発売日 2004年8月27日
メーカー elf 
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形振り構わぬ延命策
下級生は半分も出てこないくせにタイトルは下級生。そんなお約束のツッコミをやっている暇もないぐらい、語りたいことは山ほどあるこの作品。

私は下級生という作品には並々ならぬ思い入れがあります。元々、elf作品は他より公平性を欠いた贔屓目で批評していますが(あるまじき行為)、私をそうさせた原因は、他でもないこの下級生のせい。独創的なゲームシステム、16色とは思えぬ美しいCG、蛭田さんによる軽妙なセリフ回し、フロッピーディスク17枚に上る大容量と、当時私がプレイした時の衝撃は相当なものでした。エロゲにおいて、初めて大きな感銘を受けた作品として、今でも深く深く心に刻まれてしまっています。

その下級生とは一体どのようなゲームなのかというと、これは皆さん既にご存知であるはずなので、今更説明は不要でしょう……とはいえないぐらい、elfの威光は過去の遺物なので、しぶしぶ説明をしておきます(もう知らない人は多いでしょうからねぇ)。

下級生2は、学園生活最後の1年間に、いろんな女の娘と仲良くなり、甘酸っぱい思い出を作ろうという、一風変わったナンパゲーム。現在主流の選択式テキストAVGとは一線を画したゲームシステムとなっており、時間の概念があるマップをあちこち徘徊しては、目当ての彼女に出会って口説き倒すという、ゲーム性の高さが売り。会話を繰り返し、電話番号や家の住所を聞きだしては、プレゼントを贈ったり、デートに誘ったりで、地道に好感度を上げていく。そんなゲームです。

前作の雰囲気が2でもそのまま残っており、郷愁を思わせる懐かしさ。あの頃の記憶がありありと蘇りますよ。マップはほとんど変わっていないし、デートもほとんど変わっていないし、会話もほとんど変わっていないし……って、これ本当に前作のまんまじゃないですか。

そりゃ、私は下級生のゲームシステムを無闇に変えて欲しくはなかったですけど、ここまで「そのまま」ってのはどうなんだろう? 下級生って8年前のゲームですよ? 8年前のゲームシステムを丸々流用して、何もかもが当時のままってのは、さすがに複雑な気分。「以前の下級生にただ新キャラを追加しただけ」といっても乱暴ではないぐらいですもん…。

何も変わっていないのだから、下級生の弱点と呼べる箇所も手付かずで残っている。相変わらず、イベントは見つかりにくいし、1年間は冗長だし、攻略はパターン化されていました。当時の私でも「これはチョット…」と思っていたものが、“8年の時を越えて今再び”なのだから、苛立ちはありますよ。細部ぐらいは、今の時代に併せてフレキシブルに変えられないものか。全部が全部前作のままだなんて、いくらなんでも頭が堅すぎるな~。

でも、ゲームとして古色蒼然なのかというと、そうではなく、やっぱり今でもしっかりと遊べる。それだけエロゲ業界の発展が遅々としているともいえますが、あの頃のelfは8年先を進んでいたともいえる(信者的思考)。第一、こんなゲームシステムのエロゲは唯一無二なのだから、新しいか古いかはなかなか比べようがありませんね。


下級生2は、現在における「純愛ゲームの常識」からは、あらゆる面でかけ離れています。要領よく複数の女に粉をかけるというゲームシステム自体、他の純愛作品では考えにくいものでしょう。普通の純愛作品だったら、ヒロインはある程度主人公に対して好意を持っているものなのに、やたらと愛想の悪い娘ばかり。こちらから楽しく会話しようと話を振っても、無愛想な顔に、素っ気無い態度で、気のない空返事。もう、全然相手にされない。幼馴染のたまきでさえ、始めの方は電話をして話していても邪魔臭そうで、「忙しいから電話切っていい?」という無言のプレッシャー。愛なんて微塵も感じられません。

でもね、下級生はこれが良いのです。最初は歯牙にもかけない態度で接してくれる方が嬉しい。むしろ、嫌われたい! 邪険にされることで興奮する! ……とまではいいませんが、この下級生のゲームシステムでは、最初の内は好感度が低ければ低いほど燃えてくるのは事実。

まったく自分に興味を持たれていない相手を、しつこく食い下がって、やっとこさ振り向かせて、せっせとご機嫌を窺って、最終的には自分に惚れさせる……この過程が何より気持ちいいんですもの。だからこそ、最初は嫌われていたい。その方が、後になって「最初はあれほど嫌われていたのに、今では…」という得も言えぬ快感を味わえますから。黙っていても向こうから擦り寄ってくるような女は、このゲームにおいて必要な存在ではありません。

そういった意味で七瀬は最高でした。最初は軽蔑に近い冷ややかな視線で完璧に見下されていますが、負けじとひたすら彼女へ愛を注いでいくと、徐々に心境の変化が現れ、会話も普通に打ち解けていくようになる。やがて、彼女が笑顔を見せるようになれば、それだけで感動を憶えますし、頬が紅潮しようものなら、大きな達成感を得られますよ。あにはからんや、ベッドで「私のこと……好き?」と甘え声で囁くようにもなれば、もう悶えるような幸福感が込み上げてくるっ。

大袈裟じゃなく、下級生2で楽しいのはまさにこの瞬間。下級生2の面白さは「女の娘の心変わり」にありますよ。相手の小さな表情の変化に喜びを見出すために、1年という長い期間をかけて努力を重ねるんです。

多くの人は、純愛ゲームの良し悪しを決める場合、「ストーリー」の良し悪しで判断されると思われますけど、この下級生2に限っては、その「ストーリー」で計れるような作品ではありません。ぶっちゃけ、下級生2のストーリーは取るに足らないぐらいベタ。特別印象的なイベントがあるわけでもなければ、感動的でドラマティックな展開が待ち受けているわけでもないので、ストーリー至上主義の人にとっては、下級生の良さはこれっぽっちも伝わらないかもしれませんね。


下級生より面白くて感動する物語の作品は他にたくさんあります。下級生より魅力的なキャラの出てくる作品も他にあります。下級生よりゲーム性の高い作品も他にあります。下級生よりエロい作品も腐るほど他にあります。

けれど、それら総ての要素で下級生を上回る作品があるのかというと、残念ながら私の知る限りない。例えば、Fateや君が望む永遠なんかは、物語とキャラでは比べ物にならないぐらい下級生を上回っていますけど、ゲーム性とエロでは下級生を下回ってしまう。下級生は、ストーリーとキャラとゲーム性とエロの四大要素が、高いレベルで、バランスよく配合されている稀有な傑作なんですね。未だに私がこの作品から抜け出せないのは、そうした理由に拠るものなんですよ。

でも、一言注意しておきたいのは、これは前作下級生のすごさであって、別に下級生2のすごさではないということ。下級生2は単に前作を忠実に再現しているだけの作品であって、「下級生2ならでは」の面白味は皆無であったといっていい。当然、1発目と2発目では衝撃や感激の度合いが大幅に薄れていますし、そもそもテキストが前作に及んでいないので、この時点で負け。なまじ蛭田さんの筆致を意識しているせいか、劣化コピーという印象が強かった。

elfは8年前からまったく進歩していないのかという気分にもさせられましたし、やはりこのガチガチの安全策で作られた下級生2には、僅かながら寂しさがありましたね…。看板タイトルの続編で慎重になる気持ちもわかるけど、ここまで「変えない」のは臆病すぎだと思います。下級生はこれで完成された作品ではないと思うので、次こそは…。

門井亜矢さんの絵って、顔だけ自分で描いて、身体は他の人に描かせている……という不名誉な噂が以前ありましたが、まさか今回もってことはないでしょうね? 疑いの目で見てみると、なんとなく顔と身体の整合性がないような気がするようなしないような。

私はこのゲームで注目していたキャラは、最初からたまきと七瀬の2人だけ。2人の内どちらかがFAVORITEであることは確信していましたが、結果は高遠七瀬に軍配。やはり、惚れた後のギャップの大きさが勝因でしたね。エロが良かったことも、後押しになった。たまきもエロは良かったけど。

本文でも少し触れましたが、現在の純愛ゲームの価値観って、ほとんどがストーリーの良し悪しに集約されているんですよね。純愛ゲームで傑作と呼ばれるものは、どれもストーリーが素晴らしいとされるものばかり。だから純愛ゲームを作っているメーカーさんも、ストーリーだけに力を注ぎ込んでいて、結果、10のメーカーが10似たような作品を作っている。下級生2をプレイすると、改めてそんなストーリー偏重の現状が浮き彫りになってきます。

良質のストーリーをじっくり堪能できるAVGは、私も好きです。が、全部が全部そんな作品では飽きてきます。既に、生半可な作品では満足できない身体になってきて、「これKeyに似てるな」「これはLeafの真似だな」といったように、既視感を感じながらプレイすることもしばしば。「ストーリー」だけを追求する作品は、そろそろ限界が近づいているのではないでしょうか? 一度、原点に立ち戻って、作品のオリジナリティで勝負をするような、ゲーム性の高い純愛ゲームを今後は期待したいものですね。elfのみならず。

現在でもゲーム性の高い作品はたまに出てくるんですけど、それらのほとんどは、何故かファンタジーなのが謎。ここら辺も偏っているよなぁ。
2004年9月4日