殻ノ少女
メーカー〔Innocent Grey〕 発売日2008年7月4日


理ではダメだ。事件のカギ穴は偶によって満ちる…!
原点回帰! 古き良き時代のアドベンチャーゲーム! コマンド総当たりの作業的な要素を排除! プレイヤーが捜査・推理し、自ら事件を解決! ビジュアルノベルではなく、ゲームに昇華した!

どうですか、この魅惑の文言の数々。すごくワクワクしてきますね~。こういうの私は大好き。ただ文字を目で追っていくだけの受け身な楽しみ方ではなく、実際に自分の考えで事件を解決させられるのは堪んない。こうなりゃ、ない知恵絞ってでも、必ずや真犯人を突き止めてみせますよ! じっちゃんの名にかけて!(小声)


と、最初こそテンション高めで意気揚々に始めた殻ノ少女でしたけど、ものの数分で意気消沈。それはつまんないから……というより、作品の陰鬱とした暗いムードがこちらにまで伝染してきたような格好。いやはや、本当にこれは気の滅入る作品ですね。抑揚のない淡々とした展開に早くも息苦しさを感じる。箸休め的な笑いどころや萌えどころもなく、常にシリアス一辺倒で浮かない空気のまま。関西人は真面目な話がずっと続くと息が詰まるんです(注・息が詰まらない関西人もいます)。

そして、リアルに吐き気を催すような猟奇的な連続殺人事件。これだけバラバラでぐっちょぐちょのグロテスクな死体ばかり見せられたら、そりゃ身体の具合が悪くなるのも当然ですよー。狂気、異常、陰湿、残酷、偏執、病的、あらゆる負の形容詞が付きまとう沈痛なストーリーは、耐性のある人、そういうのが好きな人じゃなければ相当にキツイ。こういっては失礼かもしれませんが、京極夏彦さんっぽいよね。私は京極堂シリーズ苦手なんで~。

とはいえ、暗いのもグロいのも全部承知の上で購入しているわけですから、今更そんなことでグダグダ文句を言ったりはしません(思いっきり言いましたけど)。しかし、目当てである「推理」がちっとも楽しめなかったことは大いに問題でしょう。この件に関しては、キッチリと文句を言わせて頂きたい!

殻ノ少女は、Detectiveシステムと呼ばれる4つのパートから構成されています。テキストでシナリオを進めていく基本パート。事件の手掛かりを探して街中を移動する探索パート。現場検証や家宅捜索において証拠を探し出す捜査パート。そして最後に、これまで集めた証拠と情報に基づいて真相を究明する推理パート。これら4つのパートによって、実際に探偵気分を味わえる素敵なゲーム性が生み出されているのです。……理論上は。

現実的には、基本パートを除く、探索、捜査、推理パートのいずれにも重大な欠陥があり、とても探偵気分なんて味わえなかったんですね。

まず、推理パートの問題点は何かというと、自分が推理している実感に乏しいってところ。「○○と関係ある人物は誰だった?」「○○に関連する証拠はどれだった?」と主人公の設問に答えるクイズ形式になっていて、単に今まで起きた出来事の復習という側面が強い。こんなもの推理とは呼びませんよ。間違った解答をしても、「それは違う」とすぐさまダメだしされたりしますし、プレイヤーは探偵ではなく、主人公の助手という印象に過ぎなくて…。

捜査パートはもっと悪質。ある事件の鍵として物証Aが必要となるのですが、それを手に入れるためには、捜査パートで机の上をクリックして物証Bを見つけた後、本棚に隠された物証Cを探しだし、再度同じ場所を調べるという面倒な手順が求められるのです。整理しますと、机→本棚→本棚の順序が唯一の正解。もし、ここで本棚→机の順序で調べてしまうと、そのまま捜査パートが終わってしまい、物証Aは永久に出てきません

こんなもん、わかるかっ!

本棚を先に調べるか、机の上を先に調べるかは、人それぞれ、完全なる指運でしょうよ! 推理はおろか、直感すら入り込めない偶然の世界。たまたま先に本棚を調べてしまっただけで、捜査が八方塞がりになるなんてどうなってんの!? …ええ、私のことですよっ。この訳のわからないトラップのせいで、どれだけ時間を無為に費やしたことか! そりゃどんなに頭を捻ってもわからないはずです!!

探索パートにおいても、事件の重要な情報を手に入れるための場所に、プレイヤーが立ち寄るかどうかはやっぱり運。誰かが情報で示唆してくれるならともかく、ノーヒントで“偶然”その場所に立ち寄らなくてはならない。もう嫌っ。こんな偶然が支配する世界で、頭を使って推理しようとすること自体バカらしいわ!

いいですか? 推理ゲームというのはロジックを積み重ねて解決の道筋を辿るものであって、理詰めで解決出来なきゃ何の意味もないんです。そこで用いられるものは自らの頭脳だけ! せいぜい直感が1割。運なんてもんは0割ですよ! 運が悪いってだけで捜査が行き詰まり、出口のない思考の袋小路に陥るなんて、どう考えてもおかしいでしょ! 常識で考えてください! 私、何か間違ったこと言っています!?


難易度が高いのは結構。些細な選択ミスでゲームオーバーに繋がるのも結構。しかし、納得いくだけの理由と落ち度を示して頂かなければ理不尽です。何の説明もなく、漫然とゲームオーバーを突きつけられても、どこからやり直せばいいかわかりませんし、途方に暮れるだけ。しかも、自分の落ち度が「運が悪かった」では発狂しかねませんよ。現に私は発狂している!

物語としても、後味が最悪なまま投げっぱなしにして終わりますし、このやり場のない鬱憤は一体何処へぶつければいいのやら…。トゥルーエンドとバッドエンドがどう違うのか、私には見分けが付きません。主人公は一応事件は解決させるものの、被害者を救えない、加害者を成敗できないで、存在がちっぽけ過ぎる。こんな平凡な能力の探偵をわざわざ主人公にしないでください。主人公が名探偵ではない推理モノって思った以上にストレス溜まりました。

私にサイコミステリというジャンルは向かないようで。グロいのが嫌というのもありますが、ここまで異常な犯罪では、犯人に対する興味が失せてしまうというのが一番の理由。

ミステリには「犯人は誰?」のフーダニット以外にも、犯行に至った経緯、狂気に駆り立てた心情を解き明かすのも楽しみの1つ。でも、卵の中に人肉を詰め込んだり、四肢を切り落として達磨にして飾っている人間に対して、「気が狂ってる」以外の説明は必要としないでしょ? どれだけ複雑な事情が絡んでいようとも、同情する余地は一片もなく、単なる気の違った異常者でしかありません。そんな奴の動機や心情を酌み取ろうという気にはなれないのです。

いっそのことホラーに徹してくれればもう少し楽しめたんですけどね。グロい死体を見せるにしても、もっと溜めて溜めてバッと驚かせたり、激しいBGMで恐怖心を煽って欲しかった。首が180度回っている残虐な死体を、当たり前のように自然に見せてくるから困る。

ご懐妊中の人妻、高城和菜。サブキャラのくせにやけに愛嬌があって、存在感あるなと思っていたら、カルタグラのメインヒロインだったのね。当然、エッチシーンはないわけですが、夫の秋吾さんとイチャイチャ(喧嘩)しているシーンは微笑ましかったです。
2008年7月7日