発売日 2010年2月26日
メーカー MUYM 
Fifteen Hounds
嫌われ役のレビュー
去る3月21日、なでしこやまとにある1通のメールが届きました。

はじめまして、私はMUYMという同人ゲームサークルで代表を務めております森廣達哉と申します。

~中略~

先月26日にうちのサークルMUYMで「FifteenHounds- フィフティーン・ハウンズ-」という同人ゲームを完成、販売を開始いたしました。普段利用しているなでしこやまと様にてぜひレビューしていただきたいのですがお願いできないでしょうか。引き受けていただけるようであれば完成品を発送いたします。


というわけで、「Fifteen Hounds」とやらをとらのあなに買いに行って参りました! 身銭を切ったからには、もはや遠慮する必要など一切なし! 気を遣ってお世辞を宣う必要もない! 善良なる1人のお客さんとして、自由に批評する権利があります! 例え、どんなに酷評することになろうとも、ちっとも私の心は痛みません!!

そう自分に言い聞かせないとレビューなんて書けませんよ……ハァ。


Fifteen Houndsは、Fate/stay nightを彷彿させるようなバトル主体のビジュアルノベル。タイムマシンの発明に伴い、30年後には3通りの未来が発生してしまった。平行するそれぞれの世界からやってきた未来人は、現世において自らの存在・時間軸を賭けて争い合う。界隈で頻発している首狩り殺人の犯人を先に仕留めた勢力が勝者。精鋭5人1組となって分かれた未来人たちが、いざ激突する。

プロットはとても意欲的で、壮大なストーリーを予感させてくれますね。物語は、この未来人サバイバルレースと同時進行で、「誰が福井冬香を殺したか?」という謎解き要素も含んでいるのが面白い。単純な殴り合いのバトルは好まない私でも、これなら楽しめるかも?

そうは言ってもメインはやっぱりバトル。未来のひみつ道具を駆使したドンパチ合戦なのですが、カットインとエフェクトをフルに用いて、なかなかに具合は良かった。CGのクォリティは、商業レベルから数段落ちるものですけど、構図が上手さから活き活きとした躍動感があり、バトルの迫力は充分伝わってきましたよ。

ただ、5対5対5という総勢15人によるバトルロワイヤルは、やっぱり煩雑さを感じます。序盤から登場人物が次から次へ現れ、名前や役所を憶えていくのも一苦労…。ナルシスト・ハードゲイ・毒舌ロリ・巨根ショタ・中二病キモオタなど、キャラクターはそれぞれ強烈な個性を持っているものの、どれも属性ありきのキャラ設定なので、中身が薄っぺらい個性が強いのに個性が薄いという矛盾を抱えているのです。

例えば、長谷川明はハードゲイという非常にあくの強いキャラクターですが、ハードゲイというキャラにばかり固執して、逆に長谷川明としての個性は感じられないんですね。これは全般的に言えること。表面を「強烈な個性」でデコレーションしているだけで、性質的にはみんな似たり寄ったり。髪型と髪の色でしかキャラを描き分けられない絵師がいますが、これはそのテキスト版といえば、伝わりやすいでしょうか?

主人公に関しては、もはや問題外。バトルに絡まない傍観者の立ち位置なので、そもそも活躍するシーンがほとんどありません。その上、捻くれたネガティブ発言でいちいち白けさせてくれます。殺された福井冬香の犯人捜しという目的を持って行動するのは素敵ですが、あれだけ福井冬香のことを無下にしていたくせに、死んだ途端復讐心に燃えるのは、戸惑いを感じずにいられませんよ。手当たり次第疑って絡んでいくのもみっともない。ト書きによる心情描写が極端に少ないことで、彼自身の行動理念が見えにくいのが問題です。

ストーリーは、Fate同様に、瑠璃香ルート、クリスルート、暦ルートと決められた順番通り展開していく構成。面白さ的には暦>クリス>瑠璃香でしたから、徐々に盛り上がりを見せていましたし、トゥルーエンドに該当するED10も見事なもの。それでも終わったあとの充実感が希薄なのは、全体に漂う冗長さのせい。もっと整理してコンパクトにまとめるか、驚きや意外性を加味して飽きさせない工夫があればなぁ。

結局、壮大な物語に対し、それを表現する力が不足していたのかな~と。生硬な文章、鈍重な演出、稚拙な機能の3つのストレスが物語への没頭を妨げていて、長丁場のストーリーに挑むにはぶっちゃけ苦痛でした。まぁ、同人作品ですので、その辺は割り切らなくてはならない部分ですけどね…。

あと、蛇足に感じたのは「笑い」。この作品、シリアス一辺倒ではなく意外にコメディへの意識も強いんです。漫画やゲームのパロディネタ、下ネタ、時事ネタなどを多用し、貪欲に笑いを狙ってくる。笑いのツボは千差万別ですけど、この作品は笑える笑えない以前に、雰囲気に合っていない、流れに沿っていない笑いが多くて。「今、どうしてもそのギャグ必要?」と疑問を感じざるを得ない場面が多々あるんですよね。

シリアスを切らない皮肉を効かせたジョークとかなら良かったんですが、この作品はギャグに走ると、デフォルメ絵を用いたり(私これ大嫌い)ガラッと転調させてしまうので、流れがそこでブツ切りになってしまう。それならもっとメリハリを付けて、シリアスに戻すタイミングを早めて欲しい。1つ1つのネタが明らかに引っ張りすぎで、話の本筋に戻るのが遅すぎ。結果、本来のシリアス部分にまで悪影響が及んじゃうことがしばしばでした。う~ん。


さて、如何でしたでしょうか、この血も涙もないレビュー。畏まった丁寧なメールで「レビューしてくれませんか」と依頼してきてくれた相手に対して、この非情・非礼・非道な仕打ちですよ。先方も「遠慮なく評価して」とは仰ってくれていましたが、まさかここまで頭ごなしに否定されるとは思っていなかったでしょう。苦労に苦労を重ねて完成させた自信作を、にべもなく貶してしまう浅生大和はまさに鬼畜。人でなしですね。

しかし、ここで日和って無難な評価でお茶を濁してしまっては、今までレビューしてきた他の作品に対して失礼になるというもの…。誰のためにやっているわけでもない、自分のためのレビューサイトで自分に嘘をついてもしょうがありません。様々な葛藤と心苦しさをこらえつつも、ここは正直に「面白くなかった」と結論付けさせていただきました。せっかくレビューを持ちかけてくれたのに、本当に本当にごめんなさい…。

ていうか、絶対レビューを依頼する相手を間違っていますって~! こんなの私なんかにやらせても、良い評価になるわけがない。惚れた腫れたのくだらないラブストーリーが主食の私にとって、畑違いもいいとこ。ベジタリアンにスペアリブの美味しさなどわかるはずもないのです。

まぁ、なでしこやまとだけでなく、他のいろんなレビューサイトさんにも同様に声をかけていらっしゃるようなので、それなら1つぐらい酷評するサイトがあってもいいよね…?

ノベルは活字が主役ですから、「ボイスなし」なのは個人的にまったく気になりません。ですが、その分、「文字の読みやすさ」に関して神経質になります。今時、マウスのスクロールでテキストを読み進められないのは論外ですよ。バックログもわざわざ右クリック2度押しで「Backlog」を選ばないとダメなのは困りもの。演出もスムーズでなく、幾度となくテンポが阻害されます。

これらは修正パッチである程度改善されるとはいえ、今までのセーブデータが使用不可になってしまうのは大問題。迷った挙げ句、結局私は1からやり直しましたが。既読文章を飛ばすのもメチャクチャ時間がかかる~。これからプレイされる方は、絶対最初に修正パッチを当てましょうね。

お気に入りは特になし。各々のキャラクターを差別化させようという意識が強すぎて、強引さや大雑把さが否めない。やっぱり人数が多すぎたんじゃないかと思います。
2010年4月15日