発売日 2012年6月29日
メーカー tone work’s 
美人すぎる学食のオバサン
昨年の11月頃、突然身体がエロゲを一切受け付けなくなりましてね…。医師の診断によると、エロゲ倦厭症という急性疾患らしく、変わり映えしないエロゲへの苛立ちや、ヘタレ主人公に対する重度のストレスによって発症される病気なんだそうです。エロゲレビューサイトの管理人としては致命的な病ですよ……ごほっごほっ。

ですが、おかげさまで半年経った今では病気も寛解してきまして、体調はだいぶ落ち着いてきました。そろそろ本格的なリハビリに入ろうかなと。そこで現場復帰第1弾として選んだのが、オフ会でオススメされて存在を知った初恋1/1。交際してからの丁寧な描写を売りとしているコンセプトに強い共感を得ました。

主人公の祐馬君は、中学時代に友達の万引きを庇ったことで部活を追われ、それ以来何かに熱中する気持ちが失われてしまったキャラですが、自ら変わろうとするために一歩を踏み出す前向きな意欲を持っているのが好感触。頑張る気持ちを忘れてしまったというのなら、私が取り戻させてあげるよ! 一緒に頑張ろう!!

と思ったんですが、よくよく考えるとこいつ、朝は幼馴染が起こしに来るわ、変なロリがお兄ちゃん呼ばわりだわ、初対面の女がやたら馴れ馴れしく話しかけてくるわ、典型的なご都合主義世界の住人なんですよね~。立候補した学食向上委員会も、気付けば男1人に周りは美少女だらけのハーレム環境。あれ~? あれ~?

結局、周りから話を振られないと何もアクションを起こせないお決まりのパッシブ野郎。そんな性格を如実に表しているのがメールでのやりとりですよ。彼、自分からは全然メールしようとしないんです。届いたメールにただこまめに返信するだけで、たまに自分から送るときは決まって業務連絡。

……ふざけるな! これじゃあ、今までの萌えゲー主人公と何も変わらないじゃないですかー! ばかぁ!! ごほっごほっ!!

感情的になるあまり、治りかけていたはずの病気がすっかりぶり返してしまいました…。やっぱり私にもうエロゲは無理なのか……と心が折れかけたその瞬間、思わぬ展開が。なんと主人公が鴇崎摩耶(ときざきまや)にいきなり告白を行ったのです! えっ? ま、まさか!? どうせ相手から好きだと言われるのを待つだけの草食系だと思っていたら…! 事情が変わった!m9(`・ω・´)

その場では摩耶に軽く受け流されて有耶無耶になってしまうのですが、夜中ケータイに届いたメールには「ちょっとうれしかった」「彼氏はいません」との文面。

鴇崎に彼氏はいない…
あえてこんなことを書いてきたってことは、あきらめなくてもいいってことか?
俺にも可能性があるってこと? がんばっていいって…そういうこと?


おおっ! 主人公が燃えている! それからというもの、摩耶からの告白の返事を待ち続けて悶える日々。思い切って自分からメールで問い質してみようとするものの、なかなかストレートには訊きづらく、雑談メールで探りを入れていくのですが、なかなか本題に入れない。

メールのやりとりには、流れってものがあるんだから。逆らっちゃダメなんだ…

で、告白の件は何も訊けずに雑談だけでメール終了。こいつ~! カワイイ奴め!(笑) ヘタレはヘタレでもこういう前向きなヘタレはすっごく好感持てますね!

しかし、そんなヘタレでも、学校で摩耶と顔を合わせた際には、改めて二度目の告白を行う度胸を持っている。摩耶が好きだから匂いをずっと嗅いでいたいと答えて変態扱いされたり、ダメだった場合のネガティブな想像をしすぎて肝心の返事を聞き逃してしまったり、恋愛初心者らしい締まらない一面もありましたが、「キスしても…いいよ」というアプローチに対して、「ちゃんと鴇崎に好きって言ってもらえるようになってから…キスしたいんだ」と自重できる男らしさを見せたのには感動。

そして、私の中で決定的だったのが摩耶との初エッチのシーン。彼女とイチャイチャしている間にいい雰囲気になり、キスを交わしながらセックスになだれ込もうとした刹那、ゴムを用意していなかった大失態に気付くのです。状況を察した摩耶は、「ないならないでいいよ」とOKしてくれるんですが、祐馬君はその魅力的な提案にまさかの峻拒!

「ダ、ダメだ! そんなのダメに決まっているだろっ!」
「俺は、鴇崎のことを大事に思っている」
「だから、鴇崎にももっと自分のことを大切にしてほしいんだ」


これには驚きましたね…! エロゲ主人公というのは、「向こうが生でいいって言ったから…」と女に責任をなすりつけるクズタイプか、「赤ちゃんできても責任取るよ!」と学生の身分で無責任な妄言を吐くアホタイプの2種類しかいないと思っていたのに、そのどちらでもない人が存在するなんて!

慌ててコンビニまでゴムを買いに走る祐馬君は滑稽でしたけど、こんなに殊勝で立派な主人公はなかなかいないと思いますよ。愛しい彼女だからこそ、キッチリしないといけないところはキッチリしないといけない。経験の有無に関係なく、ちゃんと女性への気遣いができる主人公に私の見る目は変わりました

紆余曲折あったものの、無事めでたく結ばれることができた2人。摩耶からはこのまま一晩中セックスしようかと誘われますが、大いに葛藤した末、無断外泊はさせられないと彼女をしっかり家に帰す。うんうん! 最後まで満点じゃないですか、祐馬君は♪

ヒロインの摩耶も極めて私好み。明け透けな言動で、主人公を尻に敷いてしまう恐妻タイプな彼女ですが、よくある自分中心で彼氏を振り回すタイプとは違くて(私はそういうのも好きですけど)、自分が力になって彼氏の成長を促そうとするタイプ

例えば、勉強をかまけていた祐馬君は定期テストで赤点の危機に晒されていました。そこで彼女の摩耶は、“150位以内に入ったら何でも言うこと聞いてあげる”とご褒美をちらつかせて、彼氏のやる気を促すんです(笑) スケベ心に駆られて必死に勉強を励む祐馬君! いえいえ、恥ずかしいことじゃないですよ。勉学や部活に勤しむ学生のモチベーションなんて、大半が邪な下心なんですから!

「約束を守れば、私になんでも言うことをきかせることができるんだよ?」
「せっかく祐馬に、誠心誠意ご奉仕してあげようと思ってたのにな」


彼のやる気が減退するタイミングを見計らっては、電話で再びやる気を焚き付ける挑発を入れてくるのもお見事。いやぁ、これは将来、旦那を出世させる良い奥さんになりますよ~。

祐馬君もただ女房にお尻を叩かれっぱなしのだらしない亭主のままで終わることなく、最後は逆に摩耶の成長の促す存在となっていたのが素晴らしかった。恋愛を通して、お互いがお互いを高めあえるカップルというのは1つの理想像ですね。


恋愛スキルの乏しい童貞主人公が、初めてできた彼女に対して一生懸命奮闘している様を微笑ましく眺めるエロゲ、それが初恋1/1。エロゲ倦厭症を患っている私でも、久々に満足行くエロゲでした。これで本復したわけではありませんが、リハビリ第1弾としては視界良好。こういうエロゲが今後増えてくれれば、以前のように元気な体調を取り戻せる日がやってくるでしょう、きっと!

複数シナリオライターの弊害か、初恋1/1はルートによってクォリティがバラバラ。メイン格の雪乃ルートで「他の男の告白を断るために恋人の振りをする」をやられたのはげんなりでした。何度も言うけど、どうせ「演技していたはずが本当に好きになっちゃった」以外のオチは存在しないんでしょ!? 今後このパターンを使うのは一切禁止! こんな方式用いないと男女をくっつけられないシナリオライターは恥を知りなさい。

結局最初にプレイした鴇崎摩耶が一番印象的なヒロインでした。直接会話すると冷たい印象なんですけど、メールだと物腰柔らかくて可愛らしい。そんなギャップがあるのもまた魅力だったりします。絵文字は偉大なり。

彼女のシナリオは、途中まで目論んでいた方向性が終盤にきて突然翻意するため、プレイヤーの混乱を招くかも。ここで重要なのは、摩耶にとってそれは本当に望ましい未来であったのかどうか。行間を読めば彼女が芸能界への未練があったと感じ取れますので、私は主人公がその一助となったことを大いに評価したいです。

まぁ、解釈はどちらとも受け取れますし、摩耶の本当の気持ちを推し量ることは不可能なので、賛否両論はあるでしょうけどね。

いつも悪口三昧の私が珍しく主人公を褒め称えたと思ったら、Amazonのレビューでは主人公がボコボコに叩かれていたので笑いました。

共通ルートでの受け身体質は擁護不能ですが、好きな娘を意識し始めてからの祐馬君は素敵だと思うんだけどなぁ。告白は自分から切り出して、キス・デート・セックスも相手任せにしないエロゲ主人公なんてそれだけで貴重ですよ。かといって、何もかも自分一辺倒にはなりすぎず、相手を慮って配慮する思いやりもある。ルートによって若干キャラはブレますけど、それでも一定水準の魅力はキープされていました。

確かに祐馬君は特別な力が備わった主人公ではなく、本当に等身大の普通の高校生。年相応に愚かな面もあれば、無力でもあります。もし主人公にヒーローのような格好良さを重ねたいなら彼は落第でしょうが、そういう性質のエロゲでないのは明らかですし、やろうとする前向きな気持ち、やり遂げようとする行動力、高校生はそれだけ持っていれば充分カッコイイというもの。

Amazonのレビューでは具体的にどこがダメなのか書かれていなかったので不評の理由がイマイチわからないんですが、こういう青二才な主人公がダメとなると、結局人生達観したような若年寄主人公がいいってことでしょうかね…? 醜態晒すのを恐れて自分から何も行動しないような、私はそういう人こそヘタレと呼ばれる人種だと思っているんですけど~。

別に世論に反駁(はんばく)したいのではなく、純粋に何が不服だったのか理由を知りたい気持ち。素朴でいい主人公だったと思いますよ、私は。初エッチのあとにわかりやすいぐらい有頂天になる祐馬君とか可愛らしいじゃないの。
2012年7月10日