発売日 2004年1月30日
メーカー TYPE-MOON 
Fate/stay night
ビジュアルノベルの代名詞は既にTYPE-MOONか
同人界の王者は、その枠を超えて尚、王者でした。

もはやこれは偉業。気安くエロゲとは呼べないまでに超越したクォリティを誇る奇跡の産物は、商業デビュー1作目という事実を頭の片隅から完璧に消え去ってしまうほどに壮大であり、何もかもが私の想像を飛び越えてしまっていた。怪物としか形容できないこの傑作を、一体どのような賛辞で褒め称えればよいのでしょうか…。

私はハッキリいって、伝奇活劇ノベルというジャンルが苦手です。月姫もプレイしていますが、多分皆さんよりも評価はずっと低い。というのも、私は活字による「バトル」というのが馴染めないんですよ。Fateは、契約したサーヴァントと共に7人のマスターが聖杯を巡って争い合うストーリーゆえ、戦闘シーンこそが物語の華。でも、その戦闘に楽しみを見出せない私ですから、この作品を100%楽しむのは無理だと思っていました。

ノベルはその性質上、アクションを表現するのにはどうしても限界があります。例えば、サッカーやバスケ等のスポーツの興奮を伝えるのに、活字では臨場感が十全に伝わらないでしょう。それが「バトル」ともなれば尚更で、巧みな描写によってよって情景は伝えられても、肝心の「迫力」が伝わりにくいのが難点です。

そこでFateは、不足する迫力を補うべく、一枚絵を惜しみなく投入し、幾種もの派手なエフェクト、リアリティある効果音、高揚感を盛り上げるサウンドと、あらゆる手段を総動員させて、バトルの迫力と臨場感を完成させている。迫力満点の演出を得たことによって、奈須きのこさんの饒舌なテキストは一層冴え渡り、躍動感溢れるサーヴァントとのバトルを演出。ぶつかり合う剣戟、打ち放つ宝具はただひたすらカッコイイ! 手に汗握る刺激的な戦闘シーンに、私もすっかり酔い痴れてしまいましたよ!


序盤の山場、バーサーカーとの決戦にどれだけ熱中したことか。「別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう?」 思いがけぬアーチャーのセリフに全身電流が走りましたね。圧倒的な暴力に対して、果敢に立ち向かっていく姿は感動を呼び、二転三転する激しいバトル展開にもう目が離せません。

このバーサーカー戦もそうでしたが、Fateは窮地からの逆転というものが徹底されています。月姫でも、志貴君は四六時中死にかけていた印象がありますが、それは今回の主人公士郎君も同じで、毎日が往生の際といった感じ。バトルのお約束であるとはいえ、これほどまでにピンチを打開する方法を次から次へ考え付くことに感心

バトルに限らず、Fateそのものが意外性の塊だったといっていいです。こちらの思惑をことごとく裏切ってくれる驚きの連続で、物語の展開は一寸先すら読めない。理解は誤解で、予測は不測。王道というものを一条の線とするなら、Fateは呆れるほど歪に折れ曲がっている


しかし、その複雑さゆえのデメリットはあります。Fateには元々独自の世界観があり、難解な設定やタームが多数。サーヴァントのシステム、聖杯の仕組み、魔術の概念、Fateの世界を楽しむ上で、憶えなくてはならない約束事は山ほどあって、サーヴァントのシステムだけに絞っても、英霊、真名、令呪、宝具と、1つ1つその中身はとっても複雑。

こういった複雑な成り立ちをプレイヤーに理解させるため、必然的にFateは物語途中で何度も「講釈」があるんですが、これはやっぱり楽しいものではありませんでした。かなりの部分で割かれてしまっている「説明文」は、時に物語の流れを遮断してしまっているので、もう少し配慮が欲しかったところ。物語が進行すれば内容はより難解になりますし、後半はその意味を咀嚼(そしゃく)するだけでも大変なんですよ。

正直、間桐桜のルートに入ると、私は内容を完全には解し切れませんでした…。最後の桜ルートは今までのセイバールート、凛ルートと少し趣旨が違っていて、従来の聖杯戦争から離れたお話。Fateのまとめとなるべく、今まで謎だった部分や、真相が解き明かされるため、輪をかけて情報量が多いのです。内容は困難を極め、理屈っぽい会話が長々と綴られていたので…。

ついでに言っちゃうと、私は最後のヒロインである間桐桜をセイバーや凛以上には愛せなかったんで、どうしても桜ルートのモチベーションが低かった。桜ルートが始まるまで、彼女の出番は僅かばかりでしたし、思い入れでいえばセイバーや凛は勿論、イリヤにすら劣る。そんな娘が急に最終的なヒロインとして担ぎ出されても、何か釈然としないものがあったのですよ。

翻していえば、これはセイバーと凛があまりにも魅力的だったという結果。桜の魅力が欠乏していたわけではなく、セイバーと凛の存在が際立っていたという方が正しい。Fateの真のすごさは、その緻密な設定よりも、先の読めないストーリーよりも、白熱する戦闘シーンよりも、魅力的なキャラクターにあると思う。脇役からサーヴァントから敵役まで、登場する全員のキャラが立っていた。これがFate最大の魅力ではないでしょうか。


とりあえず、レビューはここでお終いですが、私の拙い言葉じゃ、Fateの素晴らしさの10分の1すら伝え切れていないのはわかっています。そもそも、ネタバレを抑えているので、このレビューが触れている部分は、Fateのほんの一部分でしかありません。だからもう、後は実際にプレイしてもらうしかない。そこで私の真意を汲み取って欲しい。

さぁ、まだFateをプレイしていない貴方。こんなレビューを読んでる暇があったら、さっさと買いに行きなさい

Fateは選択をミスしてバッドエンドに陥ると、ゲーム攻略のヒントを教授してくれるタイガー道場なる救済コーナーがあります。月姫で言う、「教えて!知得留先生」ですね。ここでの藤ねえとイリヤの寸劇が、もう楽しくて楽しくて~

タイガー道場見たさで、あからさまにバッドエンド直結な選択肢を敢えて選んでしまう自分。画面が溶暗して「DEAD END」の文字が浮かび上がってくると、自然にガッツポーズが出てしまいましたね。そんな理由で、何度も無駄死にさせられた士郎君は堪ったもんじゃないでしょうが。

こういった遊び心があるところも、Fateの良いところですよ。隅から隅まで楽しんで、私がFateに没頭していた時間はおよそ52時間。しかし、これだけの長丁場をこなした後でありながら、やり遂げた達成感よりもFateへの名残惜しさの方が強い。私はまだまだFateの世界を楽しみたかった。

知性と美貌を兼ね備えた学園のアイドルである彼女は、その気品ある優等生という仮面の下に、我が侭さ気丈さという二面性を持つ。フランクな性格は時に小悪魔的。されど、さりげない隙がある一面を見せ、ふとした言動で頬を赤らめてしまうこともしばしば。

そんな遠坂凛は私にとって非の打ち所がない理想的なキャラでした。今までプレイしてきた歴代の作品の中でも、彼女は屈指の存在……いや、もうNO.1って言っていいや。それぐらい惚れ込みました。黒髪ツインだし、私服姿が超絶可愛いし、エッチではいつもの強気が恥じらいに一変するし、私のウィークポイントは総て狙い撃ちされましたもの。彼女のサーヴァントになりたい者なら引く手数多でしょうね~。

私は体験版をプレイした時、既に一目惚れをしてしまっていたんで、彼女のシナリオをいの一番でクリアするつもりだったんですが、実はこのFate、“セイバー→遠坂凛→間桐桜”とクリア順が最初から定められていたんですね。

つまり、ファーストプレイだとセイバーしかクリアが出来なくて、私が遠坂凛へと注いだ愛は徒花、物語途中で敢え無くバッドエンドを迎えてしまう結果に終わりました…。くそ~、ならそれを初めに教えてよ~!

遠坂凛は最高でしたが、セイバーも同じぐらい、ものすご~~く好き。謹厳実直なセイバーが時折見せる少女のような仕草には脳味噌蕩けそう。凛とセイバーの話だけでレビュー書きたいなぁ。

セイバーの真名は「そうきたか!」って意外性でしたよ。アーチャーの正体を知った時もやっぱりビックリしましたし、ホントこの作品は驚かされることばかり。「小難しい説教が多すぎ!」とか、「強い奴出すぎでインフレ!」とか、「エンディングに納得いかん!」とか、「TYPE-MOONのロゴがダサい!」とか(これは関係ない)、そういった不満があるにはあるけど、Fateの面白さはそんな欠点も瑣末に感じられるほど凄まじかった。だから私は何も非難するつもりはないし、何も要求するつもりはありません。

あ、でもファンディスクは当然出してよね。出してくれなかったら泣くよ。
2004年2月7日