発売日 2005年10月28日
メーカー TYPE-MOON 
妥協なきソリッドなファンディスク
Fate/stay nightをプレイし終えたその瞬間より芽生えた、ファンディスクへの抑えきれない希求。待ちました。待ち続けました。そして、1年9ヶ月という時を経て、悲願の、祈願の、念願のFateファンディスクが、ついに発売の時を迎えましたっ!!

遅いよ!

いや、ファンディスクを出していただいたことは素直に嬉しいのですけど、いくらなんでも発売に至るまでの1年9ヶ月というスパンは、間を空けすぎでしょ~。

確かにhollowは並のファンディスクじゃございません。ダラダラ延期して発売が遅れたわけでもない。そんなTYPE-MOONさんに「遅い!」と文句を付けるのは正直気が引けちゃうのですが、やっぱりファンディスクってのは、新鮮さが第一に望まれる代物だと私は思うのですよね。

理由その1、「本編の興奮が冷め遣らぬうちにやりたい」。大きな感動も、日が経てば次第に薄れ行くように、まだ余韻が残っているうちにファンディスクをやりたいと思うのは当然の話。とはいえ、Fate熱は1年9ヶ月で冷めるほど柔なものでもなかったので、この理由1はあまりhollowに影響しなかったといえます。

理由その2、「内容を覚えているうちにやりたい」。むしろ問題だったのはこっちの方。hollowをプレイしてまず私が思い知らされたのは、Fateの内容を驚くほど失念していたということ。あれだけFateを絶賛しながらその中身を忘却しているなんて、ファンの風上にも置けないお恥ずかしい話ですが、本編発売から1年9ヶ月も経ってしまえば、皆さんもディテールは忘れちゃっていますよね…?(と思いたい) Fateはただでさえボリュームが膨大で、内容も一筋縄でなかったのですから、“理解していたつもり”が所々欠損してしまうのは仕方のないことです(と思いたい)。

個人的な見解としては、ファンディスクは1年以内に発売すべきものかと。巧遅は拙速に如かずという言葉もありますし、発売スピードも少しは考慮して欲しいな~。手間隙かけてじっくり作るのは、ファンディスクやリメイクではなく、続編であるべきでしょう。


hollowのストーリーは2つの大きな側面を持っています。新キャラバゼットを中心とした、今一度始まる聖杯戦争が物語の根幹ですが、Fate/stay nightでお馴染みのキャラたちとの馴れ合い、それぞれの日常的エピソードもまた見所。

聖杯戦争が終わって半年、訪れた平穏と幸せな日常。衛宮家は今や、セイバー、桜、藤ねえ、ライダーが居候し、途中からは凛までも加わる大所帯。どこぞのラブコメ温泉下宿かくやのフラグ立ちまくり恋愛下宿ハーレムの様相です。殺伐とした緊張感に包まれ、息つく暇もなかったFateの世界で、このように穏やかで心地好い日々を堪能出来るだけでも、hollowには大いなる意義があるというもの。

今回のhollowで評価が急上昇したヒロインは、桜とライダーとキャスターの3人でしょう。本編ストーリーの都合上、報われない役どころだった間桐桜は、hollowでその魅力が開花しました。笑顔が格段に増え、健気で可愛らしい理想的後輩キャラに。ヤキモチ焼きな一面も健在で、それがゆえに時折見せる大胆な行動。内に秘める恐ろしい本性(黒桜)や、胸の大きさを誇るプールでの増長も総てが愛おしい。本人の望む「桜激萌え純愛シナリオ」はなくとも、ちゃんと悪いイメージは払拭されていましたよ! 本当の意味で、セイバー、凛と並ぶ3大ヒロインになれた気がします。

ライダーは、体験版の頃から注目していたキャラ。長身でメガネでおねーさんってだけで私の好みに直撃。今回は出番も多く、様々なエピソードで楽しませてもらいました。特にゴルゴン三姉妹の話は必見。

そして、最大のサプライズだったのがキャスター。葛城宗一郎の妻として、新婚生活を満喫している若奥様は、蕩けてしまいそうな程のデレデレっぷりを見せ付けてくれます! 頬を朱に染め、満面の笑顔で惚気始めるキャスターさん。葛城メディアと呼ばれて、有頂天にはしゃぎ回るキャスターさん。フードを脱いだ素顔に、よもやこのような素敵な一面が隠れていようとは! キャス子さん最高! ああ、ぴこぴこ動くエルフ耳を引っ張りたいっ!

他にも、蒔寺、氷室、三枝の三人組やセラ・リズなど、本編で脇役の存在であったキャラたちの台頭が顕著でした。まさにファンディスクならでは。ただ、その分、割を食ってしまったキャラもいて、凛、アーチャー、イリヤなんかはなかなか出番に恵まれず…(ある意味で士郎も)。

凛はスタート当初ロンドンに出向いており、悲しいかな、帰国するまで彼女の出番が一切ないのですよ。こちらからロンドンまで会いにいこうと、マップで「空港」を必死に探しましたが残念ながら発見出来ず。何よりも凛が好きな私にとって、このおあずけはあまりに過酷。“遠坂神社”がなければ、恨み言の1つや2つでは済みませんでした。

でも帰国後は、デートイベントもあって幸せ絶頂。水着姿まで見れましたし、これだけで私は満足満足。「ミミック遠坂」における遠坂VS三年後の異次元遠坂の電話口論は今作品ベストイベントでしたね。

アーチャーは「デッドブリッジでの決戦」という非常に美味しい場面が与えられていたものの、全体的にイベントがごく僅かで不満…。ランサーとの釣り勝負は本気で面白かったのになぁ。

更に不憫なのはイリヤ。メインなのにイベント少ないし、デートは2人きりじゃないし、まさかでエッチシーンもないし、散々な扱い。本編でルートを削られてしまったから、今回その分を取り返してくれると信じていたのに可哀想すぎます。見所はイリヤダイブだけ。これがものすごく可愛かったけど…。


さて、お次はもう一方の……というか本筋であるhollowルートの話。こちらは従来のFateの性質に近く、とてもシリアスな路線。魔術協会に所属するマスター、バゼット・フラガ・マクレミッツと、彼女に使役するサーヴァント「アヴェンジャー」が、多くの矛盾と不条理を抱えたまま、延々と繰り返される4日間の中で、終わったはずの聖杯戦争を再び開始する。

序盤はとにかく不透明。朧な世界観で全体がぼかされたまま、言わば述語だけで物語が進行している感覚。その「見えにくさ」が話の大きな推進力になっていたのですが、同時に難解さも。奈須きのこさんの文章構成力は相変わらず見事ですし、飲み込まれるような叙述と意外性の高い展開で、すぐさま物語へ没頭してしまうのですが、どうにも理解の追いつかない部分がありましたね。

恥も外聞も捨て告白すれば、私はhollowの全容を把握し切れていませんよ。士郎とアンリマユの関係が明らかになり、今回の聖杯戦争の正体が見えてくるようになって、そこでようやく私は「なるほど」「さすが」と頷けるようになりましたが、これはホントに最後の最後。しかも、絡まった思考の糸は完全に解れたとはいえず、最後まで氷解しなかった疑問は、細かいものを含めると片手で数えられないほど。読解力のなさというより、単純に私の理解力の問題でしょうか?

hollowのストーリーは、本編のような“わかりやすい盛り上がり”ではないので、Fate本来の趣とは多少違ったと思います。バトルも少なかったですし。だから「面白かった」とは言っても、本編ほど燃えるものではなかったな。バゼット、カレン、アンリマユというキャラがイマイチ好きになれなかったのも一因。真実を踏まえた上で、もう1度最初からプレイし直してみれば、感じ方は大きく違ってくるかもしれませんが…。


まぁでも、なんのかんの言っても、hollow ataraxiaが1年9ヶ月の成果をしっかりと肌で感じられる史上類を見ないファンディスクであった事実は、誰にも否定できないこと。奈須さんのテキストのみならず、武内崇さんの魅力あるCGも充実し(特に立ち絵の多さには驚かされる)、演出はFate本編を上回る程に冴え、音楽の1つ1つが美しい(主題歌はオリコンデイリー上位に食い込む始末)。もう何から何まで豪華。TYPE-MOONはファンディスクという分野においても王者でした

30時間のプレイ時間もあっという間。待ち続けた1年9ヶ月に比べたら、ホント一瞬の出来事。Fateの世界はこれで一区切りとなり、凛やセイバーやアーチャーたちと出会えなくなるのは途轍もなく寂しいですが、また奈須きのこさんの作り出す新たな世界で、新たな感動を与えてもらえるものだと信じています。

hollowはセーブの仕方がやや特殊で、最初にチケットを選択する仕組み。某サウンドノベルの「しおり」と同様のものだと説明すればわかりやすいでしょうか。

オートセーブではありませんが、ゲームをやめるときは必ずセーブが必要になるので、「選択肢の前でセーブする」というズルが簡単には出来ないんですね。これは優れたアイディアだと思います。hollowに限らず、総てのAVGで採用してもらいたいぐらい。「やり直せない」というだけで、一気にゲーム性が高まります

即答で遠坂凛。公衆の面前ではネコを被って、余裕綽々に振舞ってるお嬢様ぶりっこな遠野さん……もとい、遠坂さんを心の底より愛しています。

とかいいつつ、凛が出てこない間には完全にセイバーに浮気。目を輝かせながら大判焼きや肉まんを食い入るセイバーの姿は反則ですよ~。凛もセイバーもどちらも完璧なヒロイン。二人ともすごく可愛くて捨てがたいので、両方と要領よく付き合いたいと思う真心に偽りはありません。
2005年11月2日