愛姉妹~どっちにするの!!~
メーカー〔SILKY’S〕 発売日2006年10月27日


暗黒騎士からパラディンへ! でも、LV1
陵辱作品から華麗な転身を遂げた新生愛姉妹は、サブタイトルが示しているように、2人の姉妹から熱烈な求愛を受ける超ラブラブ純愛もの。天衣無縫な性格で積極的に迫ってくる姉の静流と、控えめながら対抗意識は人一倍の妹の優奈。2人とも冒頭から好感度が沸点に達している勢いで、「隆哉はアタシのものなんだから」「隆哉は私が一番大切なのです!」と取り合いを始めるほど、主人公にベタ惚れ。露骨に肉体関係も求めてくるほど大胆な求愛なんですが、何故、彼女たちがそこまで主人公に入れ込んでいるのかは相変わらず謎…。交通事故をネタに脅迫でもされているんでしょうかね?

そういう不条理さに不満は感じつつも、魅力的な姉妹から四六時中愛を囁かれるのは何だかんだで気分がいい。ここ最近、「好きだけど素直になれない」タイプのヒロインが席巻していることもあって、ストレートな愛情表現というのが逆に心地好くなってきました。2人の溢れんばかりの愛を一身に受ける隆哉君は、素直に羨ましい。さぞかし彼も静流と優奈の板挟みに嬉しい悲鳴を上げているんだろうな……と思いきや、何やらチョット雰囲気が違うご様子。

なんと、隆哉君は静流と優奈のことをどちらも快く思っていないようなのです…。2人があの手この手で迫ってみても、煩わしいと言わんばかりのつれない態度で無碍に拒絶する。都合が悪くなればすぐ逃げの一手。なんじゃこりゃ??

「2人のことが嫌いなのか?」と訊ねると「そうじゃない」という。「じゃあ、他に気になる娘がいるのか?」と訊ねると「そんなのはいない」という。「だったら、2人のことはどう思っているの?」と訊ねると「それはその…」と答えを濁す。土地神に選ばれたことに関しても、するのか、しないのか、したいのか、したくないのか、それすらもハッキリ口に出来ない。なんなんですかこの人? 何を訊いてもあやふやな返答ばかりで、自分の気持ちを示すことすら出来ない超ドレッドノート級のヘタレなんですよ。

一言に優柔不断だと申しても、「どっちも好きだから1人を選ぶなんて無理!」と悩むタイプの優柔不断ならば、私も大いに共感できますし、すんなり物語に感情移入できたことでしょう。君望の鳴海孝之君なんかはこのタイプ。しかし、選択そのものを放棄して逃げ出すような新城隆哉には、心の底から「ヘタレ」と蔑んでやりたくなりますね。「選べない」優柔不断と、「選ばない」優柔不断は絶対的な隔たりがあるのです。

とにかく、この正真正銘のヘタレのおかげで、ありとあらゆる魅惑のイベントが台無しにさせられるのだから堪ったもんじゃない。

「キスして欲しい」→「NO」
「口移しで食べさせてあげる」→「NO」
「看病してあげようか?」→「NO」
「背中流してあげるね」→「NO」

YESかNOかは俺に決めさせろっっっ! 静流と優奈が次々と嬉しい提案を差し出してくれているのに、こいつが勝手に全部1人で断ってしまう。「すわっ、エッチシーンか!」と期待させる場面に出くわしても、すぐにその場から遁走してしまうヘタレ具合。フラストレーション溜まりまくり。女の娘と仲良くなるのが嫌ならエロゲに出てこないでくださいよ…。ハァ…。


主人公以外はみんな良いキャラだったんだけどなぁ。本多姉妹は当然のこと、同級生の香織、先生のさやかさんもすごく可愛くて、男性キャラ陣も、ヒーローかぶれで熱血漢の和彦、重度の親バカでオタク体質の文七、何気にエロゲとしては珍しい「弟」の明良と、それぞれ灰汁の強い個性と魅力が光っていました。取り分け、主人公にまとわりつく謎の怪生物「りんぐ」の存在が、コメディとして優秀なものへと押し上げてくれている。下品で助平で毎度騒ぎを巻き起こす傍迷惑な存在だけど、憎めない愛くるしさ。金田まひるさんの好演も相俟って、素晴らしいマスコットキャラとなっています。

脇役のキャラクターが立っているおかげで、会話が自然と弾み、話もすごく盛り上がっている。けど、主人公だけは一歩引いた場所で輪に交ざろうとしないから、常に第三者的な孤立感…。愛姉妹の登場人物は揃いも揃ってボケ体質で、優奈ですらボケに乗っかかり、ボケ倒しになっちゃっていますから、本当はここで“まともな感性”を持つ誰かが、ツッコミを入れて軌道修正させなきゃダメなはずなんですよ。適役なのは勿論主人公ですが、彼はその役目すら満足に果たそうとしないので、どうしようもない。


どうしようもないと言えば、エロもね…。据え膳に一切手を付けない恥知らずの隆哉君なので、エッチシーンそのものが起きません。最後の最後になって、ようやく主体性らしきものを見せて初エッチを行うも、そこでゲームは無情のタイムオーバー。結果、1人頭2回(その内1つは夢)という俄に信じがたい数字を叩き出しました。しかも、静流と優奈の3Pがなかったというのだから……バカじゃないの?(ここでのバカは褒め言葉ではありません)。曲がりなりにも愛姉妹を名乗っているというのに、こんな薄いエロでユーザーに満足してもらえると一瞬でも思ったのでしょうかね? それとも、純愛だからエロは薄くて当然だと、まだそんな古い感性に縛られている? ああ~もう~!

コメディ作品としては見所があり、一応は楽しませてもらえた1本でも、純愛として、エロとしてはまったくお話にならず、とても看過できるような商品じゃない。elf・Silky’sに対して不当な依怙贔屓がある私でも、上記の点数を付けるのが精一杯です。これ以上、高い下駄を履かせるのはさすがに無理です。

キャラクターをコミカルに描けるさめだ小判さんの絵は、こういうコメディ作品にすごくマッチしていたと思います。ヒロインの笑顔もとってもチャーミング。

この作品のBAD ENDは「世界中の女から相手にされなくなる」という清々しいエンディングでした! 今まで散々蔑ろにしていたくせに、急に静流にも優奈にも相手にされなると、目一杯不満を怒鳴り散らす隆哉。期待を裏切らず、何処までもヘタレな奴です。サヨナラ隆哉。

静流と優奈は本当にどちらとも選びがたい。2人の誘惑に乗せられるがままにひたすらエッチに興じる作品だったら、どんなに素敵な作品になっていたことか…。芹園みやさん、青山ゆかりさん、一色ヒカルさんといった超強力布陣を敷いておきながら、その活躍の場(エロ)を与えないなんて頭が茹だっているとしか思えないよ。SWATを呼んで万引き犯を確保するようなものです。ハァ…。
2006年11月5日