まきいづみのひゃくにんいっちゅ!
メーカー〔ああかむ〕 発売日2007年1月4日 ※音声ファイルのみです
絶対に笑ってはいけない百人一首
新古今調の代表的歌人として知られる藤原定家の私撰和歌集を、まきいづみがカロリーたっぷりの甘ったるぅ~~いボイスで華麗に詠み上げる! その名も「まきいづみのひゃくにんいっちゅ!」。2007年の年明け早々に発表され、全世界を仰天させたこの衝撃的作品を、今日は果敢にレビューして参りたいと思います!


内容としては、本当にただ百人一首を詠み上げるだけ。異国で生まれ育った深窓のお嬢さま(推定5~8歳)が、日本語の勉強のために、百人一首を教材として用いているという設定で、舌足らずな口調ながら日本の心を丁寧に朗読していく。まずは辿々しくも上の句・下の句を正確に詠み、続けて下の句だけを再度詠み返すわけですが、この時、同じことをまともに繰り返すのではなく、下の句から連想されるお嬢様独自のセリフに入れ替わっているんですね~。

「小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば 今ひとたびの 行幸待たなん」だと、「みゆきさんまたご指名で~す」
「浅茅生の 小野の篠原 しのぶれど あまりてなどか 人の恋しき」だと、「小錦どすこーいどすこーい」
「ほととぎす 鳴きつる方を ながむれば ただ有明の 月ぞ残れる」だと、「今はビッグサイトだったよね?」
「嘆きつつ ひとりぬる夜の 明くる間は 如何に久しき 物とかは知る」だと、「イカさん、日差しに、吊され、干される!」

外国育ちと思えない偏った日本の知識を駆使しながら、自由奔放に振る舞うお嬢様。残念ながら、文章でこの可笑しさはちっとも伝わらないでしょうが、まきいづみさんの独特のイントネーションで語られると、その愛くるしさに思わず吹き出してしまうこと必定。これをiPodに入れて、通勤・通学の電車の中で楽しもうとする行為はオススメできませんね。込み上げてくる笑いに堪えきれず、1人ニヤニヤ笑みを浮かべてしまって、確実に周りの乗客から奇異の目で見られてしまいますよ!

「あらし吹く み室の山の もみぢばは 竜田の川の 錦なりけり」
「音に聞く 高師の浜の あだ波は かけじや袖の ぬれもこそすれ」
「おほけなく うき世の民に おほふかな わがたつ杣に 墨染の袖」


この辺の句にはかなり萌えました。「あはれとも いふべき人は 思ほえで 身のいたづらに なりぬべきかな」に至っては、「ダ・メ・だ・ぞ♪」というベル先生(鐘宮先生)の名台詞を入れてくるサービスぶり。「玉の緒よ たえなばたえね ながらへば 忍ぶることの 弱りもぞする」は、“玉の緒よ”が素で言えずに、2回も言い直していたのが最高~。「世の中は 常にもがもな 渚漕ぐ あまの小舟の 綱手かなしも」なんて完全に言えていなかった(笑)。


まさにこれは病んだ現代社会における一服の清涼剤。まきいづみさんのデレ甘ボイスに耳を傾けレイドバックすることで、貴方の荒んだ心は癒され、安らかな多幸感に満たされることでしょう。

しかし、これは本当に脳味噌が蕩けてくるボイスなので、あまり連続して聞くのは危険。10首程続けて聞いた段階から、徐々に意識が朦朧とし始めてきまして、20首で思考能力が極端に低下し、30首で酩酊したかのような軽い目眩が…。

40首になると前後不覚に陥り、50首で呂律が回らなくなり、60首で譫妄(せんもう)を来すようになり、70首で世界がぐるんぐるん回り始め、80首を越えると自分の身体が宙に浮かんでいるような錯覚に襲われます。このまま100首まで続けて聞けば間違いなく廃人ですね。リアルに麻薬的ボイス。一度の大量摂取は人体に深刻な障害を及ぼしかねず、また依存症の恐れも極めて高いので、濫用は控えましょう。無自覚のうちに「ぴっちぴっちちゃっぷちゃっぷらんらんらん!」なんて譫言(うわごと)を口にするようになったら、早急に医師の診断が必要です。

ちなみに、これを本来の用途として百人一首で用いる場合には、ちゃんと札詠みが全部終わってから、札を取るように。まきいづみさんさんが句を詠んでいる最中に札を取るような無粋な真似は許されませんよ!
2007年1月8日