百鬼~淫黙された廃墟~
メーカー〔elf〕 発売日2003年3月29日


「廃墟=探索AVG」の先入観
この百鬼は、遺作とは似て非なるゲームです。私は最初にこの認識を履き違えていた為、かなり肩透かしを食らった格好になりました。というか、ほとんどの方が驚いた(騙された)と思われます。パッケージの裏にだって、「探す・集める・動く・考える・触る!」と表記されているのに、このゲームは自由に島内の移動すら出来ないのですから…。

百鬼には様々な新システムの試みが見られるものの、その実、ストーリーの流れに出てくる選択肢で話が分岐していくだけの普通のAVGに過ぎません。遺作が能動的に、探し、集め、動いて、考えて、触っていくのに対し、百鬼は終始受動的。この差はサスペンスとして劇的に印象を変えてしまっています

一方、逆に良い方へ裏切られる事になったのが、エッチシーン。当初イメージから、「凌辱ばっかりの作品かな?」と危惧していたのですけれど、存外ラブラブなエッチが多かった。ラブラブとはいえ、エロさの低いシチュエーションという訳ではありませんでしたし、私的にはこれだけやってもらえれば大満足。エロは及第です。

ただ気になるのは、ストーリーにほとんど絡まない場所でエロが行われている事ですね。普通に物語を添って進めていけば、途中に設けられているエロは1つ、2つで、濃度もいたってノーマルであるのに、本編から寄り道して、隠し(?)ルートへと向かえば、今度はエッチシーンが簡単に5つほど見れたりします。問題なのは、このルートはエッチだけの為のルートであって、前後の脈絡がなく、ストーリーに絡んでいないという事。まさに、本編とは絡み合わない別箇(べっこ)のルートになってしまっている事です。

他にも、後日談としてのエッチシーンがあるんですけど、これも完全に独立したものになってしまっている。つまり、印象として“エロが隅っこへ追いやられている”といった感じなんですよ。

どんなカタチでも、無いより有ったほうが断然嬉しいのですが、なにやらエロシーンがぞんざいな扱いにされているような気がして少し寂しいのです。やっぱり、程よい感じにエロが散りばめられている方が、ゲームをプレイする上での推進力にもなって、喜ばしいと思われますね。


続いて、新人(?)藤海琢樹さんが手掛けるストーリーの感想。

 物語の舞台は、時流に打ち捨てられ、風化した廃墟ビル群が立ち並ぶ「応化島」。
 前ぶれなく送られてきた、ミステリーツアーの招待状に誘われ、
 主人公たちは無人の孤島へと足を踏み入れる。

導入はこんな感じなのですが、この展開の強引さはまさに、「金田一少年の事件簿」を彷彿。百鬼は大別して、応化ルート、ミステリールートの2つのルートが本線になっているのですが、前者はまだしも後者であるこのミステリールートの方は本当につまらなかったです。何が悪いって、筋書きが悪いんだから面白いワケがありません。その名の通り、「殺人事件謎解きモノ」の部類なんですけど、その展開はあまりにもチープ。私は全然ミステリーマニアではありませんが、さすがにこのような展開では納得できませんでしたよ。

  楽しいはずだったツアー旅行が参加者の謎の死によって一変。
  駆け巡る恐怖。底知れぬ不安。迫り来る危機。

  だが、ここは海の孤島であり、明日の船を待たねば脱出は不可能!
  外線は途絶えていて、助けを求める事すら出来ない!
  そして…、冷酷な殺人鬼は…、犯人はこの中にいるッ!

…こんなお話ですから。本当に「金田一少年」まんまなんですよね。「謎はすべて解けた!」の後の主人公の探偵口調も一緒。「犯人はオマエだ!」の後の犯人の行動も全く一緒。シナリオライターさんはこの推理漫画にインスパイアされちゃっているのでしょうか?

一人目の殺人が起きた後に、早速、主人公(プレイヤー)の「推理」が始まる訳なんですが、矢継ぎ早に次の事件、次の殺人が起こってしまうので悠長に推理をさせてくれる時間がない。なにせ、滞在1日の間に、全部のイベントをつめこんでいるワケですから慌しくてしょうがないんです。

その他にも、「犯行のトリック」「密室の謎」「殺人の凶器」「殺害動機」「犯人を特定した後の急展開」、これらが全部ダメ! 特に一番最後のは寒気がするぐらいダメ! あのね。推理モノのコアであるこれらが、いい加減であってどうするのよ…。

最初に私は、このミステリールートを金田一に準(なぞら)えましたけど、推理モノの質としては数段低いと言わざるをえません。大体、金田一少年なんかを引き合いに出さなくてはならない事自体に、物悲しさを感じますよ。このルートをプレイした時はさすがにヘコんじゃいました。

でも、元がこれだけツマンナイのを大作のように見せかけているというのは、それはそれでelfさんの実力なんでしょうね。

この百鬼は完全フルボイス仕様(なんか日本語オカシイ)でして、男性脇役キャラは勿論、主人公にも声が用意されています。フルインストール1.5G占有は伊達じゃありませんね(ま、私は早々に主人公のボイスはオフにさせて頂いたのですが)。

ルートナビゲーション、ホイールマウス対応、3段階ヒント機能、設定カスタマイズ、用意されたユーザーインターフェースは完璧。独自のフォントや、開発力を誇示する為だけの3Dムービーなども優れています。フルスクリーンのみの起動というのは明らかなマイナス点ですが、それを差っ引いても、大変良くできたシステムであると言えます。ともかく、コンシューマー作品並に人手も手間も金もかかっております(多分)。

一癖も二癖もありそうで、実はそうでもないキャラクター達。張られた伏線のほとんどは、意味を成さないという大どんでん返しでした。

それはさておき、今回の一番お気に入りな娘は幼馴染の若葉ちゃん(苗字伏せ)。登場でいきなり「お兄ちゃ~~ん」だったので第一印象最悪であったんですけど、話が進んでいくうちになかなか可愛いヤツである事に気付きました。ベタベタと甘えて抱きついてくるところなんかすごく良いですね。

で、でも、本音は男性器に頬ずりをする三津橋あかりの方が…。

以前のelfは、作品ごとに何かしら新しい仕掛けを用意して、いつも驚かせてくれていたのですが、ここ最近(蛭田氏隠居後)はめっきりそんな仕掛けも影をひそめてしまいました。

私はelfの作品に関しては、ある一定の期待感を勝手に抱いてプレイに望んでいるので、そこそこのレベルであっても不満が残ってしまう。結局のところ、elfのゲームは傑作でないと満足できないのです。そういった意味では、決してクソゲーでない(と思う)百鬼でさえ、納得がいかなくなってしまう訳なんですね。

非常に手前勝手な言い分である事は承知ですが、これも偏に王者エルフを愛するがゆえ。次の作品も、また変わらぬ期待で待ち望んでおりますよ。
2003年3月31日