As you like
~星降る夜にロマンスを~
 
メーカー〔Nail〕 発売日2005年7月29日

それだけの価値がある。まきいづみという声優には
エロを餌にして釣っておきながら、実は真面目なシナリオ勝負。発売前の宣伝やパッケージと中身が一致しないのは、もはやNailさんのお定まりのパターンですが、そんな羊頭狗肉も3度目となると、さすがに「またかよ」って感じで驚きも何もありませんわね。

こうやってユーザーを無駄に欺いたところで、利するものは何もないと思うんだけどなー。処女作ぷれゆーのように「騙されたけど納得」なんてケースはレアで、今回のAs you like(以下あずゆー)程度の出来ではとてもとても。それはもう、悲しくなるほど凡庸な出来でしたから…。


まさかNailさんの作品を「凡庸」と評する日がやってこようとは思いも寄りませんでしたが、あずゆーは紛れもなく平凡。ぷれゆーやすりまりのように話の大きな軸がない上、日常におけるキャラクター同士の会話のやり取りも盛り上がりを見せず、なんか本当に淡々としていましたよ。ストーリーの起伏の乏しさも相俟って、作品全体を異様な静けさが支配していました。

主人公が大人しすぎるというのも一因でしょうか。真面目な性格で基本的にはいい人であるとはいえ、悪い意味で大人びている感じで、なんというか学生らしい溌剌とした若々しさを感じない

振り返ってみれば、Nailさんの主人公は皆この手の大人しいタイプでしたけど、これまでは美術に打ち込んでいたり、政治家の跡継ぎ息子だったり、少々の「変わり者」であっても許せる境遇でした。しかし今回は限りなくフツーの学生さんなので、どうしても引っかかりを憶えてしまうんですよね。

しかも、そんな大人しい主人公でありながら、寝ている華奈の頬にペニスを擦り付けて射精するという、突然大胆すぎる行動に出たりもするから「ええーーー」と混乱してしまって。彼のキャラクターがまったく掴めないのですよ。

女の娘で「普段は清楚なのに実はエロエロ」というのは問答無用で素晴らしくても、これを男性に当て嵌めると、単なるムッツリ野郎という感じしかしない…。男性キャラなら、「普段はエロエロだけど根は真面目」という逆のタイプの方がいいよねぇ。その分エッチシーンに見所はあったのは喜ばしいことですが、キャラクター全般に魅力を感じなかったせいか、ぷれゆーやすりまりと比べて有り難味が薄い薄い。

ヒロインの華奈先生ですら、あんまり萌えさせてくれませんでしたし。「年上だけど頼りなくて可愛いおねーさん」という極めて理想的なタイプでありながら、何故か私の心はちっとも揺れ動かない。これといった不満があったわけではないものの、もう一味が足りなかったなぁ。Nailさんは常に「おねーさん先生」にこだわりを持ち続けているメーカーさんなんですから、「年上だけど頼りなくて可愛いおねーさん」からもう一歩キャラクターを掘り下げてくれなくちゃ。

心から良かったと褒め称えられるのは、CVのまきいづみさんだけ。おねーさんとロリの相反する魅力を併せ持ち、独特の抑揚をつけた喋り方が心地好い安らぎを与えてくれる奇跡のボイスは、何度も何度も聞き惚れてしまうほどに素晴らしいです。華奈先生より華奈先生を演じるまきいづみさんに萌えまくり。このまきいづみさんの美声のおかげで、ある程度の不満は一掃されちゃいましたよ~♪


とはいえ、褒めるところが声優さんだけしかないというのはやっぱり複雑。声優さんの演技の上手さと、作品の出来不出来は直接的な関係がないことですもんねぇ。

私はNailさんの作品に対して人一倍思い入れが強いだけに、この程度の作品なんかじゃ到底満足は出来ない……いや、我慢ならない。どんどん小粒になっていくNail作品への私の失望感は、文章じゃ上手く書き表せませんよ…。

シナリオのDEEZさんは、独特の空気を持った質の高いシナリオを作れる方で、その上でエッチシーンにも確かな実力を秘めている(まだ一度も本気を見せてもらっていませんが)稀有な才能の持ち主であると私は強く信じていますが、このあずゆーを経て「自分の見込み違いだったのかな~」と自信を失いかけつつあります。本物か虚仮か、次が正念場でしょうね。

朝寝坊している華奈先生にこっそりイタズラしちゃうぷにぷにモード。頬や胸を触ったり、それ以上のことも出来ちゃうのですが、これ、同じ箇所を再び選択すると最初とまったく同じテキストが流れまして…。そうなると辻褄が全然合わなくなる。こういう配慮が欠けているだけで、一気にチープさを感じてしまうんですよね。テキストを微妙に変えるとか、2回目は選択出来なくするとか、それぐらいの工夫は難しいことでもないでしょうに。

あずゆー最大の目玉は、華奈先生に自分の名前をちゃん付けで呼んでもらえる「ちゃんづけシナリオ」。膨大な量に渡る名前パターンを1つ1つ個別に収録されているまきいづみさんの仕事ぶりには頭が下がる思い。

ただ残念なのは、私はエロゲ(というかゲーム全般)を自分の本名でやることが一切ないので、このちゃんづけシナリオにはまるで価値を見出せなかったってこと…。

そもそも名前を呼んでくれるといっても、本編ではないオマケのシナリオ部分だけ(ストーリーは短く、CGは本編のを流用)ですし、肝心の「ちゃん付け」もそれほど多くの場面であったわけじゃないので、普段から本名でプレイする人でもあまり価値は見出せないんじゃないかな。「所詮オマケ」と割り切っておく方が賢明かも。

個々のエッチシーンは光るものがあるんですが、シーン数が全然足りない。歩美ちゃんのエッチシーンなんて、エンディング前に1つあるだけ。信じられない。

ヤキモチ焼きな若槻歩美ちゃん。恐らくこのゲームの真のヒロインは彼女でしょう。幼馴染になりきろうとする彼女の献身的な愛が素晴らしい。
05年8月2日