発売日 2010年11月26日
メーカー ALcotハニカム 
ぶりっ子女を蹴飛ばしたい!
キッキングホースってなんですか? 「街行く皆様の恋路の邪魔者を、馬に代わってキックの嵐」とサイトの説明を読んでも当を得ない。ゲームを始めたらわかるのかなと思いましたが、結局最後までなんなのかよくわかりませんでした。恋愛成就を手伝う恋のキューピッドというわけでもなく、見ず知らずのカップルから邪魔者を追い払うとかそんな意味不明な活動を見せられても…。途中、恋愛お邪魔団という明らかにギャグ寄りの敵対勢力が出てきたり、どこまでが真面目でふざけているのかもわかりにくい。作品の主題を真っ向から否定するのもなんですが、こんな設定いらなかったよ。

単に巡回と称して、女の娘と一緒に街中を歩く状況を作りたかっただけでしょうかね。大義名分がなきゃデートできない主人公のために。お察しの通り、主人公吉居草太君はノンアサーティブな男子で、会話は聞き役に徹するタイプ。それでいて、一度セックスしたら急にリードしたがるエロゲ主人公にありがちな内弁慶タイプだったり。男気はないくせに男の見栄はある感じ。

しかし、人間的には“いい人”で、気配りに長けた周りの空気を読める人。女性グループの中で唯一の男性であることを弁えながら立ち回っていた姿が印象的でした。そして、とてもお母さん想い。母親孝行は、ストーリーに密接な要素でなかったものの、彼の大きな魅力の1つだったと思うんですよ。

「……うち、親父いなくてさ」 「だから、なんつーか……母親とのそういうの、すげー大事って思うんだよ、おれはっ」 「こういうこと言うと、マザコンみたいに思われるからイヤだったんだよ」

志乃に漏らしたこのセリフを聞いて、私はじ~んと来てしまいました。思春期の男子として、母親が大事だなんて友達には知られたくないもの。気恥ずかしさで言い淀んでしまう草太君は可愛かったですし、そんな彼を笑い者にすることなく、「母親とのそういうのはスゲー大事だと思うんだってさ……なんか、それ聞いてあたし、こいついいなぁって」と後日友人に語っていた志乃もまた可愛い。私が主人公を見直したタイミングと、志乃が主人公を異性として意識し始めたタイミングは奇しくも同時だったのです。


ともあれ、「主人公が気に入るか」という私の中での最も大きなハードルをクリアして前途洋々。しかし、思わぬところに落とし穴はあるもので、まさか3人の攻略ヒロインの中にここまで私を苛つかせる存在が紛れていようとはね…! その女の名は芹摘聖(せりつむひじり)。この超絶ぶりっ子キャラが耐えられない!!

聖は、自分に自信が持てなくて、やたらと自分を卑下する性格なんですよ。なら、1人で勝手に自虐していりゃいいんですが、彼女がいやらしいのは、他人に向かって自分がダメであることをしきりにアピールするところ。つまりこれって、「そんなことないよ」「いいところあるよ」って相手に言わせたいだけなんですね。そんな浅ましい狙いに主人公はまんまと引っかかって、「芹摘って可愛いと思うけど」セオリー通りの返答をするもんだから、哀れ聖の術中。

「嘘です、嘘です、わたしが可愛いなんて、そんな」
草太「いやいやいやいや、芹摘は十分普通に可愛いだろ」
「可愛くなんかありません、ありえませんっ、わたしなんかがっ……」

ああぁぁぁ~~!! この見え透いたやりとりに虫酸が走るぅぅぅっっ!!

そのあとも何度も押しかけて来ては、「どうしてあんなことを言ったんですかっっ」としつこいのなんの。その度に「芹摘は可愛いんだって!」と彼女を励ます(気分になっている)草太と、そんなことないですぅ~と謙遜する(振りをする)聖。一生やってろと言いたいです。私の目の届かないところで。

男に媚びるためにわざとらしく自分を卑下して、謙虚で奥ゆかしい控えめな女の娘をアピールするぶりっ子女の手口にあっさり引っかかる主人公が、私は情けないよ…。大体、最初は「わたしはなんでこう駄目な子なんでしょうっ……!?」とぼやいていたくせに、普通だ普通だと主張が変わっている時点でおかしいじゃないかと。「なにもかもが平均値ですっ。歩く平均、ミス普通なんですっ」って別に謙遜でもなんでもないんだけど?(怒) 自分を貶めているように見せかけて、実は普通レベルだと言い張っている聖は、本当に薄汚い女です。大っ嫌い♪♪


「私は、絶対否定しない。絶対屈しない。自虐しない」 自分としては、こう口にするのばらの方が断然偉いと思いますね。背景に家庭環境の問題(単に貧乏なだけですが)を抱えていても、それをおくびにも出さない、ましてや同情してもらうため自分からアピールすることなんか絶対にしないので、聖と対照的なヒロインだったと言えましょう。ポジション的にもこの作品のメインだったのばらシナリオは、私も楽しませてもらいました。正確には、のばらと付き合ってからのイチャイチャっぷりに!

結局、この作品って、付き合ってからが本番みたいなところがあると思います。キッキングホースという意味不明の活動を見せられている間はただただ退屈でしたが、くっついてからは保住圭さんの本領発揮と言わんばかり。のばらと初エッチまでの流れは特に面白かったですよ。初めてでゴムは嫌だから安全日まで待ってと言われ、初体験をする日を予め決めておくのがいい。内心では一刻も早く結ばれたい2人は、その日から予定日までお互い意識しまくりで、待ちきれないとばかりに熱くキスを交わすなど、恋人同士の初々しさが存分に溢れ出ていました~。

この雰囲気の良さは、ミヤスリサさんの絵が寄与する部分も大きい。いつもよりパステルカラー調で、上品な美しさに仕上がっています。昔は白濁姫とかやっていた人なのになー(思い出させるな)。それが、今やこんなにも清潔感のある可愛らしい絵に。ミヤスリサさんの描く“はにかみ笑い”は、オリンピックで金メダルが取れるレベルですよ。


トータルで見れば、やっぱり良くできた作品だったんだなと。私は芹摘聖のせいでかなり評価を落としてしまいましたけど、彼女のぶりっ子を許せる(or気付かない)人なら問題ないでしょうし、その他にこれといった大きな瑕疵は見あたらないはず。保住圭&ミヤスリサの黄金コンビの名に恥じない良作であったと言えます。

それにしても、イージーオーのおるごぅる&風見春樹コンビの次は、Siriusの保住圭&ミヤスリサコンビがまるまる移って来ちゃうとはなぁ。AlcotハニカムはVisual Art’s難民の駆込み寺か。

芹摘聖のぶりっ子に輪をかけていたのが声。なんでエロゲの声優さんって過剰に甲高いロリ声を出す人が多いんだろう…。もっと普通に喋ればいいのに。聖の本性を見抜いて、わざとぶりっ子演技していたのなら大したもんですが。

ちなみに、男友達の本庄君の声は無駄にセクシーすぎる。何この色気!

お気に入りは芹摘聖。「おいっ! お前さっきから散々叩きまくってたじゃねーか!」とお怒りの皆さん、まぁまぁ落ち着いて。確かに大嫌いなのは今も変わりないんですが、あのぶりっ子を天然ではなく全部計算でやっていた悪女だと思うと、逆に彼女はアリなんです! 告白されたら野外でも速攻セックスに持ち込む貪欲さ、初めてと言いながらやたら手慣れたキスの濃厚さ、デートでは腕組んでゴリゴリ胸を当ててくる強(したた)かさ、水着はわざと子供っぽいものを着てくる計算高さ、こいつは相当に腹黒い女ですよ…! だからいい!

作中では、最後までぶりっ子の仮面のまま本性を現しませんでしたが、それも逆に考えれば性悪の証。エロゲ史上、最上級の悪女に乾杯
2010年12月16日