発売日 2006年3月31日
メーカー 戯画 
脳内声優さんがイメージ通りの声で熱演してくれました
プレイ始めと終わりの印象が、これほど大きく食い違ってくる作品は、後にも先にもないかもしれない。

そう思わせるほど序盤の印象は散々でした。見ず知らずの少女が半裸のまま隣で熟睡しているありがちな導入と、ヒロインに対する最悪な第一印象から、「またいつもの萌えゲーか…」と早々に匙を投げかけた自分。今思えば、上っ面だけで判断していた自らの不明に恥じ入るばかりですが、この手の萌えゲーには幾度となく苦い経験を味わわせられてきましたからね…。

しかも、このまるで納得いかないキャラクターボイス。唯一、浅倉奈緒子だけが私の心の支えであったのに、彼女の声を初めて耳にして愕然としましたよ…。「こんなの奈緒子の声じゃない!!」と瞬間に叫んでしまいましたから。

あ、いや、奈緒子の声優さんが下手って言いたいわけじゃありませんよ? むしろとってもお上手な方。なにせ、カトル・ラバーバ・ウィナーっぽい人なので、実力も地位も名誉もおありの声優さんです。でも……やっぱりこの人の声が奈緒子に合っているとは思えない。失礼な言い方ですけど、学生の声ですらないでしょ? 生徒会会長っていうより、もはやPTA会長。これで奈緒子に萌えるのは無理な話ですよ~。

慣れるまでの我慢とも思いましたけど、声のせいで物語に全然集中できなくなっちゃうし、結局諦めて音声をカット。凛奈の妙に甲高い声、海己の過剰なおっとり声も気に食わなかったので、全員まとめて1人残らず音声をカットしてやりましたよ。声優さんのキャスティングが気に食わないからボイスをOFFにするなんて、初めて経験です。


そんなこんながあって、序盤はとても物語を楽しめるような環境じゃなかったですね。低調なテンションのまま、惰性でプレイしていたような感じ。それでも根気よく続けた結果、ヒロインの個別ルートに差し掛かった辺りでようやく光明が差し込んできまして…。

最初に着手したのは奈緒子ルートだったのですが、このシナリオは実に素晴らしかった。デートを経て2人の距離が接近すると、グッと会話が色っぽくなる。自転車を2人乗りしながら交わすやり取りはすごく良い雰囲気。2年前の出来事。5つの誓約。憧れの先輩の影。恋愛ストーリーとして洗練された質の高いシナリオが、極上の楽しさ・心地好さを与えてくれましたよ。

でも、この奈緒子シナリオに大満足だったのは、ストーリーの出来よりも、奈緒子の魅力よりも、主人公星野航(ほしのわたる)のおかげ。彼が「好き」という気持ちをちゃんと自分の意志で表現できる人だったってことが、何より私は嬉しかった。好きだから付き合いたい、好きだからキスしたい、好きだからエッチしたい、そんな「好きだから求めたい」という当たり前の衝動を当たり前のように持っていたんです。

萌えゲーの主人公ってのは、受動的で消極的な性格の人が本当に多くて、自分から「好き」ともろくに切り出せない人ばかりですからね…。普段は偉そうな態度のくせに、告白もキスもエッチも相手からのアプローチがないと動けず、自分だけは安全地帯の外へ絶対踏み出そうとしない意気地なし。そんな主人公を私は好きになれませんし、萌えゲーそのものも好きになれませんでした。

その点、航君は違う。快活さ、傲慢さ、軽薄さに満ち溢れていて、かつての蛭田主人公を思わせるような魅力的な主人公。他人に促されるではなく、まっすぐに自分から気持ちを相手に伝えようとする姿勢。2人の前に障害が生じようとも、諦めることなく自分の力で打開しようとする姿勢。そんな前向きな姿勢が、見ていて実に気持ちいい。

航君への好感が極まったのが、凛奈のシナリオ。彼女のシナリオは萌えゲーの超定番“幼い頃の約束”に添ったもので最初ウンザリしていましたが、話は思わぬ方向へと転がっていき、「幼い頃に約束していた2人が、感動の再会を果たして、恋が成就」という陳腐な結末にならなかった

予想外の展開に驚いた直後、航君が電話越しに凛奈に向けて伝えた告白の言葉。これがもう~~思いっきり感動でしてね! 「その言葉を口にする主人公を待っていた!」って感じですよ~。運命任せの恋愛より、自分の力で切り開こうとする恋愛の方が何倍も尊いということを、このシナリオを通して感じ取ってもらいたい。しかも、この時の「合わせ石」のくだりが最後の最後の伏線にもなっていたのだから、ホント見事すぎる。


奈緒子→凛奈とシナリオを終えたところで、遅れ馳せながら「こんにゃくは傑作だ!」と確信した私。「誰1人好きになれそうにない」なんて失礼極まりない暴言は平謝りで撤回です。続けて攻略していった、宮穂、静、沙衣里、海己も、みんなみんな心より愛すべきヒロインたちでしたよ!

特に六条宮穂は、想像を遥かに上回る魅力を持っていて驚いた。「可愛い後輩」といった程度の印象のキャラだったのが、一度身体を重ね合ったことで一気に魅力爆発。手が付けられなくなるほど可愛くなります。構われること、遊ばれること、虐めてもらうことに対して、惜しみなく目一杯の喜びを表現してくるM穂ちゃんに、もう堪らなく愛おしさを感じる。豊かな表情を見ているだけで幸せですし、1つ1つの何気ない言動に胸がドキドキ。……これって恋? 完全にノーマークのキャラだっただけに、大きな大きな大きな収穫でしたね~。

さえちゃんこと沙衣里は、「大人の可愛らしさ」をこれ以上ないほど巧みに引き出している。「年上っぽくない年上が好き」というピンポイントな属性な人間が求める理想像です。2人の関係が発覚したとき、泣いて主人公にすがりつくさえちゃんの依存っぷりが最高


序盤の印象の悪さとは裏腹に、最後は本当に清々しい気分で物語を終えることができました。題材として目新しさのない正統派萌えゲーを、これだけ面白いと感じさせてくれる、これだけ感動的なものに仕上げているのは、全体的な質の高さによるもの。シナリオを務める丸戸史明with企画屋さんの力量に感服です。素晴らしい作品をありがとうございました。

取り壊し目前の学生寮を舞台にした藍より青い青春ストーリー。涙もろい人はハンカチ持参でプレイ推奨です。最後の合唱には、ええいああともらい泣きした人はきっとたくさんいることでしょうねぇ。私は何とか耐えきってみせましたが。

でも、実は唯一私も涙を堪えきれなかったシーンがありまして、それは静の「決めた!」「………さえりが、戻るまで、がんばろ」 主人公が号泣する気持ちはよくわかる…。

「あ、ここで泣かせようとしているな」という気配を感じ取ると、防衛本能が働いて、「意地でも泣いてやるか」と身構えちゃう私ですが、このシーンは不意を突いた感動だったため、防御が間に合わなかったんです…。隙だらけの無防備な状態で、もろに攻撃を食らってしまいました。

奈緒子か宮穂か沙衣里か…。それぞれまったく異なる魅力であるため、誰が1番とは非常に決めにくい…。ルックス&性格共に、私の趣味に一寸の狂いもなく直撃した奈緒子を1番のお気に入りとするのが自然の流れかと思うのですが、心情的には宮穂や沙衣里を選びたいような。ああ、決めかねる。

これまで私が購入してきた戯画作品はハズレばっかりで、未だに戯画というブランド名を聞けば、V.G.を真っ先に想像する時代遅れな人間でしたけど、これからは「ああ、この青空に約束を-のメーカーだよね!」と世間様と話が合うようになりそうです。良かった良かった。

ちなみに、私は上記にある通り、キャラクターボイスを最後までカットしたままプレイしていました。でも、これから始めようとする方には、このやり方はオススメできません。何故なら、最後のエンディングテーマで感動が薄れると思うので。余程の抵抗感がない限りは、きちんと音声をONにしておくべきだと思います。ドラマCDが楽しめなくなるデメリットもありますし。
200年月日