛亮となり、未熟な主を諭しながらよりよく導いていきたい。

つまるところ、主の意向を汲み取り、如何に「補佐」していけるかが、執事に問われる器量だと思っているのです。

ところが、この上杉錬という主人公は、主に忠を尽くしてはいるものの、サポートという意識が極めて低い。ただ主人の命に服従し、随従しているだけ。言葉遣いも慇懃さより卑屈さが滲み出ており、これではまるで下僕のよう。タイトルは、「君が主で下僕が俺で」の方が相応しかったように思えてきますね。私は執事には憧れますけど、下僕には憧れません

でも、考えてみれば、年若くして経験も素養も持たない男が、一朝一夕で執事になるって設定自体無理があったわけで…。本来のバトラー(執事)には大佐という適任者が既にいますし、拾われて雇ってもらった新米の錬の立場なんて、せいぜいフットマン(従僕・下男)が関の山。最初から「執事」を名乗るには荷の重い主人公だったのですね。

これなら主人公は、既に久遠寺家に長年仕えているという設定の方が良かった。その方が、主や他の使用人たちとも、もっとフランクな間柄で接することが出来たはずなので、タカヒロ作品の最大の魅力、「キャラ同士の掛け合い」も活かしやすかったはず。きみあるのように、親交のない人間関係の中で物語が始まると、会話に遠慮があって、どうもぎこちないんですよ。きみあるには、蟹沢、フカヒレ、スバルといった遠慮なしで話せる相手がいないため、つよきすの時のような軽妙な掛け合いが失われちゃっているのです…。

細かいパロディや、お約束を匂わせて裏手を取るタカヒロ節は健在なれど、つよきすと比べれば全体的にスケールダウンしているのは、もはや否定できない事実。ストーリーはまさに軽薄短小と言えるのもので、起伏に乏しく、挨拶程度の会話を交わすだけで、何事もなく一日が過ぎたりすることもしばしば。各ヒロイン、最後には帳尻合わせっぽい山場が待っていますけど、大して引っ張らずに程なく解決。前のめりのまま、「んんん!?」って感じで物語は終わります。

満足出来たのは唯一森羅ルートのみ。残りは全部消化不良のままで、主人公とヒロインが結ばれる理由がどれも不明瞭。「なんで惚れたのか?」という根本的な部分が描かれていないんですもん。エッチシーンの入り方なんて、笑っちゃうぐらい強引。大した理由も動機もなく、いきなり押っ始めますからね。南斗星との初エッチなんて、普通に雑談に興じている最中にいきなりですよ?

錬「いかん、勃起してきた」 (え?)
南斗星「……してあげようか?」 (ええっ!?)
錬「それでは……お願いします」 (ええええーー??) 

こんな急展開ついて行けませんって~。不意の勃起は生理現象として不問に付すとしても、何故これでいきなりフェラに発展するの? この時点では、恋人同士どころか、まだお互い好意すらハッキリ示していない状態。それでフェラしようかは明らかに変だし、させる方も変。南斗星に限らず、総じてヒロインの貞操観念が低いのが魅力を損なっている(全員処女だけどねっ!)。大体、あれだけシスコン・シスコン・シスコンと豪語し、姉一筋の姿勢を見せていた錬君が、躊躇も葛藤もなく、簡単に他の女の誘いに流されちゃうってどうなの? 失望だな~。

逆に、ブラコンの化身である美鳩も変に物わかりが良くて困る。最愛の弟が他の女に取られたんだから、もっと落ち込むなり、怒るなりしてもらわなきゃ!! 何のためのブラコン・シスコン設定かと! 後々の修羅場の布石だと信じていたのに!

きみあるは、「嫉妬」を生み出すには最高の環境に恵まれていたはずです。例えば、メイドの朱子と恋仲になっても、錬は森羅に今まで通り仕えなくてはなりません。朱子にしてみれば、相手がいくら主とは言え、自分の彼氏が他の女が密に接していることは、穏やかな気持ちじゃないでしょう。しかし、実際にそんな突っ込んだシーンはない主への恩義と、彼氏への愛情の板挟みで、苦悩している朱子の姿を私は見たかったのに…。森羅の立場としても、自分ではなく、メイドの朱子に靡いた主人公に対して、もっと面白からぬ感情を抱いてもおかしくなかったはず。この辺、アプローチをもっと見せて欲しかったのは、私だけではないと思いますけど…。


今回、「ここをこうすれば良かったのでは!?」という愚痴がやけに多いのは、それだけきみあるが素材として一流だったという証拠です。主に仕えるという設定の面白さと、我の強いキャラクターたちの魅力。それで仕上がりが微妙だなんて、どーーーしても納得いきません。

実際、タカヒロさんなら、もっともっとこれを上手に料理出来たと思うんですけどねぇ。きゃんでぃそふとから独立して、他にやらなくてはならない仕事が増えたから、シナリオに本腰を入れられなかったのでしょうか(企画シナリオ制作進行広報社長を全部1人でやっていたらしいので)。全体的に煮詰め切れていないというか、やりたかったことを全部出し尽くせていない感がものすごくありましたよ。

面白かった・つまんなかったの2択なら、迷わず「面白かった」を選びますが、あらゆる面で前作のつよきすを下回っている以上、素直な褒め言葉は出て来にくいです。このような眼差しの高い作品は、「フツーに良作」じゃあ満足出来ないんですよ。

発売前にキャラクターソングだの、ビジュアルファンブックだの、TVアニメ化だの、フラグを立てすぎたのがいけなかったのかも知れませんね…。“メディアミックスにご執心な作品は、ろくでもない結果に終わる”のがエロゲのジンクスですから。

 久遠寺森羅(要芽+乙女)
高貴・高慢・高圧の3高が揃ったご主人様。わかりやすい女王様タイプなので、Sなのが嫌味にならないキャラだったと思います。下僕体質な主人公とは一番馬が合っていたと言えるかも。森羅が朱子に罰を与えるとき、錬が身代わりとなって森羅の鞭を浴びるという場面がありましたが、その時の鞭を振るう度に段々気分の乗ってくる森羅と、次第に鞭の味に快感を覚える錬のやり取りがすごく好きでした(朱子のツッコミも)。こういうコミカルなSMシーンは良い。

 朱子(高嶺)
乱暴だけど、面倒見の良い姉御肌。ガン付けの表情がカワイイ。「○ニスだけあって突っ込むのが上手い」と主人公が語るように、ツッコミ役としても冴え渡っていました。テンポの良さと声の張り上げ方が実に素晴らしく、CVの海原エレナさんの上手さが光ります。作中で他のキャラになりきって声色を変えるネタがありましたが、そこでも海原エレナさんは実力はズバ抜けていましたよ。ロリに女教師に、何でも完璧にこなしてしまう。主人公と身体が入れ替わったときの演技も含めて、声優さんのすごさをまざまざと見せつけ(聞きつけ?)られました。

 久遠寺未有(雛乃+歩笑)
投げキスを振る舞う明晰な頭脳の萌えキャラ。大人ぶるロリというのは、いつの世も微笑ましいものですね。オシオキ時の「やー! やー!」の掛け声や、半ズボンを前に理性を失った時の、素の口調がツボ。未有の声優さんも演技上手だったなぁ。一発でファンになっちゃいました。超有名で超人気のある声優さんであるのは承知していましたが、私は早坂日和と朝比奈みくるのイメージしかなかったため、今まで好きじゃなかったんですよ…。

 上杉美鳩(帆波+海)
最強の甘やかせおねーちゃんとして、最初から最後までずっと私の心を掴んで離さなかった存在。周りの冷ややかな視線をまったく意に介さず、2人の世界に入り浸るバカップルならぬバカ姉弟な関係が素敵すぎました~。普通の人間ならドン引きしてもおかしくない異常なブラコンっぷりが、私をパライゾへと誘(いざな)ってくれます! 常識というメガネでは見えないシンパシーで結ばれた麗しき姉弟愛に乾杯。

 久遠寺夢(衣瑠香)
没個性という強烈な個性を放つ夢お嬢様は、美鳩の次に注目していたキャラでしたが、どうも本編でそのポテンシャルが充分に発揮されていたとは考えにくい。本編より、きみある通信の時の方がカワイイってのは問題だよなぁ…。あ、ちなみに私もゴッドマソは大好きですよ。あのグダグダ感は最高にCOOLだよね!

 南斗星(巴)
6シナリオ中、彼女のシナリオが最もひどかった…。食いしん坊キャラなのはわかるけど、それに固執しすぎ。エッチに至るまでが強引すぎ。最後いくらなんでも暴走しすぎ。もう何一つ良いところがなく、目の当てられない醜態です。巴ねぇのリボーンとして事前人気も高かった(人気投票2位)のに、こんな適当な扱いで許されるの…?

上杉美鳩です。時たまメガネという点でも私の趣味ど真ん中だったんですが、それは思ったより見せ場がなくて残念…。
2007年5月31日